米国オレゴン州にある人口約60万人の都市、ポートランド市は、全米で最も住みやすい街としてメディアや調査機関のランキングで取り上げられ、注目を浴びている。

 1970年ころ、ポートランド市は市街地に人が集まらなくなり、街は荒廃した。米国の各大都市と同様に高速道路の整備に伴うスプロール化が進行したためだ。そこで同市は1972年、問題解決に乗り出した。

案件によりTIF、LIDなど多様なファイナンスを活用

 解決策の1つはコンパクトシティ化である。同市は無秩序な郊外開発に歯止めをかけるべく「都市成長境界線」を導入して境界の外側の開発を禁止し、市街地の都市開発にリソースを集中させた。同市中心を流れるウィラメット川沿いの高速道路を撤去して公園や緑地帯を設置し、徒歩や自転車、公共交通機関で移動できる街づくりを目指した(写真1)。同時に環境負荷の低減に努め、雨水などの地域資源を活用してビオトープを市内の各地に造り、景観やデザイン性に優れた街並みを目指した。こうして住民を惹きつけた結果、人口が増え、不動産価値が向上し、固定資産税が増加。これを原資にさらに都市開発を進める、という好循環を達成した。

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写真1●ポートランド全景とウィラメット側沿いに設置された緑地帯
以前は高速道路が走っていたが撤去して設置した(出所:TravelPortland)

 魅力的な街づくりを進めるためには、効率的で持続的なファイナンス(資金調達)が必要になる。ポートランド市開発局(PDC:Portland Development Commission)は、さまざまな手法により資金を調達しているが、特に注目されるのが、TIF(Tax Increment Financing:租税増収財源債)とLID(Local Improvement Districts:地域改善地区)である。

 このうちTIFは、プロジェクト開発による固定資産税の増収分を先取りして発行する公債を指す。PDCは、プロジェクトを進めるにあたり、金融機関からの借入金や州政府からの補助金に加えてTIF債を発行して資金を調達。開発地のインフラなど基盤整備を行い、デベロッパーなどの投資を呼び込む(図1)。魅力的な街づくりにより固定資産税の向上を見込めることから可能になる資金調達法である。

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図1●TIFのスキーム
ファイナンスの最適化、不動産価値の向上により持続的発展を目指す。