無償から有償へ移行したオンデマンドバス実証

(写真2)糸島市で運行されるオンデマンドバス「よかまちみらい号」(写真:元田光一)
(写真2)糸島市で運行されるオンデマンドバス「よかまちみらい号」(写真:元田光一)
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(写真3)公民館に設置されたオンデマンドバスのバス停。コミュニティバスの約3倍の場所に配置されたバス停は、既存のバス停以外にも公民館をはじめ、ごみ置き場、公園、市の施設、個人の住宅などにも設置されている(写真:元田光一)
(写真3)公民館に設置されたオンデマンドバスのバス停。コミュニティバスの約3倍の場所に配置されたバス停は、既存のバス停以外にも公民館をはじめ、ごみ置き場、公園、市の施設、個人の住宅などにも設置されている(写真:元田光一)
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 糸島半島南部では従来から昭和バスによってコミュニティバスが運行されている。2020年度の利用者数は27万7164人。型コロナウイルス感染症拡大の影響もあり、2019年度の43万5000人から大きく減少した。ただし、コミュニティバスは新型コロナ禍の影響を受ける以前から毎年赤字が続いていたのが実情だ。路線数は多いが便数が少なく、年々利用者が減っている状況だったのだ。

 糸島市による地域住民への交通事情アンケートの結果でも、「バスの便数が少なくバス停まで遠い」「年齢的に免許返納を考えているが、マイカーのない生活は不便である」といった意見があり、糸島市としても解決策を模索していた。

 そこで、よかまちみらいプロジェクトでは高齢者や移動困難者に利便性の高い移動手段を提供するために、昭和グループの昭和自動車が運行主体となったオンデマンドバス「よかまちみらい号」の運行を2021年3月から開始した。

 車両には8人乗りのトヨタ・ハイエースを使用、運行システムはアイシン精機が提供するデマンド型交通サービス「チョイソコ」を採用している(写真2)。糸島コミユニティバス曽根線において、当初2カ月間は平日の9~16時まで無償実証を行った。5月からは利用料金200円での有償実証が始まっている。バス停の数は85カ所と、コミュニティバスの約3倍設置している(写真3)。

 利用者の推移は無償期間の3~4月で合計358件の乗車があり、有償化後は5~6月で合計245件となっている(図4)。利用者の声としては、「自宅近くまで来てくれるのが非常にありがたい(70代女性)」「病院に行くのに余裕ができた(80代夫婦)」「スマホでの予約もできるようになったので楽(30代女性)」「免許証を返納しようか迷っていたが、このバスがあるなら安心(70代女性)」といったサービス導入を歓迎する意見がある。一方で、「会員登録のやり方が良くわからなかった(60代男性)」「予約するのが面倒くさい(70代女性)」「予約の電話代が高いのが気になるので安くしてほしい(70代男性)」「スマホアプリの使い方が難しい(70代女性)」などとサービス改善に向けた意見も出ている。

(図4)オンデマンドバスの乗車実績(資料提供:SEEDホールディングス)
(図4)オンデマンドバスの乗車実績(資料提供:SEEDホールディングス)
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(写真4)昭和自動車 自動車事業本部乗合事業部課長代理の白津重範氏(写真:元田光一)
(写真4)昭和自動車 自動車事業本部乗合事業部課長代理の白津重範氏(写真:元田光一)
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 オンデマンドバスの運行費用に関しては、2021年3~9月までの実証期間はトヨタ・モビリティ基金の助成金が活用され、2021年10月から計画されている本格運行では国などの補助金が活用される予定だ。そのほかに、オンデマンドバスのサポートと広告展開に特化した「エリアスポンサー」を獲得している。昭和自動車 自動車事業本部乗合事業部課長代理の白津重範氏によると、「最初はエリアスポンサーを獲得できるか不安だったが、地域に貢献したいと考えている企業も結構多く、目標の月額50万円に対して現時点で20万円台まで獲得している。業種については今のところ不動産業が多いが、理容院なども入ってきている」と手応えを感じている(写真4)。