EMFや騒音のモニタリングで「安心」を提供、救急車の優先通行の運用も

 環境モニタリングの取り組みでユニークなのは、温度、湿度、照度、COなどのほか、騒音やEMF(Eelectro Magnetic Field:電磁界)までモニタリングしている点だ。特に、「EMFまでモニターしているスマートシティプロジェクトは珍しいのではないか」とMunoz氏は言う。

 EMFが健康に害を及ぼすかどうかは科学的には完全には解明されていない。だが、どの程度のEMFが発生しているのかについて情報を公開することで、市民に安心を提供できると見ている。Munoz氏によると、EMFを検知する特殊なセンサーを約40個導入したが、センサーネットワークのコンセプトは他のセンサーと同じく「オープンなIoTプラットフォームによるデジタルハブ」である。

 騒音のモニタリングについては、市街地を中心に音響センサーを約60個設置して、ノイズの発生状況をマップ上で分析している。24時間体制で、5分間隔でほぼリアルタイムに測定しており、夜間などに大きな騒音が発生した場合には、警察に連絡することがあり、防犯の意味もある。

 廃棄物を収集するトラックがどの程度の騒音を発生するかもモニターして、収集時間やルートを最適化している。音響センサーと信号システムを連動させて、救急車の音を検知したら、優先的に青信号にする運用も実施している。

住民参加型の情報収集、ARの提供も開始

 サンタンデール市は、2013年にEUの補助金に基づく実証プロジェクトが終了して以降も既存のセンサーネットワークを活用し、新たにセンサーを導入して適用サービスの拡大を進めている。

 例えば、住民用の廃棄物コンテナのうち、紙、ガラス、金属などの非有機物向けコンテナ(図6)にセンサーを設置し、廃棄物量をモニターして、満杯になったコンテナだけを収集するシステムを採用した。非有機物廃棄物を対象としたのは、腐敗などの問題がないためという。設置センサー数は1200で、廃棄物収集の省力化と省エネ化が可能になった。このほか、サンタンデール市は上下水道のモニタリング・管理にも同センサーネットワークを活用しているという。

図6 廃棄物コンテナ。中央の青色コンテナが非有機物向けでセンサーを設置(撮影:日経BP総研 クリーンテックラボ)
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 同市の住民が保有するスマートフォンにアプリケーションをインストールし、そこからの情報を収集することでプロジェクトに参加してもらうと共に、さまざまな情報を提供していることも、「Smart Santander」の特長である。

 同アプリケーションを導入した住民は約1万人にのぼるという。これにより、温度や加速度などの基本情報のほか、交通渋滞や道路の穴などの不具合、廃棄物などの情報を送ることで、市の担当者の対応がスムーズになる効果がある。

 スマートフォンのアプリケーションを通じて、観光地や店、公共交通機関など同市の2700カ所の情報をAR(Augmented Reality:拡張現実)の仕組みを使って、提供している(図7)。各店舗はQRコードを発行しており、それを使うことで商品情報やそこから購入することも可能だ。住民だけなく、旅行者もアプリケーションをインストールすれば利用可能で、観光産業の振興にもつながっている。

図7 市民や旅行者向が持つスマートフォン向けのアプリケーションによって、各種情報をARによって提供。店頭に張り出しているQRコードを読み込むことで、店の様子や製品情報が閲覧でき、店舗が休みでも購入手続きが可能(撮影:日経BP総研 クリーンテックラボ)
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ブロックチェーン活用のスマートコントラクトも実現へ

 「Smart Santander」は、多様なセンサーからの複数のデータを活用して、さまざまなサービスを提供していることから、分野横断のデータ利活用を可能にしたオープンソースのIoTプラットフォーム「FIWARE」を採用した。「FIWARE」は、EUの次世代インターネット官民連携プログラムである「FI-PPP」が開発したIoT基盤ソフトウエアで、普及の中心メンバーであるTelefonicaとNECが「Smart Santander」に参加し、協力している。Munoz氏が特に強調したのが、「FIWAREを使うことで、さまざまなサービス提供者のデータを統合するマーケットプレースを構築できる」点である。

 実際、2016年11月には、デジタルサービスビジネスを推進する業界団体のTM Forumと「FIWARE」の業界団体である FIWARE Foundationは共同で、スマートシティ向けのAPI(Application Programming Interfaces)を開発すると発表した。Munoz氏によると、「Smart Santander」でも、このAPIを使ったマーケットプレースの検討を2018年10月からスタートさせた。同時に、「ブロックチェーンを使ってセキュアな取引を行う「スマートコントラクト」の検討も進めている」(Munoz氏)という。