米国テキサス州の州都オースティン市が、市内交通の信頼性を高めるために、新しいモビリティシステムの導入を積極的に進めている。同市は、全米でも最も先進的な交通管理システムをいち早く導入した都市の一つだ。その象徴的な施設が、市内の信号や渋滞、事故などの状況を管理するTMC(Transportation Management Center:交通管理センター)である(図1)。

図1 オースティン市にあるTMSの外観(撮影:日経BP総研 クリーンテックラボ)

400のCCTV、1100基の信号を管理

 TMCでは、ITS(Intelligent Transport Systems:高度道路交通システム)として米Kimley-Horn & Associatesのソフトウエア・ソリューション「KITS」を、交通信号制御システムとしてKimleyHornと米Sabra-Wang & Associatesが共同開発した「Kadence」を採用した。KITSは、オースティン市以外でもカリフォルニア州ロサンゼルス郡の市内交通やアリゾナ州フェニックス市の高速道路管理システムなど、全米で実績がある。

 市内の交差点など約400カ所にCCTV(Closed-Circuit Television:閉回路テレビ)カメラを設置。TMCでは、CCTVからのリアルタイム映像を、壁一面に並べられたモニターに映し出し、当局の担当者が渋滞の状況や事故の有無などを目視できるようになっている(図2)。

図2 TMSの内部の様子。CCTVのモニターが並ぶ(撮影:日経BP総研 クリーンテックラボ)

 信号制御システムでは、緊急車両やBRT(Bus Rapid Transit:バス高速輸送システム)の車両にGPSデバイスを搭載。その移動具合いを見て、必要に応じてTMCから交通信号を制御する。例えば市内で音楽祭やスポーツの試合などのイベントがある際には、それに合わせて交通信号の切り替えタイミングを最適化することもできる。

 TMCで収集した情報のうち渋滞情報など一部は一般に公開し、民間企業に、それらの情報を活用したスマートフォンアプリなどの開発を促す。実際、ドライバーがより短時間で目的地に到着できる経路を探すようなアプリケーションが開発され、スマートフォン向けなどに提供されている。

 ドライバー向けのアプリも開発されています。ユーザーが保有するGPSの情報に基づいて、その場所から進行方向にある交通信号や渋滞などの情報を検索し、それをドライバーのスマートフォンに送る。こうすることで、よりスムーズで安全な自転車走行を支援している。

次世代の新モビリティの導入を活発化

 オースティン市はまた、次世代のモビリティ社会を目指して、シェアリングサービスや自動運転車、電気自動車(EV)向け充電インフラの整備など、新しい技術やビジネスモデルの導入にも積極的だ。

 例えば2010年5月には全米の都市で初めて、ドイツのDaimlerのカーシェアリングサービス「Car2Go」を導入した。Car2Goは、Daimlerが製造・販売している2人乗りのEV「Smart」を使って、登録を行った会員間で共同利用するサービスである(図3)。

図3 カーシェアリングサービス「Car2Go」を活用してオースティン市を走る「Smart」(出所:Daimler)

 オースティン市でのCar2Goでは現在、Smartは約300台。Daimlerは同市での成果を見て、カリフォルニア州サンディエゴ、ワシントンDC、オレゴン州ポートランド、フロリダ州マイアミ、ワシントン州シアトルなど、全米各都市に拡大していく方針である。

 自動運転車の公道試験走行も進められている。手掛けているのは米Googleのグループ企業である米Waymoで、2015年に試験走行を始めた(図4)。運転席にドライバーが座らない完全に無人の自動運転車両の公道テスト、自動配車サービスである「ライドヘイリング・サービス(ride-hailing service)」も検討中(Waymoはこれらのサービスをフェニックス市で既に実施している)。「将来的には、自動運転車を活用したタクシーサービスを住民向けに提供できるようにしたい」と担当者は話す。

図4 オースティン市の公道を試験走行する自動運転車(出所:Waymo)