小学校のプールは民間スポーツ施設に
――民間企業との連携を図る意義は、何よりまず財政負担の平準化にありますが、ほかにも意図していたことはありますか。
庁舎で言えば、市民の利用価値を高めるような賑わいづくりがそこでできれば、と考えていました。庁舎の脇に別棟で建設した平屋の会議棟が、その役割を担います。そこを活用して、民間事業者や市がイベントなどを仕掛ける想定です。
災害時を考えても、民間事業者との連携は意味があります。建物は民間事業者の保有ですから、市側では被災した建物の復旧を考えずに済みます。市民に向き合った救護・復旧活動に専念できるわけです。
勤労青少年ホームの跡地活用では、ここで民間事業者が整備・運営するスポーツ施設内のプールを、高浜小学校をはじめ、市内の小学校の水泳の授業に活用します。そのため、PFI事業で建て替える高浜小学校にはプールを新しく整備しないで済みました。そこにはもちろん財政上のメリットはありますが、それだけではありません。
小学校のプールの場合、清掃や水質管理などの維持業務は先生方が担います。水泳指導は得意ではない先生であっても担当しなければなりません。しかし民間事業者と組むことで、そうした業務から解放されます。もちろん、水泳の授業には先生が同行します。指導にはスポーツ施設側のインストラクターが加わりますから、児童にとっては、専門性の高い指導を受けられるうえに安全性も高まるわけです。小学校との間の送迎も民間事業者に任せます。先生方の負担が減る一方で授業の質が高まるという点も、民間事業者と連携する大きなメリットです。
――公共施設マネジメントは、10年前に市長に初めて就任した時のマニフェストに掲げていました。2011年度には、国が全国の自治体に要請するより前に「公共施設マネジメント白書」を策定しています。以来、公共施設のあり方を検討し、その結果を基に3つのモデル事業を進めてきました。合意形成には苦労したのではないですか。
はい、苦労しました。人口が減っていく中で将来への備えとして公共施設マネジメントが必要だということは、漠然とかもしれませんが、ご理解いただいています。しかし個別施設に話が及ぶと、利害関係から「納得できない」という市民が出てきます。
そこで聞こえてくるのは、既存の建物を取り壊すのはもったいない、という訴えです。将来、その施設を維持できなくなると説明すると、リノベーションで施設の機能を見直せばいいと反論されます。しかし、建物を維持しながら運営していくわけです。民間で運営するならまだしも、公共で運営するのであれば、限界があります。財政に見合う規模まで公共施設が圧縮されるわけではありませんから。