英国ロンドンから鉄道で北に1時間ほど行ったレイトンバザードに、2013年の建設時には欧州初で最大と言われた大型蓄電池プラント「SNS(Smarter Network Storage)」が稼働している(図1)。建屋内には、6MW/10MWhのリチウムイオン蓄電池モジュールが整然と並んでいる(図2)。

図1 レイトンバザードに建設された蓄電池プラント「SNS(Smarter Network Storage)」(撮影:日経BP総研)
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図2 6MW/10MWhのリチウムイオン蓄電池モジュール。韓国Samsung SDI製(撮影:日経BP総研)
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 同蓄電池プラントを運営するのは、地域の配電事業者であるUK Power Networksだが、英国政府が主導する国家プロジェクトでもある。英国のエネルギー規制当局であるOfgem(ガス・電力市場規制局)が創設した配電事業者向けの補助金制度である「Low Carbon Networks Fund」から1320万ポンドの助成を2012年11月に受けた。これは、英国の配電事業者が配電事業の低炭素化に貢献する技術実証に対して支給される制度である。それに加え、UK Power Networksが400万ポンドを調達してプロジェクトはスタートした。

 このほか、系統運用機関のNational Gridが協力するほか、Imperial CollegeやNewcastle大学、エネルギーサービスプロバイダーも多数参加し、産官学で取り組む大型プロジェクトである。

 OfgemやNational Gridといった政府機関が同プロジェクトに注目するのは、UK Power Networksが解決しようとした課題が英国全体の送配電網でも共通するものだからである。第1に、英国では冬季に需要家が電気ヒーターを使うために、配電事業者は需要ピークが立つことに悩まされていた。冬季では通常、数週間程度ピークが立ち、その期間のためだけに配電事業者は配電網や変電施設を準備しておく必要がある。需要家が増えた地域では、新たな投資が必要となる。

 そのため、蓄電池を使ったピークカットによって、これらのコストを削減する点に期待が集まっている。同プロジェクトに参加しているImperial Collegeの試算では、2020年までに英国に2GWの蓄電池を導入することによって、年間30億ポンドのコストダウンになるとしている。

 第2に、変動性電源である太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーの導入量が増えるのに伴い、系統網の安定化のニーズが高まり、系統運用者であるNational Gridが負担する系統安定化のためのコストがかさんでくることも深刻化してきた。Imperial Collegeは、英国内に再エネの設備容量が25GWまで増えた状況下で、蓄電池を活用すればコスト削減額は年間100億ポンドにのぼるとしている。蓄電池を所有するUK Power Networksとしては、系統安定化した分の対価を得るビジネスモデルが可能となる。