新潟県長岡市は、2004年の地震と豪雨で大きな被害を受けた。行政機能の強化だけでなく、地域リーダーの育成や地元企業による防災製品開発も進んでいる。

長岡市 原子力・防災統括監 金子 淳一氏
長岡市 原子力・防災統括監 金子 淳一氏
1979年4月長岡市入庁。2011年4月より危機管理監、同年9月より原子力安全対策室参事を兼務。2013年4月より現職(写真:北山宏一)
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 長岡市は2004年、豪雨と新潟県中越地震という2つの大きな災害に見舞われた。中越地震では、人口28万人という市にあって28人の死者と5万人の避難者が出た。こうした被害体験を受け、市は防災・減災対策の強化に取り組んできた。

 ハード面では、避難所となる学校の環境整備を2年間で実施した。出入り口にスロープを設置したほか、体育館にはケーブルテレビや電話、LANの端末を設けて災害対策本部会議の中継を避難所で見られるようにした。学校を新設する際には、避難所としての機能を有効に果たせるよう屋根付き広場を設置。トラックが直接入ってきて物資を搬入・搬出できるようにしている。そのほか、学校内の動線を避難者用と教育用に分け、それぞれの生活を支障なく営むことができるようにした。

 12年に完成した市庁舎「アオーレ長岡」では、災害対策本部に大きなディスプレー付きの会議室を設けた。市内各地の河川や道路の状況を約300カ所、リアルタイムで映し出す仕組みなどを導入し、より高い機動力を発揮できるようにしている。

市民約500人が受講した「中越市民防災安全大学」

 こうして災害における行政機能の強化を図ったが、実際に被災した場合は行政だけですべてに対応するのは難しい。地域のコミュニティと連携しつつ、いかにまとまりのある防災活動や避難行動へと結びつけていくかが減災の鍵を握る。

 取り組みの一環として、中越市民防災安全大学を開校した。地域の防災リーダーの育成を目標に、土曜日に13回26コマの授業を行う。06年から毎年50人ずつ、今年で合計約500人が受講した。受講者は、地域の防災訓練に出かけて指導し、あるいは地域の人と一緒に防災マップを作成するなどの活動に取り組んでいる。ある卒業生は、その後市内で防災教育のあり方を研究し、防災教育のコンテンツを1つのトランクにまとめた「防災玉手箱」を提案した。これを用いると、教員は教えやすく、子どもたちも楽しく学べるというツールだ。

地域の防災リーダーを育成(資料:長岡市)
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地域の防災リーダーを育成(資料:長岡市)

地元企業が防災製品開発

 また長岡市内のいくつかの企業は、被災体験を生かした製品開発を行い、国内外に発信している。自動的に電源が入り、緊急放送を流す緊急告知FMラジオ、河川の様子を閲覧できる廉価な監視カメラシステム、避難食に利用できるアレルギーフリーの米粉クッキーなどだ。

 このほか長岡協働型災害ボランティアセンターでは、地域と行政が共働して防災活動を行ってきた。社会福祉協議会を核に、中越防災安全推進機構、中越市民防災安全士会などが自主的に定期的に集まって防災に関する勉強会を開いている。屋根付きの広場は普段子どもたちの遊び場所になるが、災害時には支援物資の集配基地となる。

 行政が提供した場所で、地域の人たちが自主的に連携し、活動していく。こうした仕組みを基盤に、現場発の防災力強化に努めていきたい。(談)