米国西海岸に位置するオレゴン州ポートランド市は、全米で「最も住んでみたい街」として知られ、米国における街づくりの模範的存在である。本連載の第1回目では、ファイナンスの視点から同市の都市計画の手法を紹介したが、本稿では同市が近年力を入れている、交通機関をスマート化するスマートモビリティに焦点を当てる。

 ポートランド市は、地球温暖化対策「Portland's Climate Action Plan」を策定しており、CO2排出量を2020年までに1990年比で25%、2030年までに同40%、2050年までに同80%削減する目標を掲げている。このため、CO2排出量の多い自動車に関連した低炭素化施策に注力している。

沿線の事業者や住民から資金を徴収、路面電車を整備

 同市の交通当局の担当者によると、CO2排出量が少ない順に、まずは徒歩で、次に自転車、公共交通機関を使って用を足せる街づくりを目指している。「公共交通機関の駅から20分以内でさまざまな店に行けて、用事を済ませられるように都市を設計している」という。

 公共交通機関の代表が、路面電車「MAXライトレール」である(図1)。同市は路面電車を敷設するために、LID(Local Improvement Districts:地域改善地区)という仕組みを導入した。路面電車によって事業収益や利便性が上がる沿線の事業者や住民から資金を徴収して建設費用に充てたのである。

図1 ポートランド市の市街を走る公共交通機関である路面電車「MAXライトレール」
(撮影:日経BP総研)

 将来的には自動運転車やシェアードサービスを中心とした新しいモビリティシステムの導入を目指している。その指標として「1人で自動車にのっている状況の割合」(市民が自動車に乗っている総時間の中で、一人で運転している状況の割合)を重視。2012年段階で61%だった「1人で自動車にのっている状況の割合」を2030年には20%に減らすという目標を掲げている。また、どうしても自動車を使わなければならない場合には、より低炭素化を図れるEV(電気自動車)を推奨するという。

 新モビリティシステムの導入のために、同市はDOT(Department of Transportation:米国運輸省)が実施した先進モビリティ構想のコンテスト「スマートシティ・チャレンジ」に参加した。提案書を作成する中で、いつでもどこでもコンピュータネットワークにアクセスできる「ユビキタス」の考え方をモビリティまで発展させた構想「Ubiquitous Mobility for Portland」を考案した。

 同市は、「スマートシティ・チャレンジ」のファイナリスト7都市に選ばれたものの、優勝には至らなかったが、この構想に沿って、モビリティのスマート化を今後進めていくとしている。

 担当者によると、「Ubiquitous Mobility for Portland」を実現するに当たって重要なポイントは、(1)建物間の街路(コリドー)や街灯などの構造や配置の最適化、(2)道路や街灯に設置したセンサーなどからのデータを公開するオープンデータクラウドの構築、(3)コネクテッドカーや自動運転車、電気自動車などの先進自動車、スマートフォンなど向けのアプリケーションなどの先進技術の導入、の3点である。

 このうち近年特に重要性が増してきたのが、オープンデータクラウドの構築だという。センサーの増加に伴って、膨大なデータが集まるようになり、それらをどう役に立つデータアセットとするかが課題となってきたのである。