半年間の長期実証で実運用への課題を検証

 2019年6月24日から12月20日までの半年間にわたって行われた長期実証も、やはりレベル3相当の技術によるレベル2での実証となった。9時台から15時台まで定期運行のダイヤが組まれ、誰でもが無料で小型電動カートに乗車できるようにした(写真4)。自動運転コースは、始点から終点まで乗車すると40分かかる。そのため、永平寺口駅前から4kmまでの区間を地域住民用、そこから永平寺の門前までの2km区間を観光客用と、利用目的を分けて実証が行われた。

 長期実証では、産総研が自動運転システムの提供と事業統括、日立製作所が運行管理システムの提供、ヤマハ発動機が車両・電磁誘導線インフラの提供、豊田通商が事務の取りまとめと関係者の調整、慶應義塾大学が遠隔監視システムのUI(ユーザー・インターフェース)の提供、京福バスがドライバーの提供と運行管理支援、そして、永平寺町の第3セクターであるZENコネクトが運行管理をそれぞれ担当した。

(写真4)6月24日から12月20日までの実証では、通常の乗り合いバスのようなダイヤが組まれて定時運行された(写真:元田光一)
[画像のクリックで拡大表示]

 電磁誘導線による自動運転では、地中に埋設されている誘導線からの磁力線を感知し、設定されたルートを走行する。埋設されたRFIDの上を走行すると車両のRFIDセンサーに電圧が発生し、その信号をコンピューターが解析して車両の動作を制御する。車両は走行速度や停止位置の確認、自分が走っている位置情報の把握も、RFIDに書き込まれた情報に基づいて判断している。

 自動運転の走行方式については電磁誘導線以外のシステムも検討されたが、山間部は準天頂衛星システム「みちびき」のGPS情報が受信できないために位置情報の取得が難しい。また、雪が積もる地域では、カメラやレーダーによってあらかじめ適正な走行ラインを算出し、そのラインに沿って走行するレーントレースによる自律走行の運用も難しい。さらに将来、自動運転システムが実用化され、地域で維持管理することを考えると、ある程度枯れた技術である電磁誘導線方式が、一番堅牢性が高いと判断された。

 実際、積雪時における自動運転走行実験では、20cmの積雪までは電磁誘導線による信号を検知できるという結果を得ている。導入コストから考えても、電磁誘導線は1m当たり数千円で敷設できることからインフラ整備の初期コストを低く設定できる。安全面からも、電磁誘導線を外れると停止するので車両の暴走が起きにくい。

 一方、遠隔ドライバーは、全ての自動運転車両の周囲および走行する方向の状況を確認するため、映像および音を同時に監視する必要がある。そして、車両が自動運転を継続できない事態になった際は、遠隔でハンドルを握って操作しなければならない(写真5)。

(写真5)運行管理センターでは車両が自動運転できない事態になると、モニタ画面で車両からの画像を見ながらハンドルを握って運転(写真:元田光一)
[画像のクリックで拡大表示]