「手ぶら登園」のヒントは自らの経験から

三宅町(みやけちょう)
奈良県北西部にあり、面積約4km2と全国で2番目に小さい自治体。野球のグローブをはじめスポーツ用品の生産が盛ん。大阪のほぼ50km圏に位置し、京都へも電車で約1時間のためベッドタウンにもなっている。人口は6740人(2021年4月1日現在)。

――子育て支援の分野では、まず江崎グリコと連携しました。

 三宅町の人口は1990年をピークに25年間で20%も減り、今6700人ほどです。減少のペースは鈍ってきていますが、下げ止まるところまではきていません。とりわけ14歳までの年少人口の減少が顕著なので、私は初当選以来、子育て支援を最重要施策の1つに掲げ、企業・団体とパートナーシップで子育て期の課題解決を目指してきました。江崎グリコさんは、その第1号パートナーです。

 具体的には、同社の妊娠期からの1000日間にわたる子育て支援ソリューション「Co育てPROJECT」の三宅町版に、2019年から取り組んできました。グリコが開発した夫婦間のコミュニケーションアプリについて、パンフレットやセミナーで啓発を図っています。加えて、夫婦共同での家事・育児を話し合うためのCo育てプログラムを、三宅町バージョンに改良して提供したり、同社の栄養士が、妊産婦・乳幼児向けの食事メニューを提案して母子手帳アプリで配信したりする――などを手掛けてきました。

――大企業との連携は得るものが大きかったのではないでしょうか。

 企業と同じ目線で考えてほしかったので、役場の職員に会社に行ってもらい、大企業の第一線の仕事ぶりを学んでもらいました。その結果、職員の仕事ぶりに変化が感じられました。新しい事業を創り上げていく楽しさが分かったり、違う方法を試してみようという意識が芽生えたりしてきたと思います。

――昨年から町内の公立保育園に導入された、紙おむつ持参不要の定額制サービス、「手ぶら登園」とはどのようなものですか。

 三宅町は、「保育士と保育の質に関する研究会」という学者が主宰する民間団体と子育て連携協定を結んでおり、そのアドバイスを受けて教育保育施設の環境整備に取り組んでいます。「手ぶら登園」はこの研究会の賛同パートナー企業、BABYJOBが提供しているサービスです。

 保育園がおむつの使用量や在庫をパソコンで管理し、サイズごとに必要な量のおむつを発注することで、保護者を登園・帰宅時のおむつの持ち運びから解放します。三宅町がサービスの運営会社と直接契約するので保護者に金銭的な負担は生じませんし、使用済みおむつは町が廃棄するので持ち帰る必要もなくなります。

(写真:水野浩志)

――このようなサービスを導入されたきっかけは。

 実は私自身の体験がベースにあります。子どもが生まれ、毎日これほど多量の紙おむつが必要なのだと驚いたんです。子どもが保育園に通うようになると、毎日持参し持って帰ることが、保護者にとっていかに大変かに気づきました。新型コロナウイルスのことを考えれば、感染症対策としてもよいとはいえません。そこで、「手ぶら登園」サービスの導入を思いついたのです。コロナの緊急交付金を活用し、保護者の負担はなくすことができました。この取り組みは内閣府の地域未来構想オープンラボで先行事例として取り上げていただきました。

 最初は、「仕事が増えるのではないか」と、保育士の中に不満の声もありました。でも、スタートさせてみて、保育士から「業務にかかる時間が短縮でき、おむつの取り間違いという混乱もなくなったので、とても助かっています」と嬉しい声をいただき、保育士の負担軽減にもつながりました。

――成果が見えると、現場の認識も変わってきますね。

 グリコとの連携でもそうでしたが、民間と連携することで、行政の当たり前を見直すきっかけになります。そして課題が解決することで、職員の意識にも変化が生まれるのです。これこそ公民連携の成果だと考えています。

 民間企業は必ず成果を求めます。期間を切って結果を出していく民間の手法は、いわば“成果の見える化”。議会や住民に説明し易いという利点があります。奈良県では、ごみ収集や水道といった事業で広域の自治体連携による取り組みが進んでいます。「広域化」と「個別自治体による民間連携」を組み合わせることで、小さな町でも、質の高い住民サービスを効率的に提供することができると考えています。