合意形成には、実際の見積額を示すのが安全

 「もったいない」と言うなら、施設を維持するために予算を投じるのも、もったいないのです。いったん予算を投じてしまえば、将来再び予算を投じてその施設を維持していかなければなりません。しかし、そこが分かりにくいようです。

 もっと切羽詰まった状況であれば、また違うでしょう。例えば小学校に通う児童が減ってしまい、統合しなければいけない、廃校しなければいけない、という切迫感があれば、もう少し納得してもらえると思います。しかし、そこまでの切迫感はありません。

――市では公共施設の更新にかかる費用総額を40年間にわたって試算しています。数字を用いた説明は納得を得られやすいと思うのですが、実際にはいかがですか。

市が2011年度にまとめた「公共施設マネジメント白書」で示した試算の結果。向こう40年間にわたる公共施設の更新費用を、総務省単価を基に算出した(資料:高浜市)
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 これが、そうでもないのです。取り壊し費用にしても更新費用にしても、建設会社に見積もりを算出してもらっているわけではありません。市では、総務省が示す単価を基に試算しています。ところが各論に入って、見積もりを算出してもらうと、この数字とかけ離れた数字になってしまいます。そうすると、試算の数字と違うではないか、と批判を受けることになってしまいます。総務省単価を用いて試算するのではなく、近隣市町で行われた同規模の公共工事の金額を基に類推したとしても、それは高浜市の場合とは違うのではないか、と批判されてしまいます。

 いまとなっては、実際に見積もりを算出してもらうしかない、と考えています。そのための費用が必要になるでしょうが、それが一番の安全策です。

――モデル事業への取り組みがひと区切りついたいま、思うようにできた点、できなかった点、それぞれあると思います。先行した庁舎の整備事業からお聞かせください。

 庁舎に関しては、市としては建物を保有する民間に床の一部をコンビニエンスストアやカフェなどに賃貸する事業を営んでもらえるようにし、収益面でのメリットを打ち出せれば、と考えていました。しかし、最終的に選定された民間事業者の提案には、そうした収益事業は盛り込まれていませんでした。この場所で収益事業を成り立たせるのが、もともと難しかったのかもしれません。

――庁舎の建物は、20年間の定期借家で市が民間事業者から賃借しています。20年後、庁舎機能はどこに置くことになるのですか。

 賃貸借期間が満了する前に、建物を保有する民間事業者と協議し、社会情勢をにらみながら、例えばまるまる買い取って床の一部を賃貸するなど、取り扱いを決めることになります。その時にどのような対応でも取れるように、建物は何の変哲もないシンプルな四角い箱のような造りにしています。

市庁舎外観。3階にある議場は床がフラットな通常の会議室仕様。閉会中は行政や市民にも開放される。市庁舎手前の平屋の建物が会議棟(資料:高浜市)
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