モンベルという会社、ブランドが持つ訴求力は大きい。県内はもちろん、他県の方もモンベルに行けば、アウトドアの様々な情報を得たり、不足の部分を補ったりできると考えて店にやってきたりします。決して秋田県だけをエリアとした店ではないと考えている。

 そこが私どもとしては有利な財源いえども、上限1億円を投下する副次効果があります。建物はモンベルの所有で、黙っていても固定資産税などは入り、町の支出は一定の年数でペイするわけですが、それだけでなく直営店があるという訴求力が地域に人を呼び、その人たちが別のところで経済効果をもたらしてくれると見込んでの誘致です。

――モンペルのほかにも様々な企業と提携しています

 さきほども少し話に出ましたが、日本航空とは地域振興を目的とした連携協定を締結しています。ヨネックスとは昨年12月、スポーツを通じた町民の健康増進や町の活性化を目的とした包括提携協定を結びました。スポーツ振興、子どもたちの育成、健康増進・ヘルスケアの推進など5つの項目で提携します。本年度はヨネックス契約選手によるランニング教室やウオーキング教室を開催し、バドミントン部も美郷町で合宿する予定です。ヨネックス契約選手の大坂なおみ選手のサインが入ったラケットバッグを寄贈していただき、総合体育館リリオスに展示しています。

 また、この地では江戸時代から生薬の一種である甘草が栽培されていました。「龍角散」の原型を作った藤井玄淵、玄信父子は美郷町六郷地区の出身。そんな縁もあり、2013年2月に株式会社龍角散と地域活性化包括連携協定を締結し、地域住民の健康づくりや町の活性化に取り組んでいます。

(写真:淡路敏昭)
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 健康づくり充実事業として、今年から健康ポイント事業を始めました。健康診査や人間ドック等の受診者や町内で開催する運動教室、講演会等への参加者にポイントを付与し、一定のポイントが貯まると、龍角散などから提供された協賛品がもらえるというものです。

 町長として、町民が美郷町について第三者と話をするときに「私の町はこういう町、こういうことをやっている町だよ」ということが自然に出てくる。「語ることができる」町にしたいのです。人口2万人という小さな町ではありますが、日本を代表する企業と提携して、様々な取り組みをしているのはそのためです。

 バドミントンの事前合宿という東京五輪のレガシー作りもそうですが、語れる「コト」を持つことで、美郷町という枠組みの新しい町に対する思いが深まり、広がります。住民が「うちの町にはなにもない」と思ってしまう。そういう町にはしたくないのです。

 これができると、いろんな町の取組みに参加しよう、地域作りに参加しよう、手伝えることがあったらやろうという気持ちになると思います。思いを持つこと、愛郷心を持つことはとても大切です。物事を見たり、聞いたりしたときに、それをどういう感覚で受け止めるか。心のよりどころが持っている 持ってないで違う気がします。スポーツや様々な取り組みを通じて、思いを持つ、語れる町を作っていきたいのです。

松田 知己(まつた ともみ)
秋田県 美郷町長
1963年秋田県仙南村(現・美郷町)生まれ。1986年東北大学農学部卒業後、秋田県庁入庁。1996年仙南村助役に就任。2000年仙南村長に就任。2004年11月合併により誕生した美郷町長に。現在に至る