京都市が民間と連携して継続的に整備を進めてきた梅小路公園。2012年の民間事業者による水族館開業などによって、来園者数の伸びに弾みがついた。さらに16年の鉄道博物館開業や19年のJR西日本の新駅誕生に向け、沿道の環境を改善する民間主導のプロジェクトも始動。地域の整備に拍車がかかる。

公園内にある京都水族館(写真:編集部)
公園内にある京都水族館(写真:編集部)
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梅小路公園の配置図(資料:京都市)
梅小路公園の配置図(資料:京都市)
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 京都駅から西へ徒歩約15分、JRの線路に隣接する都市公園、梅小路公園には年間470万人が訪れる。特に2010年度以降の伸びが2.8倍と著しい。12年3月にオリックス不動産が事業者となって京都水族館を開業したことや、14年3月に市が「市電ひろば」など2つの広場を新設したことなどによる効果だ。

 市が民間との連携による梅小路公園の整備方針を表明したのは2009年。市に対してオリックス不動産と西日本旅客鉄道からそれぞれ、水族館と鉄道博物館をつくりたいとの提案があり、それらを受けたものだった。施設整備に着手するに当たって市は、(1)両施設の導入によって見込まれる観光客を周辺地域へ誘引して地域全体を活性化する、(2)総合公園としてだけでなく地域の身近な公園として住民参加や市民活動によってにぎわう交流の場を創出する――などのテーマを設定。各施設では、民間事業者が建設・運営を行い、市に対して土地使用料を支払う方式を採用した。

 一足早く2012年3月に開業した京都水族館には、市内だけでなく、広く近畿圏から学校の授業の一環として多くの子供たちが訪れているという。「民間事業者ならではの、柔軟な料金割引も含めた積極的な営業が奏功しているようだ」と、京都市みどり政策推進室の岩田貴子・公園管理課長はみている。

 また、岩田課長が高く評価しているのが、水族館の無料ゾーンに事業者が設置したトイレだ。市が公衆便所を設置する場合、和式便器でトイレットペーパーは置かないのがルール。授乳施設もないし、車いす対応も一部に限られている。水族館に設けられたトイレは温水洗浄便座付きの洋式便器であるうえ、これらすべてを装備している。「市ではつくれない水準の公衆トイレを提供してくれて、ありがたい」(岩田課長)

水族館の周辺で思い思いの時を過ごす来園者たち(写真:編集部)
水族館の周辺で思い思いの時を過ごす来園者たち(写真:編集部)
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水族館の無料ゾーンにある公衆トイレ(写真:編集部)
水族館の無料ゾーンにある公衆トイレ(写真:編集部)
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広場の市電車両やカフェ店舗も人気

 水族館の完成から2年後の2014年3月、市は公園内に2つの広場を新設した。一つが、市内をかつて走っていた市電車両を活用した「市電ひろば」。もう一つが、地域の子供たち向けの遊具を備えた「すざくゆめ広場」だ。両広場には、市電車両やカフェ店舗を配備し、それらの中で飲食・物販業務を営む民間事業者を公募した。選ばれた事業者は、施設使用料として市に売り上げの1割を支払う。

市電ひろば内の「市電カフェ」(写真:編集部)
市電ひろば内の「市電カフェ」(写真:編集部)
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市電カフェは様々な客層が立ち寄る(写真:編集部)
市電カフェは様々な客層が立ち寄る(写真:編集部)
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市電カフェと並んで置かれた「市電ショップ」。鉄道グッズに子供が引き寄せられていく(写真:編集部)
市電カフェと並んで置かれた「市電ショップ」。鉄道グッズに子供が引き寄せられていく(写真:編集部)
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すざくゆめ広場内の「パークカフェ」。屋外のオープンカフェ空間(右奥)は民間事業者の提案で実現した(写真:編集部)
すざくゆめ広場内の「パークカフェ」。屋外のオープンカフェ空間(右奥)は民間事業者の提案で実現した(写真:編集部)
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 市電ひろばに設置した2つの車両には、カフェと鉄道グッズの売店がそれぞれ入った。カフェでは、車内のつり輪を模したオリジナルの「つり輪パン」を事業者が発案して販売。発売当初、テレビや新聞などがこぞって取り上げ、話題になったという。

 すざくゆめ広場のカフェでは、事業者が提案した屋外のオープンカフェ空間が実現した。遊具で遊んだり走り回ったりする子供を見守りながら飲食が楽しめる空間として、親たちに人気のスポットとなっている。

レストランの営業時間を延長、民主導で沿道整備も

 これらのほかにも市は、来園する障害者・高齢者向けの駐車場や大型バス駐車場の整備・運営業務、公園内の有料庭園に併設したレストランの運営業務などでも、民間事業者を公募する方式をとってきた。

 レストラン運営の事業者は現在、更改時期を迎えている。2015年8月から、京都水族館の運営会社であるオリックス水族館を代表とする3社のグループが新たに運営に当たることになった。改修工事などを経て、9月中旬のオープンを予定している。

 事業者選定の際、同グループの提案で高く評価された点は、水族館が閉まる午後8時以降も営業することによる夜のにぎわいの創出、有料庭園での「公園ウエディング」や水族館を活用した「水族館ウエディング」などの企画だったという。レストランは午後10時までの営業を予定しており、市は夜間営業を支援するため、今後、公園内に照明や防犯カメラを増設していくという。

鉄道博物館の全景外観イメージ(資料:西日本旅客鉄道)
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鉄道博物館の全景外観イメージ(資料:西日本旅客鉄道)

 2016年春には公園内に鉄道博物館が開業する。既設の梅小路蒸気機関車館と新館を合わせた形の博物館となる。さらに19年春にはJR山陰本線の新駅が出来ることになっている。こうした今後の展開を見据え、民間主導の新たなプロジェクトが動き始めている。京都駅から梅小路公園までの沿道に、誘導の看板やフラッグ、ベンチ、モニュメントを整備するものだ。西日本旅客鉄道、オリックス水族館の2社を中心に沿道の企業20社近くが参画。市もアドバイザーとして加わり、活動を支援していく。

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