「笠間焼」で全国的にも有名な茨城県笠間市。この10年間で市の人口はおよそ4000人減少し、少子高齢化対策は急務となっている。こうした中、市では健康づくりとともにシェアタウン戦略/CCRC構想をまちづくりの基軸に据える。その構想は、14年前にオープンしたある施設がきっかけとなった。山口伸樹笠間市長が、同市の取り組みについて語った。

笠間市長 山口 伸樹氏
笠間市長 山口 伸樹氏
1982年国士舘大学政経学部卒、88年に社会福祉法人尚生会理事、特別養護老人ホームを開設。90年から茨城県議会議員4期連続当選、2006年から笠間市長。現在3期目を務める(写真:栗原克己)
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 現在の笠間市は、2006年に近隣3市町が合併して誕生した。団体、制度の統合が一通り完了した後、どのようなテーマで市民の一体感を醸成し、まちづくりをしていくかを考えた際に、やはり超高齢化社会においては健康づくりだろうと。

 そしてWHO(世界保健機関)が提唱する「健康都市」の理念に賛同し、2012年に「健康都市かさま宣言」を発表した。それまで健康分野は保険、医療、介護などのテーマに絞っていたが、そこからさらに広げ、安心・安全な環境づくり、地域での活動や協働、癒やしの生活、芸術・文化などまで含めた中で、“人間が人間らしく生きるための健康都市”を作っていこうとスタートして現在に至る。

 健康づくりはイメージ通り、体を動かすことが中心になる。健康づくりのイベント、ウォーキングのための「ヘルスロード」の設置、ラジオ体操・リハビリ体操の公共施設での開催などだ。これらと関連し、プールや運動施設を指定管理業者に任せ、健康づくりの拠点として位置づけていきたい。さらに、高齢者が引きこもりにならないようにポイント制度などを活用して、シニア世代の社会活動を積極的に支援している。

宿泊施設付きの農園が人気、利用者の1割が定住

 一方、地方創生の大きな取り組みとして、シェアタウン戦略と笠間版CCRC構想がある。構想のきっかけになったのは、2001年にオープンした「笠間クラインガルテン」という宿泊施設付きの農園だ。

笠間市が掲げるシェアタウン戦略と笠間版CCRC構想の概要(資料:笠間市)
笠間市が掲げるシェアタウン戦略と笠間版CCRC構想の概要(資料:笠間市)
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 ここでは300平方メートルの農園付き敷地50区画を県内外の皆さんに利用してもらっている。年額40万円で最長5年間の利用が可能だ。非常に人気があり、現在までこの施設を利用した方が150人ほどいる。しかもその約1割が笠間市を気に入り、その後、周辺に住宅を建ててそのまま定住している。

 この状況を踏まえて、シェアタウン戦略とCCRC構想に結びつけていきたい。まずはシェアタウン戦略について。東京に笠間市の活動拠点を作り、笠間の魅力を伝える情報発信の場とする計画だ。

 東京には現在、笠間市出身の学生が約400人いる。しかし、そのほとんどが田舎に戻らず、そのまま東京周辺に就職してしまう。これら笠間市にゆかりのある人たちのたまり場になるような施設を想定している。

 さらには、笠間市と縁のある(東京都の)港区、三鷹市との交流を深めていきたい。ここで問題になるのは拠点整備にお金がかかるということ。単一自治体でやるよりも、例えば見附市、高石市と3自治体で1つの拠点を作ってそういった活動ができないものか(笑)。

駅を中心に公共施設を集約しCCRC拠点を設置

 さらに踏み込んだ形でCCRC構想がある。笠間市では駅を中心とした地域に公共施設を集約していく。例えば交流センター、児童館、特別養護老人ホームなど。地域病院も建て直しの際に、駅周辺に移転する予定だ。そこにCCRCの拠点を置く。笠間市には、美術館、笠間焼の窯元、農園、ゴルフ場、観光施設ほか、さまざまな魅力的な施設も多い。市が主導して、これらソフトとCCRCとの関係を深めたい。

 事業主体は民間にお願いしたいのだが、なかなか決定しないのが実情。国はCCRCに関してはサ高住(サービス付き高齢者向け住宅)を想定する。しかしサ高住になると途端に高齢者の介護受け皿のイメージになってしまう。それは避けたい。介護が必要な高齢者を首都圏から受け入れるのではなく、アクティブなシニア世代を受け入れてまちの活性化を図るのが目的なのだ(談)。