JTCとSITが研究施設を相互に活用して産学連携を推進

 PDDの重要な目的の1つが、産学連携を進めて、デジタル技術などを研究・開発するハブにする考えだ。そのために、JTCが建設する企業向けビジネスパークとSITが入居するビルは隣接して建設され、相互に行き来できる渡り廊下が設置される予定である(図2)。さらに、JTCビジネスパーク内にSITの研究室や教育施設を、SITビル内にスタートアップなどが起業のための開発を進める施設を設置し、相互交流を深めることで、共同研究を促進し、新事業を立ち上げる場とする考えである。

図2 PDDにおけるSIT(シンガポール工科大学:左)とJTCビジネスパークの完成予想イメージ。両ビルの間には渡り廊下がつくられ、相互に研究施設やスタートアップ向け開発拠点を設けることで、産学の交流を図る(出所:JTC)
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 JTCビジネスパークとSITビルの間の地上には、同地区最大の目抜き通りとして、長さ800mにおよぶ歩行者用道路「キャンパス大通り」が建設される。ここには、各種イベントや戸外で食事ができる多目的なスペースとして利用され、産官学の担当者が交流する場を提供する。キャンパス大通りの先端は海に面しており、小売店や飲食店が営業するウオーターフロントエリアとする。そこからは、観光地であるコニー島にアクセスでき、観光客も集めるスポットにする計画である。

スマートシティプラットフォーム「ODP」のモデルケースに

 PDDには、シンガポールの企業や政府機関が共同で開発したスマートシティプラットフォーム「ODP(Open Digital Platform)」が初めて採用される。ODPは、JTCのほか、総合エンジニアリング会社のST Engineering、シンガポールの政府系研究機関のCSA(Cyber Security Agency of Singapore)、IMDA(Infocomm Media Development Authority)が共同で開発したもので、プラグ・アンド・プレイ方式で迅速に導入でき、設置コストと導入効率を向上できる特徴があるとしている。

 ODPのシステムは、IoT、データ分析、実データと仮想データを連携する「Digital Twin」をコアサービスとし、各種情報を交換・管理する統合システムから成る。さらに、標準化されたミドルウエアを介して、縦割りのシステム・サービスと、横断的な各種ITインフラ・ネットワーク・センサーの両方を統合的に管理する構造となっている。

 縦割りシステムとしては、スマートグリッド、顔認証・セキュリティ、都市の物流・ロボット配送、地域冷房などがあり、それらはパソコンやスマートフォン、デジタルサイネージ、AR(仮想現実)などの端末を介して、様々な行政や公共関連、セキュリティなどのサービスに使われる。個々のシステム構築に当たっては、外部の企業と連携して、アプリケーションを作成したり、データ分析や個別のセンサーネットワークを構築する。一方で、横断的なネットワーク、ストレージ、サーバーセキュリティ、オペレーションセンターやデータセンターなどのITインフラおよび設置したセンサーネットワークなどは一元管理し、縦割りシステムと連携させる。

 これにより、ビルの入館ゲートの顔認証システムと物流システムなどを連携できる。例えば、担当者が朝入館すると、それを自動配送システムが感知して、必要な荷物などを迅速に届けることが可能になる。また、スマートグリッド、スマート施設管理システム、地域冷房システムを統合管理することで、より効率的な冷房が可能になり、エネルギー消費量の削減につながるとしている。

 PDDでは、実際の活用事例を通じてODPの有効性を証明することで、標準的なスマートシティプラットフォームのモデルケースとし、シンガポール国内のみならず海外展開したい考えだ。