2015年11月25日に東京・秋葉原で開催された「新・公民連携最前線 円卓会議」。分科会2のテーマは「安全・安心まちづくり」だ。相次ぐ大きな自然災害を踏まえ、官民における防災への取り組みは進化してきた。一方で組織や人の連携など解決すべき課題も多い。防災対策を街の価値創造へといかに結びつけるか。発想の転換が求められている。

参加者(敬称略、自治体・民間それぞれ記事中発言順) 野田武則:釜石市長/國定勇人:三条市長/金子淳一:長岡市 原子力・防災統括監/広瀬朋義:神戸市 危機管理監・理事/土居陽二郎:広島銀行 リスク統括部 信用リスク統括課 担当課長/内川哲茂:帝人 高機能繊維事業本部 生産・研究開発部門長/ 北哲弥:大和リース 取締役常務執行役員/千葉淳:イノベーション推進センター 社長 兼 センター長/河野まゆ子:JTB総合研究所 主任研究員/松尾一郎:NPO法人 CeMI 環境・防災研究所 副所長 /金谷年展:東京工業大学 ソリューション研究機構 特任教授、一般社団法人 レジリエンスジャパン推進協議会 事務局長/加藤孝明:東京大学 生産技術研究所 都市基盤安全工学国際研究センター 准教授/[司会]黒田隆明:新・公民連携最前線 編集長(写真:本稿すべて北山宏一)
参加者(敬称略、自治体・民間それぞれ記事中発言順) 野田武則:釜石市長/國定勇人:三条市長/金子淳一:長岡市 原子力・防災統括監/広瀬朋義:神戸市 危機管理監・理事/土居陽二郎:広島銀行 リスク統括部 信用リスク統括課 担当課長/内川哲茂:帝人 高機能繊維事業本部 生産・研究開発部門長/ 北哲弥:大和リース 取締役常務執行役員/千葉淳:イノベーション推進センター 社長 兼 センター長/河野まゆ子:JTB総合研究所 主任研究員/松尾一郎:NPO法人 CeMI 環境・防災研究所 副所長 /金谷年展:東京工業大学 ソリューション研究機構 特任教授、一般社団法人 レジリエンスジャパン推進協議会 事務局長/加藤孝明:東京大学 生産技術研究所 都市基盤安全工学国際研究センター 准教授/[司会]黒田隆明:新・公民連携最前線 編集長(写真:本稿すべて北山宏一)

――大きな自然災害を受けた地方自治体では、どのような教訓を得て、何に取り組んできたのか。

野田 2011年の東日本大震災で得た多くの教訓のうち、良い教訓となったのは、釜石市(岩手県)の学校における防災教育の成果を確認できたことだ。

 当日、学校管理下にいた生徒は高台に避難して助かった。一方、放課後で帰宅していた子供たちも、親と一緒に逃げて被害を逃れた。当時の釜石市には防波堤と高さ4mの防潮堤があったので、3mの津波警報が出ても逃げる必要はないと判断した大人は多かった。その親を子どもたちが説得し、一緒に逃げた。日ごろの防災教育のたまものといえる。

 ハードの整備は重要だが、防潮堤が高くなればなる分だけ、住民の危機意識は低くなるとも言われている。今後も、住民に対する危機意識の喚起に重点を置いた施策を進めたい。

國定 三条市(新潟県)では2004年と2011年に大きな水害を体験した。11年の水害では、100年に1度の大雨といわれた04年の約2倍に当たる累計雨量(959mm)を記録したが、死者数が04年の9人から1人に減るなど人や住戸の被害を大幅に減らすことができた。

 04年の水害後、大規模な河川改修を実施したほか、ソフト面では情報伝達方法を整備した。避難に対する住民意識が変わった効果も大きい。

 市は11年春、片田敏孝・群馬大学大学院教授の協力を基に「豪雨時には従来の水平避難ではなく垂直避難を原則とする」と方針転換し、判断基準を記した豪雨災害対応ガイドブックを全戸に配布した。81.8%の住民がこの冊子を読み、水害時にも避難するか自宅にとどまるかを自分たちで判断した。

釜石市長 野田武則氏
釜石市長 野田武則氏
2007年11月より釜石市長。現在3期目。岩手県沿岸市町村復興期成同盟会会長、被災者に対する国の支援の在り方に関する検討会委員などを務める
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三条市長 國定勇人氏
三条市長 國定勇人氏
2006年11月より三条市長。現在3期目。新潟県見附市長、福井県福井市長、兵庫県豊岡市長と共に「水害サミット」発起人
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金子 長岡市(新潟県)では2004年に水害と新潟県中越地震で甚大な被害を受け、防災・減災対策の強化を始めた。新設する学校に避難所機能をもつ屋根付き広場を設けるといったハード面での取り組みのほか、ソフト面では防災教育などに注力してきた。

 例えば、住民を対象に中越市民防災安全大学を開校。地域のコミュニティを利用しつつ、いかに適切な防災・避難活動をするかを考え、防災マップを作成するなどした。また長岡協働型災害ボランティアセンターでは社会福祉協議会を核に中越防災安全推進機構、中越市民防災安全士会などが定期的に集まって自主的に議論し、災害時に備えている。

広瀬 神戸市では、阪神・淡路大震災の経験と教訓を通じて自助・共助の意識が広がり、地域における「防災福祉コミュニティ」が育成されてきた土壌がある。例えば、すべての小学校区に自治会や婦人会、老人クラブなどの団体が集まり、防災活動と福祉活動を共に担う活動を行ってきた。

 自然災害が激化する近年の状況を踏まえると、これまでの防災活動に加え、今後に向けて何らかの基本理念が必要だと考えた。そこで、2014年に地域防災計画を抜本改定したときに、「自己決定力の向上」という基本理念を据えた。

 自己決定力の向上とは、すべてを市民に任せきりにするということではない。市民、事業者、市がそれぞれの役割を果たし、我がこととして安全行動につなげていくということだ。

長岡市 原子力・防災統括監 金子淳一氏
長岡市 原子力・防災統括監 金子淳一氏
1979年4月長岡市入庁。2011年4月より危機管理監、同年9月より原子力安全対策室参事を兼務。2013年4月より現職
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神戸市 危機管理監・理事 広瀬朋義氏
神戸市 危機管理監・理事 広瀬朋義氏
1982年4月神戸市入庁。保健福祉局総務部長、企画調整局担当局長(指定都市市長会担当)などを経て2014年4月より現職
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