2014年12月に地域防災計画の抜本改定を行った神戸市では、「自己決定力の向上」を基本理念に据え、市民、事業者、市がそれぞれの役割を果たすことで適切な安全行動へと結けていく考えだ。

神戸市 危機管理監・理事 広瀬朋義氏
神戸市 危機管理監・理事 広瀬朋義氏
1982年4月神戸市入庁。保健福祉局総務部長、企画調整局担当局長(指定都市市長会担当)などを経て2014年4月より現職(写真:北山宏一)
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 東日本大震災後に国が実施した災害対策基本法改正や、兵庫県における津波被害想定の発表などを受け、2014年12月に地域防災計画の抜本改定を行った。

 阪神・淡路大震災の経験と教訓を経て、神戸市民には自助・共助の意識が根付き、地域における防災福祉コミュニティの育成も進んでいる。一方、近年は自然災害が激化しており、災害の大規模化や広域化が懸念される。こうした状況を踏まえ、改定に際して「自己決定力の向上」という基本理念を据えた。市民・事業者・市がそれぞれの立場から自ら考えて備え、判断して行動することが、さらなる防災と減災の推進につながっていく。

「自己決定力の向上」の概念(資料:神戸市)
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「自己決定力の向上」の概念(資料:神戸市)

要援護者に特化した条例を制定

 市民の役割とは、日頃から正しい知識を習得し、避難行動の確認や備蓄を適切に行うことだ。市内では、全小学校区ごとに自治会や婦人会、老人クラブなど地域の団体が集まって防災と福祉の活動を行う「防災福祉コミュニティ」の活動が普及している。津波浸水が予想される18地区では、住民が主体的にワークショップを行って避難マップを作成した。また、13年4月には政令指定都市としては初めて、要援護者に特化した「災害時の要援護者への支援に関する条例」を策定した。要援護者の名簿を地域で共有し、いざという時に助け合えるよう防災訓練などに取り組んでいる。

 事業者の役割は、自社従業員の防災教育やBCP(事業継続計画)の実施などだ。来街者の多い神戸駅周辺では事業者が協議会を立ち上げ、いざという時に一時避難場所をどう確保し、来街者をいかに避難誘導するかという計画を策定している。

 市の役割は、防災体制の組織強化を前提に、安全知識の普及や防災情報の提供に始まるハード・ソフト両面の施策を着実に推進させることにある。12年4月に建設した神戸市危機管理センターでは、災害時すぐに初動対応して状況把握と意思決定を行い、市民に向けて迅速に情報提供する体制を整えている。

 神戸市は、土砂災害の歴史とも無縁ではない。2014年に広島市で起こった土砂災害を受けて立ち上げた有識者会議では、ハードウエア、ソフトウエア、ヒューマンウエアに関する多様な課題が指摘された。こうした議論を受け、住民の早期避難を促す避難マップを配布。ケーブルテレビと連携し、いざというとき強制的に電源が入って防災行政情報を発信する仕組みも用意した。

 自己決定力の向上とは、市民にすべてを任せるという意味ではない。市民、事業者、市がそれぞれの役割を果たすことが、適切な安全行動へと結びつく。実現していく過程では、いかに一人ひとりの市民に防災活動を自分ごとと捉えてもらえるかが課題だ。特に、阪神大震災の経験のない若い世代の心に響かせるにはどうすればいいのか。試行錯誤しながら取り組んでいる。(談)