無料Wi-Fiを整備し、市内をIoT(Internet of Things)の実証フィールドとして展開する福岡市。スタートアップ企業をはじめ、IoTビジネスを手掛ける多くの企業を誘致して地域活性化を図るとともに、市民に便利な生活環境を提供する。子どもや高齢者の見守りも、その一つだ。先導役は高島宗一郎市長。その狙いや目指している未来の社会像について聞いた。

――福岡市をIoTネットワークの実証フィールドにしようとしていますね。目的を教えてください。

高島 目的は2つあります。一つは市民の生活を便利にし、それを将来にわたって維持していける持続可能な仕組みを構築すること。もう一つは、新しい価値創造を目指すチャレンジャーを福岡市に呼び込み、優秀な人材と知恵とが集積する場所にしていくことです。

 IoTというと難しいイメージがありますが、難しいのは核心的なテクノロジーの部分だけであって、それを意識することなく使えるサービスを実現すれば、市民にとってはいろいろなものやサービスが便利で優しいものになります。

写真1●高島宗一郎・福岡市長
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写真1●高島宗一郎・福岡市長

 今後の日本では、少子化・高齢化、そして人口減少が進んでいきます。納税者が減り、受益者が増えていくなかで、市民サービスを維持・向上させていくには、新しいテクノロジーを組み込んで、少ない人手で効率的に運用できる仕組みを作らなければなりません。これを実現できれば、人口減少社会にあっても、若い人たちや子どもたちが夢を描ける社会、市民の皆さんが安全に、安心して暮らしていける社会をつくれると考えています。

――もう一つの、チャレンジャーの呼び込みについては?

高島 福岡市では、情報関連産業の集積を活かして、IoT関連事業への支援・振興に取り組んでいます。そんな中で、特に近年は、IoT機器を活用した実証実験のニーズが高まっています。そこで、市内広域でIoT機器の実証実験が行える通信環境を整備し、IoT事業参入への障壁を低くしようと考えました。

 そのためのインフラとして、安くて消費電力の少ないIoT向けの通信ネットワーク「Fukuoka City LoRaWAN」を市内に構築しました。2017年9月から稼働しています。

 IoTを幅広く社会・経済活動の中に実装していくためには、多数のセンサーからデータを集めるためのネットワークが必要です。ただ、IoTで扱うデータは容量が小さく、通信量自体はそれほど大きくないケースが大半です。この点、大容量のデータ通信が可能な3G/4G(第3世代/第4世代移動通信網)といった既存の通信ネットワークは、オーバースペックになりがちで、その分、通信料金も高く付きます。さらに、消費電力が大きいことから、バッテリーが長持ちせず、頻繁に取り換える必要がでてくるといった課題もあります。

 こうした課題をクリアし、安価で手軽に使えるようにしたのが、LoRaWANというIoT用のネットワークです。LoRaWANは、LPWA(Low Power Wide Area Network)と呼ばれる無線通信規格の一つで、省電力で広域をカバーすることができます。

 新しいものを社会に組み込むための環境を整備することによって、チャレンジ心のあふれる人たちに、夢を実現できるエリアとして認知してもらえれば、優秀な人材を福岡に呼び込めます。人材と一緒に市内外からの投資も呼び込めるはずです。そうして、IoTを活用したサービスやビジネスモデルが次々に創出されるような街を作りたいと思っています。