大阪府高石市は、政令指定都市である堺市の南隣に位置する。2003年から市長を務める阪口伸六氏は現在5期目を迎え、これまでに大幅な市職員の削減、赤字体質の市土地開発公社の解散決定などにより、市の財政健全化に着手してきた。並行して公共施設の民間化も進める。「ピンチをチャンスと捉える」と話すポジティブ思考が生むビジョンとは――。

高石市長 阪口 伸六氏
高石市長 阪口 伸六氏
同志社大学経済学部卒後、アパレル商社に勤務。1987年高石市議会議員、2003年高石市長。現在5期目を務める。2013年から泉州市・町関西国際空港推進協議会会長。(写真:栗原克己)
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 全国的な傾向として、大きな政令都市も我々のような地方都市も財政難にあえいでいる。これは間違いない。この10年間あまりで、高石市では市職員を600人ほどから、およそ370人まで減らした。また、ピーク時に128億円もの負債を抱えていた市の土地開発公社を、2020年度をメドに解散することも決定した。

 これらの課題には、いずれ手を下す必要があった。財政難の最大のポイントは、福祉や社会保障にかかる扶助費。医療費や介護費がどんどん嵩み、ボディブローのように効いている。職員を削減していかなければ、高齢者や子どもたちの予算が確保できないのだ。

 しかしこのような状況でも、高石市はさまざまな策を施して少子高齢化に向けて奮闘している。少子化の具体的な対策として、新たに8カ所の認定こども園・保育所を設け、公立保育園の民営化を進めた。その結果、待機児童はゼロどころか、今すぐに100人入所できる状態にまでなった。このように民間活力を生かして実践してきた。

ピンチはチャンス、民間のノウハウを大いに生かす

 私は現状をマイナスとは考えていない。むしろ「ピンチはチャンス」だと捉えている。民間の素晴らしいノウハウを大いに生かして、福祉やさまざまな分野で頑張ってもらおうじゃないかと。保育所のみならず、温水プールや体育館、図書館に至るまで、民間の指定管理者制度を導入していこうと取り組んでいる。

 次に高齢化対策について。我々も新潟県見附市同様、「Smart Wellness City(スマートウエルネスシティ)」の一員だ。意見交換をしながら、市民に健康意識を高めてもらっている。2014年12月から導入した健幸ポイントも、非常に市民の関心が高い。運動して貯まったポイントを商品券やPontaポイントなどに交換できる施策で、これをきっかけに市民の健康づくりの活動が飛躍的に伸びた。健康への無関心層とも言える国民健康保険の特定健診の未受診者たちをターゲットに声をかけたところ、すぐさま500人が加入してくれた。まさにこれは“実績”と言える。

 また、高石駅前には再開発で生まれた広場がある。ここにドーム型の屋根を架けて健康づくりの拠点とし、高架下を利用した駅前温泉や、カラオケなどが楽しめる生涯学習施設を作りたい。これらはあくまで構想段階だが、市内各所に散らばる老朽化した老人福祉センターを駅前に集約するイメージだ。こうした施設を利用して、大いに元気になってほしい。

超高齢化・人口減少社会に向け9市4町で地域連携

 もう1つ、我々は超高齢化・人口減少社会に向けて「コンパクトシティネットワーク」なる構想を掲げている。堺市から和歌山県にかけては府内9市4町が連なっており、各市町で独自のカラーを出そうじゃないかと各自治体の首長に声をかけた。

高石市が計画する「コンパクトシティネットワーク」。大阪府南部に連なる9市4町が特色を打ち出しながら相互に連携していく構想だ(資料・高石市)
高石市が計画する「コンパクトシティネットワーク」。大阪府南部に連なる9市4町が特色を打ち出しながら相互に連携していく構想だ(資料・高石市)
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 例えば高石市は文化センター、図書館、大学もあるので文教都市を打ち出したい。逆に市民病院がないため、近隣市との連携を想定している。広域連携案としては隣の泉大津市の市民病院にある産婦人科と、高石市の助産施設をバスで結ぶというアイデアがある。わざわざ各市で金太郎飴のように市民センターを作るのではなく、文化面はこちらの市、医療・介護面はこちらの市というように、協力しながらカバーしていく計画だ。

 コンパクトシティは国土交通省でも盛んに言われているが、こちらは複数形の「コンパクトシティーズ」。コンパクトシティの集まりで行く。