「協働」から「共創」のまちづくりへ

(写真:松田 弘)
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(写真:松田 弘)

――そこで発足した新たな協働の形が、「ふくやま未来づくり100人委員会」ですよね。今回非常に特徴的なのは、高校生からメンバーに入っており、集まっているメンバーは3世代にわたります。そこには、どんな思いが込められているのでしょうか。

 若い人にとっては、もしかしたら我々のような高齢者は少し煙たい存在になっているかもしれません。いまの時代、高齢者は、これまでの経験を若者に押し付けてはいけないと思うんです。これまでの成功体験が、将来にわたって通用するとは限りませんから。だから、我々の世代はむしろ、若い人たちが議論しやすい環境をつくり、時々アドバイスをする役目を担うべき。若い人たちには、臆せず自分の夢をしっかり地域づくりに生かすのだという責任をもってもらい、双方がうまく調和できればいいのです。

――1年間という短い期間でこれだけ大掛かりなビジョンを完成させました。現場は大変だったのではないですか。

 最初は2年くらいかけようという提案があったのですが、私は1年でお願いしました。絵を描いて終わりではなく、この後の展開こそが大事だからです。時間を掛けても描ききれないものは描き切れないと思いました。こういう議論の時は、第1回目に出てくる意見にエッセンスが詰まっているのではないかと考え、その直感を大切にしようという思いもありました。

――こうして市民がビジョンをつくっていくと、次の段階では市はそれに応えなければなりません。大変な責務ですね。

 それは当然のことです。昔は行政が施策をつくり、市民に示し、市が中心となって市政を運営していました。でも、これからの地方行政は、そうではいけないと思います。我々がすべてを知っているわけではありませんし、最適解を出せるほどの知恵も能力もありません。

――今後の展開はどうお考えですか。

 今回、30年後の未来図として出てきたいくつかの提案を、今後どう組み込んでいけるのか、議論していきます。そのうえで、市の施策に早速取り入れられるもの、数年後に回るもの、形を変えて取り上げるものに分類されるでしょう。透明性のある議論をして、できる限り多くの人が納得できるやり方につなげていきたいと思います。

――現在のところ、この未来図には民間企業があまり入ってきていません。この先どのように関わっていきますか。

 今回は組織単位ではなく、市民として意見を出していただきました。出てきた提案を受け止めるのが行政なのか、団体なのか、それにふさわしいノウハウを持っている企業なのか。それによって担い手としての企業の関わりが出てくる可能性はあると考えています。行政や団体、企業がしっかり受け止め、この絵を大切に現実のものにしていく一歩にしていきたいと思います。

――このプロジェクトで最も難しかったのは、どんな点でしょうか。

 最初のうちは、現場に任せたものの、正直、どこに向かっていくのかという不安はありました。でも、それは民意なんですね。市民の率直な思いです。だから、それを歪曲することがあってはいけない。そこが最も肝心なところだと思ったので、完全に任せて私は参加者の一人として見守ってきました。

――このプロジェクトは、福山市にとってどんなステップになるでしょうか。

 一つは、自分たちの将来をしっかり今の世代が責任を持つ、そんな市民であり社会であってほしいと思います。それと、この絵に描かれた30年後の福山は温かくて、平和で、絆を感じる。そして、豊かな自然に包まれている。そうした思いは、しっかり守っていきたいと思いました。

 今回のプロジェクトを通して、非常に市民の皆さんの地元愛の強さを感じました。地域性は何にも代えがたいものだと思います。福山市は今でこそ人口47万人の都市ですが、合併を繰り返して大きくなってきた街です。それぞれ違った地域性を持った人が集まっており、まだ融合しきれていない部分はあると思います。こうした絵を描くことによって一つにまとまっていけたら素晴らしいですね。

――今回の取り組みは、日本の地方行政にとってどんな役割を果たすことになるのでしょうか。

 人口47万人の都市で、市民の皆さんに議論してもらい、未来図を描くというアプローチは珍しいものだと思います。よく「都民ファースト」や「アメリカファースト」などといいますが、それをもっと率直に実施した手法ではないでしょうか。「お手本になる」というような大それたことは考えてはいませんが、自治体としての大きなチャレンジとして見ていただけると嬉しいです。今後の展開を大切にしていかなければという緊張感にもつながりますね。

 今後は協働から一歩進み、「共創」というステップに進みたい。行政が発想し、役割分担として市民が参加するのがこれまでの協働のまちづくりです。今度は、もしかしたら市民が発想して行政とのコラボを実現する、そして行政が用意したフィールドに市民が参加するだけでなく、クリエーティブな活動をする。これがまさに共創だと考えています。