SAVS実用の最大の課題は、既存事業者の理解

 前橋市では、市民の移動に自家用車は欠かせない。まさに自動車社会である。その自動車社会で、自家用車の利用を控えねばならない状況になる可能性が出てきた。市民の高齢化が進んだため、高齢者の事故が増えつつあるからだ。自家用車で移動する高齢者が増え続けると、事故増加が止まらなくなると懸念されている。こうした課題の解決策として候補に挙がるのが、市民の移動手段を自家用車から公共交通にシフトさせること。そのシフトを効率的に進めるために白羽の矢が立ったのがSAVSの利用である。

 ただ、SAVSで配車する車両を前橋市内に投入しようとすると、既存の公共交通の担い手であるバス会社やタクシー会社の反発や懸念が起こりかねない。一人当たりの利用料金の低額化などで、事業環境が悪化するのではないかと心配するからだ。そうした懸念を払拭し、バス会社やタクシー会社と協力しつつ市民のモーダルシフトを進めるべく、未来シェアは実地データを用いた精緻なシミュレーションを実施している。具体的な数値を示しながら、既存の公共交通手段の活用が欠かせないことを公共交通事業者に示し、理解を得たい考えである。

 シミュレーションには、アンケート形式で収集したパーソントリップデータを用いた。パーソントリップデータとは、人が移動する際の出発地と到着地などをまとめたものである。未来シェアによれば、前橋市内での人の移動のうち、65歳以上の高齢者で公共交通手段を使う人は1日で合計600〜700トリップ(*2)だったのに対し、65歳以上の高齢者で自家用車を使う人は1日で合計1万7000トリップと桁違いに多く、圧倒的に自家用車の利用で占められていることが分かるという。

*2 トリップ=人がある目的のために、ある地点から別の地点に移動する単位

 そこで、未来シェアは、自家用車による高齢者の移動をどのくらいの乗り合い車両で賄えるのかをシミュレーションしてみた。SAVSで自動配車する乗り合い車両を90台とし、利用者の待ち時間は最長10分まで許容できるとすると、65歳以上の自家用車利用者の2%が公共交通利用にシフトするまでは待ち時間は10分程度内に収まることが分かった。だが、1ポイント増えて3%が公共交通利用に移動しただけで、待ち時間は20分を超える。さらに5%になると平均待ち時間は50分にもなってしまうという結果が出た(図6)。

図6●前橋市におけるSAVS利用を想定したシミュレーション例(出所:未来シェア)
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 前橋市内でタクシーは合計220〜230台あるとされ、これらを全て乗り合い車両としてSAVSで自動配車しても、自家用車を利用する65歳以上の高齢者の公共交通シフトは賄えない。つまり、公共交通シフトに要するタクシー車両数は現時点で圧倒的に不足しており、乗り合いでタクシーを利用する人が増えても、トータルでのタクシーの配車回数が減ることはない。乗り合いによるタクシー利用は、タクシー会社の事業を圧迫するものではないことを示している。こうした数字を示していくことで、未来シェアは乗り合い車両に拒否感があるタクシー会社の翻意を促していくという。