UAE(アラブ首長国連邦)のドバイ政府は2014年、UAE第2の中心都市であるドバイをスマートシティ化するために2021年までのロードマップを示した「Smart  Dubai 2021」を発表した(図1)。「Smart Dubai 2021」は、「スマートライフ」「スマートな経済」「スマートなガバナンス」「スマートなモビリティ」「スマートな環境」「スマートな人々」というあらゆる市民生活に関わる6つのテーマからなる。

図1 Smart Dubaiのイメージ写真とロゴ。「スマートライフ」「スマートな経済」「スマートなガバナンス」「スマートなモビリティ」「スマートな環境」「スマートな人々」という6つの柱からなる(出所:ドバイ政府)
[画像のクリックで拡大表示]

 それらを実現するために、ブロックチェーンを活用した仮想通貨戦略、電子政府化による行政サービスの効率化、エネルギーの最適活用など多岐にわたって検討を進めている。「スマートモビリティ」では特に、渋滞を回避し、安全で素早く市民が移動できる環境を構築するために、自動運転の開発に重点を置いている。

 ドバイのスマートモビリティ戦略を立案しているのが、交通当局であるRTA(Roads and Transport Authority)である。RTAが中心となって、2030年までにドバイにおける交通手段の25%を自動運転とする戦略「Dubai Autonomous Transportation Strategy」を策定した。RTAはそのための交通法規を策定し、インフラ整備や自動運転車の認定、ライセンス供与などの環境を整備する。さらに技術面では、車車間などの通信システムや高精細な電子地図も開発するという。

自動運転EVバス「pods」の走行実験をスタート

 RTAは、同戦略の実現のために複数のタイプの自動運転車の検討を進めている。そのうち、ファースト・ラストワンマイルの自動走行車の候補として有力視しているのが、米Next Future Transportation製の自動運転EV(電気自動車)バス「pods」である(図2)。RTAは「pods」を実用化するための開発費として41万ドルを拠出し、2018年からドバイ市内でテスト走行をスタートした。

図2 自動運転EVバス「pods」(出所:RTA)
[画像のクリックで拡大表示]

 「pods」は長さ2.87m、幅2.24mの立方体形状で10人乗りである。蓄電池を搭載して1回の充電で3時間走行できる。ただし、充電には6時間を要する。平均時速は20㎞である。ユニークなのは、走行中に15~20秒で連結し、5秒で切り離しが可能で、各乗客の目的地に合わせて、複数の車両を切り替えながら最適に運航できる点だ(図3)。連結した車両間を乗客が移動することもできる。

図3 複数台の「pods」がフレキシブルに連結・切り離しが可能で、バスにもオンデマンド配車タクシーにもなる(出所:RTA)
[画像のクリックで拡大表示]

 複数が連結すれば自動運転バスとなるが、1台ならばオンデマンドの配車タクシーとして機能し、乗客はスマートフォンから呼び出すことも可能だ。

ドバイ警察はドローン搭載の自動運転パトカーを導入

 ドバイ警察は2017年6月、ドローンを搭載した自動運転車「O-R3」をパトカーとして導入すると発表した(図4)。同車両は、シンガポールのスタートアップOTSAW Digitalが開発したもので、全長120cm、幅60cmと超小型で、時速15kmと低速である。

図4 自動運転パトカー「O-R3」。カメラやレーザースキャナーで100m先の物体を検知でき、容疑者を追跡できる(出所:RTA)
[画像のクリックで拡大表示]

 自動運転パトカーには、高精細カメラや赤外線画像装置、レーザースキャナー、光検出測定装置などを搭載しており、100m先の物体も認識可能で、容疑者を検知したら、追跡する。車両が入れない路地や自動車で逃走した場合には、ドローンを飛ばしてさらに追跡する仕組みである。

 警察署のコントロールルームから遠隔で操作、監視でき、通行人の顔認識も可能。指名手配犯を検知した際には、追跡と共に情報が送られ、場合によっては実際の警察官が出動する。街中の不審物や持ち主不明の荷物などを検知した場合にも、情報をコントロールルームに送ることで、素早い対処が可能になる。

 ドバイ警察は2017年に自動運転車を1台試験的に導入したが、2020年までに100台導入する計画という。ドバイ警察は2017年6月からロボット警察「ロボコップ」も導入しており、2030年までにドバイ警察の仕事のうち、パトロールや道案内といった警察の定型業務はロボットや自動運転パトカーに置き換えていき、警察業務の25%を自動化する計画という。

「空中タクシー」やHyperloopの導入も検討

 RTAは、地上を走行する自動運転車だけでなく、自動飛行するマルチコプター(複数のローターを搭載したヘリコプターの一種)を使った「空中タクシー」である「Autonomous Air Taxi(AAT)」サービスの導入を検討している。2017年第4四半期からUAE内で試験飛行がスタートしており、約5年間実証した後、本格実用化する計画だ。

 採用したマルチコプターは、独Volocopterの「Volocopter 2X」(図5)である。2人乗りで、18個のローターを持ち、時速50kmの巡航速度の場合、最大で約30分の飛行が可能だ。最大飛行速度は時速100kmという。9系統の独立した蓄電池システムなどで冗長性を確保している。

図5 ドバイの街を自動試験飛行するマルチコプター「Volocopter 2X」は空中タクシーとしての用途を見込んでいる(出所:RTA)
[画像のクリックで拡大表示]

 ドバイはまた、次世代交通システムとして、100Pa程度に減圧したチューブ内を車両が空中浮上して時速1220kmで進む「Hyperloop」の採用も検討している。Hyperloopを開発する米Virgin Hyperloop OneとRTAが共同でプロジェクトを推進しており、まずは2020年から2021年にかけて開催される「ドバイ国際博覧会(Expo 2020 Dubai)」に合わせて、ドバイ-アブダビ間に敷設する計画である。

 ドバイ-アブダビ間は自動車ならば1時間半かかるが、Hyperloopならば約12分に短縮でき、1時間に1万人を輸送できるという。将来的には、ドバイとサウジアラビアのリアド間にHyperloopを建設する構想もあり、飛行機で2時間半かかるところを50分で到着できると見込む。

 RTAは、2018年2月にドバイ-アブダビ間で運行するHyperloopの車両(Pod)(図6)と内部を公表した(図7)。

図6 ドバイで発表されたHyperloopの車両(出所:RTA)
[画像のクリックで拡大表示]
図7 Hyperloopの車両内部。10人乗りでゆったりとした座席配置になっている(出所:RTA)
[画像のクリックで拡大表示]

10人乗りでゆったりとした座席配置になっている。コントロールセンターから運行を制御する自動運転で、乗客はスマートフォンのアプリケーションから他の交通手段と合わせて最適な方法を検索でき、Hyperloopの座席も予約できる(図8)。

図8 Hyperloopの利用者向けアプリケーション画面。ドバイ-アブダビ間の交通手段が複数表示され、Hyperloopを選択すると座席予約が可能になる(出所:RTA)
[画像のクリックで拡大表示]

この記事のURL https://project.nikkeibp.co.jp/atclppp/PPP/080200047/051400039/