市民7万5000人の足の計測データを取り、健康ビッグデータ活用を

――アビリティタウン構想を官民連携、市民共創型で進めるということですが、この「あしゆびプロジェクト」は、どのように民間と連携していますか?

毛布の縁を使ってつくる「モフ草履」。1足1500円で販売されている。毛布は泉大津市に古くから伝わる産業だ(写真:赤坂 麻実)
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 トレーニングやケアの方法を、医師やトレーナーや民間企業などを巻き込みながら実証しています。また、鼻緒のついた履物を一人一足持つことを提唱しています。鼻緒のついた履物を履くと、自然と足指が鍛えられるためです。その履物に泉大津の伝統的な産業である毛布作りの素材や技術を応用しています。市内の⽑布メーカーで余った毛布の縁(へり)から市民が履物をつくり、販売します。

 4、5歳児に対しては足袋型シューズを事業者から無償提供してもらって、実証実験を行いました。その園で足指や体幹を鍛える遊びなども取り入れて1年以上、実験を続けたところ、子供たちの走力や跳躍力が大きく伸びました。それに、インフルエンザも、市内で大流行したにもかかわらず、その園では4人ほどが罹患したものの、そこまでで蔓延がぴたりと止みました。筋肉を使うところに血液が集まるので、末端まで血流がしっかり循環するようになり、深部体温が上がって、免疫力も高まるのではないかと推測できます。

――高齢者向けの取り組みはありますか。

 高齢者の転倒や骨折は、指が地面から浮いていて、感覚機能が働かないことによって起きることが少なくありません。そして、その骨折が要介護状態へ推移する主要因にもなるわけです。

 専門家による手技と、本人の1日数分程度のトレーニングを通じて足の問題を解消することが、健康の維持・増進につながっています。このことを広めるため、実証実験を行ったり、その動画を公開したりして周知に努めています。介護予防の市民サークルで、足指をケアする体操を取り入れてくれているところもあります。

「泉大津市は、南海本線で関西国際空港に約20分でアクセスでき、高速道路ICや国際港湾も有しており、すべての交通インフラのハブになっている。この立地を生かして街づくりをしていきたい」と南出市長(写真:赤坂 麻実)

――今後はどのように展開していこうとお考えですか。

 「あしゆびプロジェクト」によって「健康の維持。増進につながった」という事実は認められるのですが、科学的なエビデンスはまだまだ不足しています。実はその点に、自治体が関与する意味もあると思っています。

 仮説はありますし、それは筋が通っているように私には思えます。(体の状態などが)よくなった事実もある。しかし、科学的根拠は不足している。こうしたときに、行政が実証フィールドを提供すれば、信頼性も担保され、世に出るべき技術が出て行けるのではないか。新しい技術が出てくれば、市民の健康増進への取り組みの選択肢も増やせます。

 今後は、「泉大津版リビングラボ構想」を掲げ、市民7万5000人の足の計測データを取り、市外の方の計測データも含めて、ビッグデータとしての活用を促していきたいと考えています。(東洋医学的なあしゆびプロジェクトに)デジタルサイエンスを組み合わせて、より説得力ある研究開発を推進し、効果的な施策を打ち出そうという考え方です。まずは、2020年3月に完成した南海本線の高架下にある市営広場の「MONTO PARK」に、無料で足の計測が可能な場所を設けます。