1時間250円で介護を支援、1泊2000円の宿泊サービスも提供

――具体的なサービスの内容を教えてください。

 介護SOSがスタートしたのは私が2期目に入った4年前の2016年の4月です。高崎市内にお住まいの、介護や見守りを必要としている高齢者の家族が対象です。そこには老老介護の高齢者世帯なども含まれます。

 先ほどもお伝えしましたが、24時間365日、電話1本いただければ、介護福祉士などプロのヘルパーが原則2人で依頼者の自宅に伺います。1時間あたり250円で介護のお手伝いをします*1

 こうした訪問サービス以外に、宿泊のお手伝いも行っています。日常生活に突発事項はつきものです。急に2、3日家を空けなければならなくなったが、老親のことが心配。そうした場合に利用できる1泊2食付きの宿泊サービスで、1泊が2000円です*2

*1 利用回数は1カ月5回まで。ヘルパーによる主な提供サービスは食事の準備・調理、見守り、入浴や排せつの介助、通院など外出の同行、掃除や洗濯、買い物、衣類やシーツの交換など洗濯など(通院などにおける車の手配はない)

*2 送迎付きは3000円。1カ月の利用は3回まで(1回の利用は2泊まで)。宿泊施設への入館時間は午前 8 時から午後 8 時まで。
介護SOSサービスの対応風景。シフトを組んで24時間電話対応を行う(写真提供:高崎市)
介護SOSサービスの対応風景。シフトを組んで24時間電話対応を行う(写真提供:高崎市)
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――事業としての予算規模はどのようになっているのですか?

 2016年度に約4500万円でスタートして、20年度は約9000万円になっています。実際の訪問件数、つまりサービスを提供した件数は、16年度は531件、宿泊サービスについては44件でした。18年度、19年度は当初の2倍以上の利用者数で推移しており、それだけ市民の方々に浸透してきたのだと思っています。19年度のサービス提供件数は1260件、宿泊サービスについては100件となっています。

――現場の実務を行っているのはどういった会社なのですか?

 高崎市を中心に介護サービスを展開しているケアサプライシステムズ(文末のカコミ記事参照)にお願いしています。事業の内容を市内にあるいくつかの業者さんに説明し、運営が可能であるか検討していただきました。担当の職員との話し合いなどを通して、最終的にケアサプライズシステムズさんにお願いすることに決定しました。毎日数人のシフトを組んでいただき、市内のどにでも1時間以内に駆けつけられるように差配していただいています。

――実際に利用した方々はどんな感想を持っていますか?

 脳梗塞の後遺症がある奥さんがトイレで転倒し、困ってしまった旦那さんが介護SOSに電話をかけたところ、すぐに対応してくれたそうです。このことがきっかけで、ケアマネジャーなど介護保険サービスの関係者が連携し、室内にポータブルトイレを設置するなど、生活環境を改善することができたとのことです。

 また親戚の結婚式のために家族が泊まりで外出することになったのですが、見守りが必要な高齢家族がおり、ひとりにすることができない。そこで介護SOSを利用、無事結婚式に出席できた、という声も聞きました。この方は「息抜きにもなった」とおっしゃっていたそうです。

――介護SOSサービスの成功により、他の自治体からの視察も増えていると聞きます。しかし、同様の取り組みをスタートさせたという話は聞きません。どうして高崎市はこうしたサービスが可能だったのでしょうか?

 サービスを適切な企業にアウトソーシングできたことが大きな要因です。業務を委託したケアサプライシステムズは、市内全域をカバーして24時間対応できるだけの規模を持っています。この出会いが大きかった。例えば小規模の事業所をいくつか組み合わせてこうしたサービスを展開すると、どうしても動きが鈍くなってしまいます。その点、ある程度の規模で広域をカバーできる現在の体制はスピード感と質の均一性を保つという意味で理想的なのです。他の地域で実現していないのは、こうしたパートナーさんを確保するのが難しいからかもしれません。

保険外サービスだからこそ、かゆいところに手が届く

――介護SOSは介護保険サービスとは別枠です。介護保険を使う場合、受けることができるサービスとそうでないものの区別が複雑で、素人には見えにくい部分もあり、現場が混乱することもあると聞きます。介護SOSは「困りごと」であればとにかく対応してくれるのが、利用者にとって使い勝手のよいサービスだといえそうです。

 一人暮らしの高齢者が救急搬送されたときの話です。介護SOSのスタッフが、入院のために必要なものを準備してくれたうえに、入院中の洗濯物などにも対応してくれ大いに助かった、と言っていただけました、こうした困りごとを介護保険サービスの枠組みで対応するのは難しいでしょう。一人暮らし高齢者が急増する現在の日本にあって、ニーズを先取りした仕組みといえます。

 また、思わぬ効果もありました。それは、真の需要の掘り起こしができているということです。高齢者のなかには、介護保険の世話にはなりたくない、要介護認定なんかされたくない、と思っていらっしゃる方も多い。

 それでも日々の困りごとは発生します。そんなときに電話一本でヘルパーさんが駆けつけるのが介護SOSです。価格も安いのでこれなら利用してみようと思っていただける。そしてヘルパーさんと接するうちに、「介護認定を受けて、正式に福祉の世話になってみようかな」と思ってくれる方も出てきているのです。