新潟県見附市は、積極的に住民が健康運動に参加する「Smart Wellness City(スマートウェルネスシティ)」プロジェクトを展開し、健康を中心としたまちづくりを進めている。一方、道の駅やコミュニティ銭湯の運営に民間から指定管理業者を募るなど、公民連携も盛んだ。アイデアマンでもある久住時男市長は、同市の取り組みを次のように語る。

見附市長 久住 時男氏
見附市長 久住 時男氏
1873年青山学院大学経営学部卒、岩谷産業入社。2001年イワタニリゾート取締役営業本部長を経て、2002年11月に見附市長に就任。現在4期目を務める(写真:栗原克己)
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 私は見附市長になって現在で4期目。当初から「市民との協働」によるまちづくりを目指してきた。市民が参加することで、合理的かつ意欲的で質も高くなると考えたからだ。

 そうした中で、本日の会議にも出席されている久野先生(筑波大学の久野譜也教授、つくばウエルネスリサーチ社長)と出会い、一緒に健康施策を開始した。その動きが2009年に発足した「Smart Wellness City(スマートウエルネスシティ:以下SWC)首長研究会」につながり、スタート時点から参加している。

 この研究会では、超高齢・人口減少によって生じる社会問題をテーマに掲げ、自治体自らがその課題を克服するために「健幸」をまちづくりの基本に据えた。健幸とは、個々人が健康かつ生きがいを持ち、安心安全で豊かな生活を営むことを指し、産官学で継続的に勉強会を展開してきた。

 大事なことは、市民の行動変容を促すことだ。すなわち、我々の施策が市民に伝わってその気になってもらう。とにかく、一歩踏み出すことが大きな課題となる。これについては久野先生も含め、どのような形であれば人々が動くのかを考えて進めている。

 SWCと関連する事例には次のようなものがある。まずは地域の自治組織が自ら課題を解決するケース。見附市ではコミュニティ組織の拠点として、市内9カ所に「ふるさとセンター」を設置している。いわゆる地域共助の仕組みで、地域のことは住民自らが解決する施策に取り組んできた。ここから、公共交通を補完するコミュニティワゴンの運行が生まれた。ワゴンは市で提供する。結果的に、公民連携という形になる。

 次が交流拠点の提供だ。見附市には「まちの駅」と名づけた民間登録施設が市内39カ所にある。これは休憩機能、まちのガイド機能、交流機能を備えた民間主導の交流促進の場で、公共施設や店舗などが対象となる。とりわけトイレの利用率が高く、言うなれば39カ所の公衆トイレ設置と同じ効果がある。

 さらに市内の公共・民間施設25カ所を「赤ちゃんの駅」として登録し、2015年度中に40カ所の認定を目指す。赤ちゃんの駅は出入り口などにステッカーを張るだけで登録できる。根本にあるのは、子育て中の母親たちがどこに行っても楽になればいいという思いだ。地域全体で子育て支援をしている1つの象徴にもなる。この動きを、ぜひ全国にも広めていきたい。

市民・民間・行政のメリットを追求

 現在注力しているのが、民間資本によるコミュニティ銭湯の運営だ。見附市では「道の駅 パティオにいがた」の運営を民間の指定管理業者に委託している(編注:株式会社 豊栄わくわく広場)が、2016年9月にオープン予定のコミュニティ銭湯も民間企業が運営を担う。銭湯は中心市街地の公共施設跡地に市が建設する。

2016年にオープン予定のコミュニティ銭湯では、市が土地と建物を提供し、民間企業が運営。黒字の際は利益の2分の1を市に納入するなど、指定管理の条件はユニークなものとなった(資料・見附市)
2016年にオープン予定のコミュニティ銭湯では、市が土地と建物を提供し、民間企業が運営。黒字の際は利益の2分の1を市に納入するなど、指定管理の条件はユニークなものとなった(資料・見附市)
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 今回の指定管理の条件はユニークで、赤字になったら民間企業の責任、黒字になったら利益の半分を市に納入するというもの。そうすれば公の施設が運営上、赤字になることはない。この条件でも2社が公募した。この経験から分かったのは、民間が経営したくなる施設を設置すれば公募はあるということだ。

 SWCや公民連携の施策がもたらすものは、それぞれの立場によって異なる。市民にとっては人々の役に立っている「生きがい・やりがい」を感じられるのが大きい。民間企業にとっては、自己資本では厳しい部分を公の資本がカバーしてくれることでイニシャルコストを削減でき、全市的な展開によってビジネスチャンスが広がる。そして行政は民間に委託できるまでの仕組みづくりを担当し、それが運営コスト削減を実現する。

 見附市では今、すべてがこうした形でつながっている。これからもWin・Win・Winの関係づくりを進めていきたい。

この記事のURL https://project.nikkeibp.co.jp/atclppp/PPP/120200019/121800003/