「シティブランド・ランキング -住んでみたい自治体編-」のランキングのうち、5大都市(5大都市圏の中心都市:東京23区、大阪市、名古屋市、札幌市、福岡市)別のランキングについて解説する。それぞれの地域特性を色濃く反映した結果となっている。
「シティブランド・ランキング -住んでみたい自治体編-」では、調査を2段階で実施した。まず予備調査で全1741市区町村から上位250位(254自治体)を選定。この中から、5大都市(5大都市圏の中心都市:東京23区、大阪市、名古屋市、札幌市、福岡市)在住者を無作為に5150人抽出し、「将来、住んでみたい」と思う自治体を選んでもらいランキング化している(調査方法と254自治体一覧はこちら)。
ランキング算出に際しては、回答者が現在住んでいる都道府県の自治体への回答は除外した。例えば23区在住者が東京都内の自治体を、札幌市在住者が北海道内の自治体を選んだ場合、その回答は除外して集計した。同じ都道府県内という「地元意識」要素が強すぎないところで、大都市住民の「将来、住んでみたい自治体」のイメージを探ろうと考えたためだ。
「新・公民連携最前線」では、11月8日に総合TOP100、および、5大都市別のランキングTOP50を公開した。今回は、5大都市それぞれのランキングについて詳しく見ていきたい。
5大都市いずれの住民からも人気の高かった札幌市(総合1位)、京都市(総合2位)、那覇市(総合5位)のような自治体もあるが、各都市のランキングをTOP50まで広げてみると、地域特性を色濃く反映した結果となっていることが分かった。
東京23区――隣接する神奈川、そして長野が人気
東京23区在住者が住んでみたい自治体は、1位・札幌市、2位・鎌倉市、3位・横浜市、4位・京都市、5位・那覇市だ。これは、総合ランキングの上位5自治体と一致する(総合ランキングは1位が札幌市で以下、京都市、横浜市、鎌倉市、那覇市の順)。京都や横浜よりも鎌倉が上位に来ているのが目につく程度で、大きな“番狂わせ”はない。
とはいえ、TOP50まで範囲を広げてみると、23区在住者ならではの「住んでみたい自治体の傾向」が顕在化してくる。目立つのは隣接する神奈川県の自治体で、8自治体がTOP50に入っている。2位の鎌倉市、3位の横浜市をはじめ、マリンスポーツの高級イメージが強い逗子市、葉山町、温泉地の箱根町や湯河原町などである。同じ東京都の隣接県でも、千葉県の自治体でTOP50に入っているのは4団体、埼玉県は1団体であることからも、神奈川県の人気が突出していることが分かる。
中部地方を挙げた回答が多いことも目についた。TOP50のうち15自治体がこのエリアだ。近隣の関東地方の自治体よりも多く選ばれている。なかでも長野県からは軽井沢町、松本市、長野市、安曇野市、諏訪市と、5自治体がランクインしている。
そのほか、沖縄県の自治体が7団体、北海道の自治体が5団体ランクインしているのが目立つが、両エリアは他の5大都市のランキングでも人気が高く、23区ならではという大きな特徴は見受けられなかった。
なお、5大都市それぞれのTOP50のなかで、23区のTOP50のみでランクインした自治体は10団体ある。箱根町(10位)、葉山町(19位)、川崎市(28位)、美瑛町(北海道・30位)、伊東市(静岡県・30位)、つくば市(茨城県・35位)、市川市(千葉県・38位)、新潟市(38位)、館山市(千葉県・45位)、北杜市(山梨県・45位)である。
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大阪市――神戸・山の手へのあこがれ
大阪市在住者の将来住んでみたい自治体ランキングは、今回調査したほかの大都市と明らかに違う。まず、1位の神戸市、3位の西宮市、7位の芦屋市と、兵庫県から3自治体がTOP10入りしていることである。白浜町(和歌山県)が9位に入っているもの目についた。また、横浜市(総合3位)、鎌倉市(総合4位)がTOP5に入っていないのは大阪市のランキングだけだ。横浜市に至っては12位とベスト10にすら入らない。
総合TOP10にランクインした自治体のうち、選んだ理由として「おしゃれなイメージがある(まちのイメージがよい)」が最も多かったのが神戸市と横浜市だ。港町であり、かつて外国人居留区があったおしゃれな街並みであることなど、両者の共通点は多い。それに加え、大阪市在住者のランキングで1位となった神戸市の場合、以前から大阪の大企業の経営者などが多く神戸の山の手に住んでいたという高級イメージも加わり、そのシティブランド力は、大阪市の住民に「住んでみたい」と思わせる大きな魅力があるようだ。
なお、5大都市それぞれのTOP50のなかで、大阪市のみでランクインした自治体は12自治体。西宮市(3位)、白浜町(9位)、宝塚市(兵庫県・15位)、四万十市(高知県・28位)、大津市(滋賀県・33位)、近江八幡市(滋賀県・38位)、尼崎市(兵庫県・41位)、松江市(島根県・44位)、高松市(香川県・46位)、草津市(滋賀県・49位)、姫路市(兵庫県・49位)、生駒市(奈良県・49位)である。このうち、近江八幡市、尼崎市、生駒市は他の5大都市のランキングではすべて100位以下だった。
ここでの注目は西宮市である。リクルートの「住みたい街ランキング2016」で関西ナンバーワンとなった西宮北口がある西宮市だが、そのシティブランド力は、5大都市では「大阪限定」ということになりそうだ。ちなみに、「住みたい街ランキング2016」で関東2位(前年まで5年連続1位)の吉祥寺がある東京都武蔵野市は、今回の大阪市、名古屋市、札幌市、福岡市のシティブランド・ランキングではTOP50圏外であり、そのブランド力は遠方にまでは届いていないようだ*。
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名古屋市――関東と近畿で“シティブランド格差”
名古屋市在住者が「将来、住んでみたい」として選んだ自治体をみると、地元・中部地方への指向が強いことが分かる。TOP50の3分の1以上となる18団体がランクインしている。松本市や長野市、諏訪市や白馬村など長野県から6自治体ランクインしているのをはじめ、隣接する三重県からも志摩市、伊勢市、桑名市が入っている。ただし、TOP10には1団体も入っていない。また、TOP5は、23区のランキング同様、総合ランキングと同じ顔ぶれだ。
地方ブロック別の自治体分布を見てみると、関東14に対して、近畿からは4自治体しかTOP50入りしていないのも特徴的だ。東京と大阪の間に位置する名古屋市だが、関東と近畿との間に「シティブランド力」の格差が見られた。
5大都市それぞれのTOP50のなかで、名古屋市のみでランクインした自治体は5団体。この数は5大都市で最も少ない。「平均からのブレが最も少ない都市」ということだろうか。なお、5自治体とは、高山市(岐阜県・24位)、岐阜市(27位)、伊勢市(三重県・37位)、桑名市(三重県・37位)、白馬村(長野県・46位)である。このうち、岐阜市と桑名市は他の5大都市のランキングではすべて100位以下だった。
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札幌市――沖縄・東京偏重が顕著
札幌市在住者は、「沖縄」と「東京」に強い魅力を感じているようだ。
第1位の那覇市をはじめ沖縄県からは8自治体がTOP50に入っている。沖縄県の自治体は5大都市いずれからも人気が高いが、8自治体がTOP50入りしているのは福岡市と札幌市だけ。さらに札幌市の場合、TOP20に沖縄県の自治体が5つもランクインしており、その人気の高さが見てとれる。
“東京指向”が強いのも札幌市のランキングの特徴だ。東京都23区のうち世田谷区や港区、渋谷区など13区がトップ50にランクイン。TOP50には関東の自治体が半数近く(24団体)入っており、すべて1都3県(埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県)の自治体だった。
しかも、5大都市ランキングのうち「札幌市のランキングでしかTOP50に入っていない関東の自治体」が6つもあり、ここからも関東への関心の高さがうかがえる。この6自治体とは、千葉市(21位)、八王子市(東京都・27位)、横須賀市(神奈川県・31位)、台東区(40位)、大田区(45位)、中野区(45位)である。
なお、「札幌でしかTOP50に入っていない自治体」は全部で7団体。先に挙げた関東の6団体と盛岡市(38位)である。
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福岡市――九州・沖縄の県庁所在地が軒並みランクイン
福岡市在住者の住んでみたい自治体の特徴は、何と言っても九州・沖縄地方に対する地元指向の強さである。第1位は札幌、2位は京都とおなじみの都市が上位に来るが、TOP10には別府市(大分県)や長崎市が入ってくるところがユニークだ。
TOP50の4割に当たる20自治体が九州・沖縄地方の自治体である。しかも、九州・沖縄地方の県庁所在地がすべてTOP50にランクインしている。ランキング上位から、那覇市・長崎市・熊本市・大分市・鹿児島市・宮崎市・佐賀市の順である(福岡市は対象外*)。
5大都市それぞれのTOP50のなかで、福岡市のみでランクインした自治体は10団体。すべて九州地方の自治体だ。別府市(大分県・6位)、熊本市(12位)、大分市(17位)、唐津市(佐賀県・19位)、阿蘇市(熊本県・20位)、佐世保市(長崎県・27位)、宮崎市(27位)、奄美市(鹿児島県・37位)、屋久島市(鹿児島県・37位)、佐賀市(45位)である。このうち、唐津市、佐世保市、佐賀市は他の5大都市のランキングではすべて100位以下だった。
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