自治体と住民によるバス会社の設立

 この課題の解決を目指し、土庄町と小豆島町は共同で2009年に、公共交通の利便性の向上や公共交通空白地域の解消、持続可能な公共交通体系の構築などを目的とした「小豆島地域公共交通協議会」を設置。同年には、土庄町と小豆島町が半分出資し、残りは町民が出資したバス会社として小豆島オリーブバスも設立した。

 これによって、バスの運賃を大きく見直し、従来は遠方まで利用すると1100円を超えていた運賃を、一気に上限300円にまで下げた。また、フリーパス乗車券も従来の2000円から、半額の1000円に引き下げている。

 このような努力により、観光客も含めてバスの利用者は増加している。2016年3月には、小豆島全体の変革により学校や病院の統合が一気に進んだことから公共交通を全面的に見直し、バス路線の再編などを含む「小豆島地域公共交通網形成計画」を策定した。

実証実験から見えた自動運転の受容性

 公共交通としての小豆島オリーブバスでも、前述のようにバス運転手の確保が大きな課題になっている。その解決のためにも自動運転バスの導入が期待されているが、実際に大型の自動運転バスが公道を走るようになるにはまだ時間がかかるだろう。現時点では、将来的にどのように自動運転という技術を取り入れていくのかを、実証実験などを通じて検証していくことが重要である。

 2019年3月には、香川大学、明治大学、群馬大学の協力によって、「3大学自動運転公道実験@小豆島」が2日間開催された(図3)。実証実験の目的の1つは、小豆島における自動運転の受容性を明らかにすることだ。

(図3)島民に配られた「3大学自動運転公道実験@小豆島」の告知パンフレット
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 実験車両には群馬大学が自動運転用に改造したトヨタのミニバン「アルファード」が使用され、島民や観光客に小豆島の代表的な観光ポイントであるオリーブ公園とオリーブナビ小豆島の間(約700m)で自動運転を体験してもらった。最終的には、島民と観光客を合わせて224人が試乗している。

 今回の実証実験では、試乗後に「自動運転について」「小豆島特有のモビリティに関する問題について」という2つの項目でアンケート調査を行った。アンケートでは試乗した人の約80%が、「自動運転を公共交通に導入することに賛成」という結果が出た。

 また、アンケートでは、島外から来た観光客にも自由に回答してもらったが、「瀬戸内国際芸術祭の開催など明らかに人が多くなる時期も、バスは通常運行だったので不便だった」など、「島外からの観光客目線の公共交通」と「島外に出ない住民目線の公共交通」との間で、公共交通の役割について大きな認識の開きがあることが分かってきた(表1)。

(表1)3大学自動運転公道実験@小豆島でのアンケートから見られた、特徴的な島民の傾向
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 実証実験のアンケートとは別に、自動運転に関して島民や島内事業者などに電話インタビューを行った結果、「自動運転車に乗って何をしたいかなどの話を、島民と継続する場がない」「自動運転が公共交通に入っていく具体的なイメージが浮かばない」といった意見が出た。

 このようなアンケート結果や意見を受けた「小豆島プロジェクトの成果報告」の内容が、6月5日に東京都内で開催されたシンポジウム「自動運転とサイバーリスク〜香川・群馬・明治の3大学連合による小豆島実証実験をもとに〜−道交法におけるデータ記録のあり方−」で紹介された。同シンポジウムでは、「自動運転に対しては技術の受容性はあるが、それを用いた公共交通の受容性についてはまだ足りない」「自動運転を用いた公共交通の受容性向上には、継続的な努力が不可欠」と小豆島での実証実験の総括が行われた。

 さらに、「自動運転技術は信頼できるけど、マイカーの方が便利だから使わないと思う」といった意見があったことも紹介され、公共交通のあり方そのものを検討する必要性も示された。