都市公園法を紐解いてみると、公園に設置できる施設や、公園でできることはかなり広い範囲に及んでいる。実際、公園では様々なイベントが行われているし、カフェやレストラン、水族館などが置かれた公園もある(関連記事)。最近では、2015年7月に国家戦略特別区域法の一部改正があり、特区の都市公園内には保育所などの設置が解禁されたりもしている。

 その一方で、「クレームを恐れて禁止事項だらけ」「手入れが行き届かず雑草だらけ」「いつも誰もいない」――。公園についてこんな批判の声も聞こえてくる。“公園間格差”は大きい。

時代にあった役割を

 地域住民が公園で野菜や花を育て、その収穫を皆で分かち合う――。2013年から富山市内の3つの街区公園の一角で実施中の「街区公園コミュニティガーデン事業」での取り組みだ。同事業は、高齢者の外出機会や生きがい創出、地域コミュニティの形成、ソーシャルキャピタル(社会的絆)の醸成を図ることを目的としている。

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「街区公園コミュニティガーデン事業」の概要(資料:富山市)

 従来、都市公園法の解釈としては、花は育ててもよいが野菜は育ててはいけないという考え方が一般的だった。富山市の森雅志市長は「自家消費ではなく、地域のグループをつくって、地域コミュニティ醸成のための事業として進めている。自分なりに法律を逐語的に読み込んだうえで、国土交通省に確認を取り事業をスタートした」と振り返る。15年6月に内閣府が認定した富山市の「地域再生計画」の中でもしっかりと位置付けられている。

 かつて児童公園として整備が進んできた歴史のある街区公園は、現在、あまり有効活用されていないケースも多い。しかし、富山市の「街区公園コミュニティガーデン事業」は、現行法の範囲内でも、時代に合った公園の使い方を開拓できる余地が十分あることを示している。

「何でも禁止」ではない公園

 「クレームを恐れて何でも禁止」というイメージからかけ離れた公園もある。全国各地に点在する「プレーパーク」「冒険遊び場」と呼ばれる公園や、それに類する公園だ。

 冒険遊び場は、子供たちが「落ち葉やどろんこや自然の素材を使って、遊び場にあるスコップや金づちや大鍋を使って、自分の『やってみたいと思うこと』を実現していく」ための場として運営されている(日本冒険遊び場づくり協会のウェブサイトより)。

 練馬区で2015年4月にオープンした「こどもの森」は、「自然×冒険×交流」をコンセプトに掲げ、木登り、泥あそび、虫採りなど、子供が自由に遊べる公園だ。営農していた土地をそのまま生かしているため、畑や果樹園もある(関連記事)。

「こどもの森」のパンフレット(資料:練馬区)
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「こどもの森」で遊ぶ子供の様子。公園の周囲は住宅地だ(資料:練馬区)

 こうした公園では、大きくは二つのクレームが想定できる。一つは遊んでいる子供がケガをした場合の保護者などからのクレーム。もう一つは子供のはしゃぎ声がうるさいという近隣からのクレームだ。

 練馬区では開園に先立ち、2011年から12年に掛けて小学校や小学校PTA、地元町会などの協力を得ながら冒険遊びの体験イベントやアンケートを実施した(体験イベントは計8日間。延べ1600人以上が参加)。公園のコンセプトや安全管理などについて、公園での遊び方を体験してもらいながら、保護者や近隣住民などの理解を得たうえで、開園に向けて整備を進めていった。

 体験イベントの実施などに加え、「委託事業者がきめ細かく近隣の方とのコミュニケーションを取ったり、イベント開催時などは事前に告知をするなどの配慮もしている。クレームの数は比較的少ない」(練馬区環境部みどり推進課長の塩沢福三氏)。とはいうものの、体験イベントとは違って開園後は子供が毎日やってくる。騒音などへのクレームはやはりある。

 「職員が出向いて丁寧な対応をして、子供がのびのび遊べる公園であることを説明していくしかない。ここでは、『クレームが来たらすぐに禁止』といった対応はしない」と塩沢課長は腹をくくる。

 施設の運営管理は、UDS(本社:渋谷区)、NPO法人あそびっこネットワーク(事務局:練馬区)、ミツヤ建設造園(本社:練馬区)による共同事業体、PLAYTANK(プレイタンク)に委託した。遊び方の指導や安全管理のために「プレーリーダー」と呼ばれる専門の常駐スタッフを置いている。

 遊び方の指導や安全管理、近隣とのコミュニケーションなどのほか、「子供が自由に遊んで泥だらけになったり、すり傷や切り傷もできることを住民に受け入れてもらうプロセス構築など、専門的な知識、ノウハウが必要だ」――。こどもの森のほか、光が丘プレーパーク(都立光が丘公園内に常設。所在地は練馬区)などの運営にも携わっている、あそびっこネットワーク代表理事の中川奈緒美氏は、子供が自由に遊べる場づくりについて、こう説明する。

 しかし、こうした運営を任せられる体力、ノウハウのある団体は少ないのが現状だ。こどもの森のような公園は簡単にはつくれない。「子供が外遊びをすることについては、皆が『いいね』と言ってくれる。けれど、そこから先になかなか進まない。今後は、こうした外遊びのできる公園運営を行政と一緒に進めていくノウハウを、小さな組織に伝えていく中間支援のような仕事にも取り組んでいきたい」と中川氏は意気込む。

区立公園とビルの広場を一体運営

 JR御茶ノ水駅前に建つ高層ビル「ワテラス」は、千代田区立淡路公園と一体的に整備した広場を持っている。オフィス、住宅、店舗などが入居し、高層棟「WATERRAS TOWER」(地上41階地下3階建て)と別棟「WATERRAS ANNEX」(地上15階地下2階建て)で構成されている再開発事業だ(都市再生特区の適用を受け、千代田区から指定された淡路町二丁目西部地区第一種市街地再開発事業)。区立淡路公園も事業の一環として民間資金で拡張再整備した。

 開発に合わせてつくられたエリアマネジメント組織、一般社団法人淡路エリアマネジメントが、公園と広場、タワー低層部に置かれた「ワテラスコモン」(カフェ、サロン、ホールなどを備えた地域拠点)を活用した地域活動を行っている。

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ワテラスの施設配置。高層棟(左)の1 ~3 階にホール、サロン、カフェなどを置く地域拠点「ワテラスコモン」がある。区立淡路公園の維持管理は、管理組合が担当。地域住民、ワーカーらによる「ワテラスガーデニングクラブ」が緑の手入れなどをサポートしている(資料:安田不動産)

 エリアマネジメント組織の設立は、「容積率緩和の条件として約束した9つの地域貢献(※)のうちの一つ」(ワテラスを運営する安田不動産の開発事業本部開発第一部第一課課長の助川覚氏)であり、この事業を成立させるための要件といえる。淡路エリアマネジメントの理事には、地域の2つの町会の会長、安田不動産の役員が加わっているなど、地元色を強く打ち出している。

※ 「9つの地域貢献」は以下の通り。(1)オープンスペースと快適な歩行者空間の創出、(2)定住人口回復に向けた多世代住宅の整備、(3)周辺道路の無電柱化などによる街並み形成、(4)公園機能の再編・拡充による緑地の創出、(5)生活支援店舗(スーパーマーケットなど)の整備、(6)地域活性化に寄与するコミュニティ施設・学生ボランティア支援施設の整備、(7)屋上緑化・保水性舗装などのヒートアイランド対策、(8)地域防災及び帰宅困難者支援の活動拠点の整備、(9)タウンマネジメント組織によるまちづくりの新たな取り組み

 エリアマネジメント組織の活動資金は「再開発組合が残した拠出金を当面の活動資金としているほか、ドラマやCMの撮影などに広場を貸し出すなどして得た収入も活動資金に充てている」(一般社団法人淡路エリアマネジメントの事務局マネージャーを務める安田不動産資産営業事業本部資産営業第二部第一課副長の松本久美氏)という。

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エリアマネジメントの仕組みの概念図(資料:安田不動産)
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広場と区立公園を一体的に活用してマルシェ(左)やジャズイベント(右)などを開催している(資料:安田不動産)

 公園と広場は一体化したデザインとなっている。直線のスリット側溝が境界を区切ってはいるものの、普通に利用している分には意識せずに動き回れる。千代田区と淡路エリアマネジメントは、公園を地域活動に使用できるという内容の協定を結び、関係手続きもスムーズに行われるという。月に2回開催されるワテラスマルシェ、年に1回開催されるジャズフェスティバル「JAZZ AUDITORIA」など、2つの空間を一体化したイベントも開かれている。

 「公園部分への看板の掲出など一部制約はあるものの、空間を一体的に使わせてもらっている」(松本氏)と、行政側も柔軟な対応で地域活動を後押ししている。

ライバルはショッピングセンター、そして小学校

 「(バブル期に)各年齢層が遊べる所が他にできて、家族で公園なんか行かなくなってしまいました」「日本では、公園はテレビとエアコンに負けています。ショッピングセンターに負けていると言ってもいい」

 国際日本文化研究センター名誉教授の白幡洋三郎氏は、『水の文化』24号(ミツカン水の文化センター)に発表した「利用者がつくる都市公園」の中で、公園のあり方についてこのように苦言を呈している。

梅小路公園の配置図(資料:京都市)
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 「利用者がつくる都市公園」は2006年の記事だが、指摘は今もそのまま通じるといえるだろう。では、どうしたらよいのか。一つは、民間の力を生かして「家族で遊べるところ」を整備するという方向性だ。京都市の梅小路公園は、敷地内に民営の水族館やレストランなどを置き、年間470万人が訪れる。2016年春には西日本旅客鉄道による鉄道博物館も公園内に完成予定だ。(関連記事

 「地域コミュニティ醸成の場となる公園」を目指すという方向性もある。ただし、地域では既に小学校がその役割を果たしていることが多い。公園は、小学校とは違った価値を提供しなければならない。

 国土交通省「新たな時代の都市マネジメントに対応した都市公園等のあり方検討会」の委員を務める神戸女子大学家政学部教授の梶木典子氏は、地域コミュニティの場としての公園の可能性を次のように語る。

 「地域コミュニティの場としては、求心力のある場として小学校が存在する。いざというときの避難所にもなっている。ただ、小学校には先生が常駐しており、『先生やってよ』という『市民が要求をする場』になりがち。公園は、市民が自分たちが主体となって何かを『やる』と言い出せる場、市民の力を引き出す拠点になれば、価値のある場になり得る」

 確かに、今回紹介した「街区公園コミュニティガーデン事業」もワテラスも、地域コミュニティ醸成を強く意識している。みどりの森も、緑の大切さを子供のうちから身体で感じてもらうことが一番大きな目的だが、地域住民同士の交流を創出する場としても位置付けている。

その「公園」は本当に必要か?

 とはいえ、「市民の力を引き出す拠点」になり得る場は、公園ばかりではない。

 佐賀市の中心市街地の商店街で社会実験として行われている「わいわい!! コンテナ2」は、商店街にできた空き地に芝生を敷き、市民が気軽に立ち寄れる場所として整備したスペースだ。2012年1月末まで別の場所で社会実験を実施していたため、現在は名称に「2」が付いている。

 敷地内には4つのコンテナが置かれている。雑誌や絵本、マンガが自由に閲覧できる「図書館コンテナ」、だれもが自由に集える「交流コンテナ」、チャレンジショップの出店やギャラリーとしての利用などができる「チャレンジコンテナ」、そしておむつ替えもできるトイレコンテナだ。もちろん、芝生スペースも自由に使うことができる。

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「わいわい!! コンテナ2」の様子と配置図。7月にはドライミストを設置。子供の遊び場としてもすっかり定着している(資料:佐賀市街なか再生会議、写真:まちづくり機構ユマニテさが)
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 2012年6月にオープンした敷地面積337m2の小さなスペースに、2014年には年間6万9221人もの人が訪れた。「毎日のようにワークショップ、市民活動が行われるような仕掛けをしている」(運営を担当するNPO法人まちづくり機構ユマニテさが常務理事タウンマネージャーの伊豆哲也氏)。ここでコーラスグループが結成されるなど、地域の人たちの交流が生まれるきっかけにもなっている。人が集まると店舗も集まる。周辺には、ラーメン店、Tシャツショップなど新しい店が増え始め、新たな活気を感じさせるエリアが育ちつつある。

 「わいわい!! コンテナ2」は、ユマニテさがが佐賀市の委託事業として運営している。事業方針は、まちづくりに関わる市民を中心に構成する「佐賀市街なか再生会議」が決定。その方針を受けてユマニテさがが日々の運営を担う。土地は私有地で、ユマニテさがが委託費の中から2人の土地所有者に毎月地代を支払っている。

 郊外店に押されて商店街が衰退し、人口も大きく減少した佐賀市の中心市街地だが、マンションが増えるなどして2001年を底に中心市街地の定住人口は毎年少しずつプラス基調で進んでいた。ところが、商店街に来る人は増えない。なんとか賑わいをつくりたいということで、「佐賀市街なか再生計画」の一環として立ち上がったのが「わいわい!! コンテナ」のプロジェクトだ。街なか再生計画の作成業務や「わいわい!! コンテナ」「わいわい!! コンテナ2」の企画・設計は地元出身の建築家、西村浩氏(ワークヴィジョンズ代表)が担当した。

 現在、商店街エリアの芝生スペースは計3カ所に“増殖”している。まず「わいわい!! コンテナ2」。そして、以前「わいわい!! コンテナ」を実施していた場所。ここは社会実験終了後、土地を市が買い取った。市民の憩いと交流の場となる芝生公園を設置して、みどりに関するイベントなどを実施していくという。さらにもう1カ所、商店街に以前からある「656(ムツゴロウ)広場」と道をはさんだ向かい側にある空き地が、芝生スペースとなっている。ここは656広場と一体でイベントを開催することもできる。佐賀市の補助事業として、ユマニテさがが土地オーナーに毎月地代を払い、運営・維持をしている。

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左写真は、最初に「わいわい!! コンテナ」の社会実験を実施した場所。今は芝生スペースになっている。右写真の奥に見える商店街のイベントスペース(656広場)の向い側が空き地になったので芝生を敷いた(写真:編集部)

 公園を活用するにせよ、「わいわい!! コンテナ2」のように「公園ではない場所」を活用するにせよ、人の集まるオープンな空間づくりの取り組みが成果を上げるほど、「運営に熱意が感じられず、あまり使われていない公園」が本当に必要なのか、その存在意義が問われることになるだろう。公園は、これまで以上にその「質」が問われることになる。そして、質を保ち続けるには、一定のコストが掛かるのは当然として、スキルとやる気のある人材が不可欠だ。

 今後、多くの自治体では人口が減少し、財政状況が悪化していくのは明らかだ。公共施設の統廃合や再配置を検討せざるを得ないだろう。公園も例外ではないはずだ。

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