売れるブランド、売れる商品づくりの支援から着手

――ソフト面では、2012年10月から、熱海市と熱海商工会議所が連携して、熱海市役所産業振興室を窓口に「熱海市チャレンジ応援センター」、通称「A-biz」をスタートさせましたね。

 当時、商店街振興を何かやりたかったのですが、考えていたのは「(補助金や交付金で)アーケードをきれいにしましょう」といった形の支援ではありませんでした。商店街のそれぞれの個店に対して「もっと売れる商品がつくれるようになる」という具体的な支援を目指しました。

熱海市役所の一角にある「A-biz」は随時、地域の中小企業の事業相談に乗っている。
[画像のクリックで拡大表示]

 同じく2012年には、熱海らしい魅力ある地元商品を『熱海ブランド』として認定し、全国に情報発信していくための事業「A-PLUS」を熱海商工会議所が立ち上げました。

――「A-PLUS」は、世界的に著名なソムリエの田崎真也さんが特別招聘審査員を務めています。

 熱海の住民でもある田崎さんに就任をお願いしたところ、「市長さん、お受けするには1つ、条件があります。日本一厳しい審査にしていいですか」と言われました。

 行政や商工会議所などの公共がこのような事業を実施する場合、エントリーされた商品には優劣をつけず、みんなにOKを出してしまいがちです。そうなると結局、ブランドをつくるどころか、ブランド価値を下げてしまいます。それこそ、悪しき平等、悪平等です。「それだけは絶対やりたくありません」と田崎さんがおっしゃられたので、「ぜひ、日本一厳しい審査をしてください」とお願いしました。

2018年にA-PLUSで認定された「ATAMI COLLECTION A-PLUS」の認定品紹介チラシの一部(資料:熱海市)
[画像のクリックで拡大表示]

――確かに悪平等かもしれませんが、それでも、公的機関が民間の事業者のエントリーした商品を選別することに対して、反発はありませんでしたか。

 ほぼ半分が落とされる厳しさだったので、最初の3年は「なんで行政が特定の業者を応援するんだ」と不評でした。しかし、3年ぐらい経った頃から、だんだん批判の声が減ってきました。理由の1つには、1年目で落とされた事業者さんたちが「どうしたら、認定してもらえるようになるか」とA-bizに相談に訪れて、そのアドバイスに沿った取り組みが結果を出し始めたことにあります。パッケージを変える、味をかえるといった具体的なアドバイスを受け、2回目、3回目の審査でA-PLUSに認定され始めたのです。

 2016年11月にオープンしたJR熱海駅直結のショッピングセンター「ラスカ熱海」1階にある「A-PLUSショップ」も好調です。ここではA-PLUSの認定品を集めて売っているのですが、通常、こうした店舗はオープン年と比べると2年目の売上げは落ちるものなのですが、今のところすべての月で前年同月より売上げを伸ばし続けています。今では、このA-PLUSの認定を取ることが地元の事業者のステータスになっています。