公共交通やいじめ対策にICT活用

――大津市はMaaSをはじめ、ICTやAIなど最新テクノロジーの公共交通への導入にも熱心な印象ですが、現在の取り組み状況を教えてください。

 交通面では、高齢者の生活の足と、観光客の周遊の便という2つの課題があります。市北部には、駅と住宅地を結ぶ路線バスが走っていないなど、高齢者が免許を返上してしまうと病院にも買い物にも行けなくなる地域があります。また、市内には琵琶湖・比叡山延暦寺・三井寺・石山寺などの観光地がありますが、相互に行き来するには鉄道や路線バス、ケーブルカーなどを乗り継がなくてはなりません。

 市内の交通不便地では、2015年からデマンド型乗り合いタクシー「光ルくん号」の運行を行ってきました。収益率も50%ほどに達し、一部地域では市の補助金なしで自主運営が始まっています。山間部の駅から遠い地域では、昨年度、国交省の自動運転の実証実験が行われました。また、乗り合いで車を運行するコミュニティ・カーシェアリングの導入検討も始まります。今後はMaaSやライドシェアや自動運転を組み合わせて、利便性と収益性の向上を目指します。

 今年度からは、交通不便地だけでなく、市民と観光客のために、中心市街地と比叡山周辺を結ぶMaaSの実証実験も行います。JR大津駅と琵琶湖を自動運転のシャトルバスで結び、既存の複数の交通機関の一括検索・決済を可能にします。買い物や飲食、宿泊など交通以外のサービスとも連携して、MaaSアプリ内のクーポンで割り引きなどが受けられるようにします。この事業は、国土交通省の「新モビリティサービス推進事業」と経済産業省の「パイロット地域分析事業」の両方に選定されました。

2019年度の大津市版MaaS実証実験区間。将来的には、統合する公共交通の種類を増やし、サービスの質・量を拡充していく(資料:大津市)

 自動運転は、これからの超高齢化社会で欠かせないものであると考えています。市民の高齢化だけでなく、バスの運転士の高齢化も深刻です。そこで大津市では、京阪バスと一緒に、昨年度から自動運転の実証実験を進めており、2020年にはMaaSと自動運転の実用化を目指しています。

 大津市には「イノベーションラボ(18年度までの名称はデータラボ)」という部署があり、ICTやAIを活用した取り組みに関しては、ここで横断的に進めています。今年の5月15日からは、AIによるイベント情報集約サイトの実証実験を始めました。ほか、会議録の自動作成や介護保険のケアプランチェック、保育所AI入所選考、道路状況の自動判断やドローンによる橋梁点検などにも取り組んでいます。最も特徴的なのは、AIによるいじめ事案の分析と深刻化の予測です。

 大津市では2011年に起きたいじめによる自殺事件の反省から、いじめの疑いが生じたら、24時間以内に学校から教育委員会に報告書を提出することになっています。以前は年間50件程度だった報告件数が、現在は70倍ほどに増え、これまでに約9000件の情報が蓄積されました。その内容を専門家の意見を入れながらAIを使って分析し、いじめが起きたときの深刻化や対応を予測するなど、学校現場でのいじめ対策に役立てます。

 2017年からはLINEによるいじめ相談も始めていまして、相談者数は電話の7倍に上ります。また、相談の内容もいじめが深刻化する前のものも多く、中学生が気軽に相談できる窓口になっています。

 イノベーションラボは市の組織ですが、どの事業も行政だけではできないので、さまざまな民間事業者と協定を結ぶなどして連携しています。データサイエンスの分野では滋賀大学とも協定を締結しました。