小さな成功体験を積み重ねる

――公園の「ヒルサイド」エリアで直径20mの「コスモスのリング」をみんなでつくるなど、ワークショップでは現地(公園)での体験を重視しています。

 コスモスの種をまいたとき、60人くらい人が来たので、みんなでリングのまわりで手をつないで写真撮影しました。そうすると、まだ種をまいただけとはいえ、参加したみんなの一体感が生まれてきます。一つの小さな成功体験といえます。

 このコスモスは9月から10月ごろに咲くのですが、そのころに公園の隣にある氷見高校の文化祭があるんです。そこでアートイベントを仕掛けて、来たお客さんをコスモスのリングにも連れてい行きたいね、という話もしてます。秋の文化祭の当日にちょうど咲いているとは限らないんですが、本当にその文化祭のときにきれいな花を咲かせていたら、やっぱりそれも一つの成功体験ですよね。

コスモスリングに種をまく参加者(左写真)と公園内の位置(右図)。図中の「ワイルドフラワーチャレンジ」部分には多年草のハーブを植える(写真・資料:氷見市)
[画像のクリックで拡大表示]
コスモスリングに種をまく参加者(左写真)と公園内の位置(右図)。図中の「ワイルドフラワーチャレンジ」部分には多年草のハーブを植える(写真・資料:氷見市)
[画像のクリックで拡大表示]
コスモスリングに種をまく参加者(左写真)と公園内の位置(右図)。図中の「ワイルドフラワーチャレンジ」部分には多年草のハーブを植える(写真・資料:氷見市)

――小さくても成功体験を重ねていけば、公園にコミットすることへのポジティブな意識が高まりそうです。

 そうですね。それだけでなく、「花を植えて育てることにどれだけの手間が掛かかるのか」といったことも体感として分かります。すると、体感に基づいて自分たちがカバーできる範囲を決めていくことによって、公園の形や景色が決まっていくということも分かります。つまり、公園はみんなでつくるものだという前提に立ったときに、この公園の“政策”を決めていく過程が体感として分かるようになるわけです。こうした経験を通じて、結果的に氷見の住民の人たちのまちづくりへの参加のしかたも変わってくるのではないかと思います。

「使う人」を「つくる人」に変える

――自分たちでできること/できないことが分かると、コスト意識も高まりますね。

 例えば公園の管理費が年間で2000万円掛かるとします。その2000万円という費用は、この公園で飲食施設を運営したり、イベントを開催したりして賄えるかというと、ちょっと怪しい。だけど、収入を増やす、あるいは支出を減らして実質1500万円に、あるいは1000万円にしていくために、みんながコミットしていくことが重要です。

公園でイベントを企画・実行するような市民を発掘する場としても機能すれば、と語る槻橋氏(写真:宮田 昌彦)
公園でイベントを企画・実行するような市民を発掘する場としても機能すれば、と語る槻橋氏(写真:宮田 昌彦)

 結局、「使う人」を「つくる人」にどれだけ変えられるかということじゃないかと思っています。

 僕らは建築の専門家ですけど、実は建築にしてもまちづくりにしても、使う人を建築家にしてしまった方がうまくいくんじゃないかとも思っています。もちろん、公園のどこに何をつくったらいいのかといったことは、専門家じゃないといきなりは分かりません。そこで今は、ディスカッションで出てきた自由な意見を、具体的な原案に落とし込むところの手さばきなどを、一緒に体験してもらいながら進めるような形を取っています。

 自分たちでできないことは専門家に任せるにしても、任せていることをちゃんと自分たちでマネージしていること、理解していることが「自分たちがつくること」なんだということを体験してもらうと、いろいろなことが回り始めるんじゃないかなと思っています。

 また、「自分はこれをどうしてもやりたい」という人もだんだんと出てきたりもします。今回も高校生が「僕がデザインした建物が建つならぜひやりたい」と言うので、「そんな簡単には建たないよ」と返しつつ、「じゃあ何かスケッチを描いて持ってきて」と言っているところです。