自動運転サービスの実現を目的として2016年4月に設立されたソフトバンクグループのSBドライブ(東京都港区)。これまでレベル3、4の自動運転実証実験を繰り返し、2018年には公道ではないものの、自動運転サービスの実用化にこぎつけた。SBドライブ社長兼CEO(最高経営責任者)の佐治友基氏は、2019年に公道でのサービス実証を始め、2020年の事業化を目指している。

 SBドライブが発足した当時、目指していたのは地方のバス会社の赤字改善である。国土交通省の調べでは2016年度の乗合バス事業者の収支状況は、地域バス会社165社中136社が赤字であるという。この赤字体質から抜け出すには、人件費を抑えられる自動運転バスの導入が一つの解になる。

 地方自治体の中には、住民の移動ニーズを実現するために、バス会社に赤字補てんや運行委託費として補助金を払っている例も多い。しかし、その補助金が毎年数千万円に上る場合もあり、自動運転バスを導入することで自治体の支出削減への期待がかかっている。

 また、現在は必ず運転手が必要であるため、運行時間が限られており、収入を増やしにくいという課題もある。自動運転が実現すれば、従来のように限られた時間だけでなく、運行時間をさらに広げて増収を図ることもできる。

人件費の削減でバス事業者の利益率高める

 もちろんSBドライブはバス事業者になろうとは思っているわけではない。SBドライブが提供するのは自動運転対応バスと、自動運転用のソフトウエアにすぎない。バス会社がそれらを導入して、いち早くサービスを始められるようにすることを支援するのが同社のビジネスモデルだ(図1)。

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図1●SBドライブが沖縄での実証実験(後述)に使った自動運転バス。いすゞ自動車の小型バス「ポンチョ」を改造した(出所:SBドライブ)

 具体的には、バス事業者が同社の自動運転バスとソフトウエアを導入する。バス事業者は運転手の人件費を節約できることで運行コストが下がり、利益率が向上した分の一部をSBドライブが受け取るというわけだ。

 実際には、SBドライブが出資を受ける自動運転ベンチャーの先進モビリティがバスの自動運転車への改造などを受け持ち、それにSBドライブが開発した運行管理システムを組み合わせてサービス化している(図2)。

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図2●SBドライブのビジネスモデル。先進モビリティが車両の改良を受け持ち、SBドライブのソフトウエアを用いてサービスを提供する(出所:SBドライブ)

 しかし、自動運転バスを導入するのは簡単ではない。車両の調達から、保険やメンテナンス体制の構築、車両を遠隔で監視するための仕組み、安全運行するためのノウハウなど、非常に多岐にわたるノウハウが必要になる。

 佐治氏も「ITシステムだけを作ればよいかと思っていたが、バリューチェーン全体を作っていくうえでコアとなる推進役がいないと、プロジェクトがすぐ空中分解してしまう。現在我々があるのは、そうしたコーディネーターとしての役割を果たしながら、業界を作るといったことに注力してきたからだ」と述べる(図3)。

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図3●SBドライブ社長の佐治友基氏。「業界を作ることに注力してきた」とする(撮影:日経BP総研 クリーンテック ラボ)