函館市内などで実証実験、インバウンド観光にも試用

 未来シェアの設立は2016年7月とわずか2年前。だが、SAVSの開発は2001年まで遡る。当時、産業技術総合研究所で研究に着手したオンデマンドバス配車シミュレーションが原点である。研究テーマはその後、公立はこだて未来大学に引き継がれ、2013年には函館市内で実際の道路網と車両を使ったSAVSの実証実験を始めた。

 2015年には、人工知能学会が函館市内で開催されたときに合わせ、4日間におよぶ大規模実証実験を行った(図4)。ここでは約12km四方の市街地内で、タクシー車両30台をSAVSを使って自動配車させた。実験には学会参加者を中心とした約300組が参加し、4日間の期間中に500件以上の乗車要求(デマンド)を処理したという。前述した乗り合いタクシーのタイプでの実証実験となる。

図4●2015年に函館市で実施した実証実験の概要(出所:未来シェア)
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 2016年の未来シェア設立以降は、日本各地で実証実験を進める。各実証実験にはそれぞれテーマを決めて意義付けし、SAVSが各種用途に対応できることを確認している。

 例えば、2016年12月には東京の臨海副都心エリアであるお台場で、デマンドが集中的に発生したときに過密な乗り合いの運行にSAVSが対応できるかどうかを実証した。7人乗りのミニバンを乗り合い車両として用意し、モニター40組に参加してもらい、2km四方の狭い領域で積極的に乗り合い車両を移動に利用してもらった。この実験で1時間当たり40デマンドの処理に対応できたという。

 2017年には、観光客の移動を想定した実証実験を長野県の諏訪エリアや鳥取県境港市で実施した。諏訪エリアは、DMO(観光物件や自然、食、芸術・芸能などに精通し、地域と協同で観光地づくりを行う法人)との協力を想定したもの。タクシー9台を乗り合い車両として使い、20組40人のモニターが参加する形で7km四方の地域で配車した。諏訪湖付近の6つの地方自治体にわたる領域内で、観光客がオンデマンドで移動することを念頭に置いた。

 境港市での実証実験は、インバウンドの観光需要を想定したもの(図5)。外国人のクルーズ船客と日本人ドライバーのタクシーとの間で、オンデマンドでの移動が支障なく実現できるかを確認した。結果的には、スマホで行き先や乗車位置を設定すれば、言葉の壁は支障がないことが分かった。6台の乗り合い車両を使い、外国籍のモニター20組50人が参加。利用者が配車を要求するナビゲーションアプリには英語版を用いた。旅行サービスに紐づくサービスを想定していることから、JTB中国四国と協力し、中国運輸局・山陰インバウンド機構から受託する形で実証実験を行った。

図5●境港市での実証実験の概要(出所:未来シェア)
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 日本各地の港ではクルーズ船の誘致を積極的に進めているものの、「港の周囲を観光するクルーズ船客の移動の“足”がないことが課題。課題の解決策として、SAVSが生かせる」(未来シェアの松舘氏)。今後もクルーズ船客を対象とした、インバウンドの観光需要に向けた実証実験を継続する予定という。

 2018年になると、例えば住宅地や病院が多数ある名古屋市東部において、タクシーが暮らしの足として定着できるかどうかを確認することを狙って実証実験をした。つばめタクシーと協力してタクシー車両を含む30台の乗り合い車両を用意。273人がモニターとして参加し、22日間にわたって実験した。当初、自家用車が使えない人や、バスで移動するには体調面で不安な人などの利用を想定していたが、実際にはビジネス利用が最も多かったという。利用者の声としては、料金が安いこと、そして、事前に料金が分かったことへの評価が高かったという。

 各地での実証実験を経て今、未来シェアが検証する対象はより大きな規模になろうとしている。それが前述した前橋市での取り組みである。超高齢社会に向けて、都市での高齢者の移動を自家用車から乗り合い車両にシフトさせる取り組みに着手した。