高架下広場や新図書館、ヘルシーパークなどハードも充実図る

――MONTO PARKは、連続立体交差事業に伴って、南海電気鉄道が泉大津市に無償貸与した土地を活用して進めているプロジェクトですね。

 設計・施工も南海電鉄に委託しました。パークとはいうものの、公園法に基づく都市公園ではなく広場ですね。この広場に隣接して、コンテナ型の移動建築が並ぶエリア「OZU ROOF」も整備されていて、こちらは南海電鉄の事業ですが、イベントなどでMONTO PARKと一体的に使うことも想定しています。

 MONTO PARKは約1100m2の広さがあり、大型遊具を設置して、一部に人工芝を敷きました。子供たちが天候に左右されず体を使って遊べるようになっています。キッチンカーを置くスペースもあるので、マルシェやパブリックビューイングなど、市民や企業がさまざまなイベントに活用してくれることも期待しています。

平日午後のMONTO PARKの様子。子供たちがよじ登ったり、駆け回ったりして遊んでいる(写真:日経BP)
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――市長はこの高架下施設にどのような効果を期待していますか?

 泉大津駅付近の高架下を、ここに来ればアビリティが引き出せる、社会課題が解決する、そういったノウハウの集まる場所にしたいと思っています。そのような機能を南海本線沿線の便利な場所につくって、市民を巻き込んでいく。技術を実証できれば、泉大津の市民のためだけにとどまらず、日本全国、世界にも共通する課題の解決モデルを生み出せます。

 OZU ROOF側には、増設や撤去が比較的容易なコンテナ型の移動建築を5棟設置しています。このうち3つを使って、足の計測や靴のフィッティングを手掛けるドリーム・ジーピー(大阪市浪速区)が「MyFoot station 泉大津店」を開設します。足形を無料で計測でき、専門家のアドバイスが受けられたり、足にまつわるものが買えたりする店舗になる予定です。膝や腰が痛い人も、例えば自分の足形に合ったインソールを靴に入れると、痛みが軽減されて歩きやすくなるし、(⾼校⽣の)スポーツ障害なども減らせる可能性があります。

 MONTO PARKに敷いた人工芝は、市内の毛布メーカーが製作したものです。市内の就学前の施設3園にも同様の芝を敷きましたが、子供たちがはだしで遊びまわったり寝ころんだりしていました。今後、泉大津の(健康増進などの)事業モデルが他の都市で展開されるときに、ドリーム社や地元企業の技術も採用される可能性がある。そうした“経世済民”のあり方が広まることにも期待しています。

――構想の拠点になるような場所は、MONTO PARK以外にも計画されていますか?

 泉大津駅から海側へ6分ぐらい歩いた場所に、4haほどの広さの「ヘルシーパーク」を整備する構想があり、設計プロポーザルを進めています。アビリティタウン構想の中心となる市民会館跡地の一角に置く施設となります。やはりここにもコンテナ型の移動建築を設置して、さまざまなテクノロジー企業やスタートアップなどを誘致する考えです(関連記事)。

ヘルシーパークのイメージ(資料:泉大津市)
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 2021年7月には図書館を泉大津駅前の商業施設「アルザ泉大津」に移転開設します。新図書館は「未来型の図書館」を目指します。広さは約3500m2。ただ静かに読書や学習をするだけでなく、あらゆる人が集まってイノベーションが起きるような「ワイガヤ空間」にしたいと思っています。

 既存の商工会議所の1階にはロボット技術の企業が入居しましたし、OZU ROOFにもまだ企業誘致の余地はあります。南海本線の高架下もMONTO PARK北側から松ノ浜駅側まで800メートルほどが未利用になっているので、南海電鉄がどのように活用していくのか楽しみです。街全体を新しい技術のショールームにしていきたいですね。

 研究の成果は、2025年の大阪万博でお披露目したいと考えています。万博のテーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」。これまでは世界的な潮流として西洋式の科学技術をもって社会課題の解決を探っていたように思いますが、これからは東洋文明と西洋文明の融合が重要だと私は考えます。われわれ人間も自然界の一部だという前提に立って考えたほうが、本質的な課題解決ができると思うからです。

 関連産業を振興する地域クラスター作りを目的として、「アビリティ実証都市研究会」を設置し、2019年1月にキックオフセミナーを開催しましたが、同イベントや第2回セミナーを、日本全国各地や外国大使館などから大勢の方にご視察いただきました。

 ハードウエア(場所)の受け皿を作り、実証実験の数を増やして、トライ・アンド・エラーしながら進めていく。万博が開催される頃には、「万博会場よりこっち(泉大津のヘルシーパークなど)の方が面白いぞ」と言ってもらえる状態まで持っていきたいですね。

南出 賢一(みなみで けんいち)
泉大津市長
南出 賢一(みなみで けんいち) 1979年12月生まれ。2002年3月、関西学院大学商学部卒業、同年4月、ニチロ入社。2004年4月同社退社。2005年9月、有限会社南出製粉所入社(2017年1月退社)。2007年4月より3期、泉大津市議会員を務める。2016年12月泉大津市長初当選、2017年1月より現職。