旧町役場の跡地に設ける生活交流拠点PFI事業の運営フェーズにSIB(ソーシャル・インパクト・ボンド)を導入することで話題になった静岡県島田市。そのほか、トライアル・サウンディングや自治体DXなど意欲的に民間活力の導入を図っている。島田市の染谷絹代市長に公民連携の考え方や、力を入れている事業について聞いた。

(写真:廣瀬 貴礼)
(写真:廣瀬 貴礼)

――旧金谷庁舎跡地では、全国で初めてPFIとSIBによるソーシャル・キャピタル醸成事業を組み合わせた手法を取りました。なぜPFIの運営フェーズに成果報酬型のSIB事業を組み込もうと考えたのですか。

 「施設完成後にSIB事業を展開できる」というこれまでにない組み合わせで、「新たな事業の取り組み実績をつくる」というメリットや、新たな収益機会として、民間企業にやりがいを見出してもらってはどうかと考えたのです。

 議会からは「他の市町村がやらないことをなぜやるのか」「もっと無難な手法を取るべきではないか」という意見もありました。確かにリスクはあります。しかし、この規模の事業を、PFIによる整備事業単体で公募したとして、民間事業者がどれほどのメリットを感じ、手を挙げてくれるのか。甚だ心もとないと思いました。

 そうした考えで、BTO(Build Transfer and Operate)方式での生活交流拠点施設の整備、周辺にある公民館、図書館、体育館、都市公園も含めた一体的な管理運営、完成後の施設で営むSIB方式のソーシャル・キャピタル醸成事業をひとまとめにして公募型プロポーザルを実施しました関連記事*1

*1 大和リース静岡支店を代表とする企業グループが応募し、審査を通過し、2021年8月に優先交渉権者に選定された。

――SIBでは「ソーシャル・キャピタルの醸成を目指す」ということですが、どのような成果指標でどのような取り組みを行うのですか。

 現在、内容を詰めているところで発表できる段階ではないのですが、地域住民の意識改革を進めるためにも、この事業はいいきっかけになると思っています。

 歴史的な背景から説明しますと、島田市に限らず、日本の地方自治体は高度経済成長期に地域の仕事をかなり引き受けてきましたよね。行政は「どうぞ思い切り働いてください。税金を納めてください。その代わり、街の清掃や草刈りは行政がやります」という姿勢でした。

 しかしその後、経済成長が鈍化し、働き方をはじめ、社会のありようも高度経済成長期からは大きく変わりました。人口が減り税収も減り行政も縮小していく以上、地域の仕事はもう一度、地域に戻さなければ立ち行かなくなってきています。自分たちの地域を豊かにするには、まず自分たちが動かなければいけないのだと、住民の皆さんに理解してもらう必要があります。

 この金谷地区では、民間企業と共に住民がソーシャル・キャピタルの醸成に取り組むことで、地域に対する意識が変わっていくといいなと思っています。

 それから、やはり民間の柔軟な発想に期待したいですね。行政の発想はどうしても堅いし、様々な制約もあります。民間が自由な発想でチャレンジして、そこに市民の皆さんが参画していく形が理想です。リスクのある挑戦ですが、これはやる価値のある挑戦です。