「需要があるから発行」は早計

――2020年には、新たに長野県と神奈川県もグリーンボンドを発行しました。世間のSDGsに対する関心も高いことから、新たなファイナンス手法として期待する自治体も多いようです。

吉浦 個人や機関投資家の間で、SDGsやESG投資に対する関心が高まってきており、東京グリーンボンドがその恩恵を受けているのは確かでしょう。「環境事業への理解を通じて都民のオーナーシップ意識を喚起する」ことを取組意義の一つとして掲げるグリーンボンドですが、都政に関心を持ってもらえるチャネルが増えたことは大きな成果です。

 しかし「需要があるから」といった理由だけで発行を決めるのは、少し早計かもしれません。グリーンボンドの発行は、手間もかかるからです。例えば、発行に当たっては、通常の信用格付けに加え、国際資本市場協会(ICMA)が定めたグリーンボンド原則に則り、外部評価を受けることが推奨されます。東京グリーンボンドは、海外の評価機関から「原則に適合」と認められましたが、評価項目は多岐にわたり、評価を受けるまでの過程では、紆余曲折もありました。

■東京グリーンボンドの主な発行フロー
青色文字は通常の地方債にはない手続き
発行準備
  • 発行計画の検討
  • 調達資金の充当対象プロジェクトとプロジェクト評価・選定プロセスなどの検討
  • 見込まれる環境効果の算定
  • 格付け取得
  • 引受会社の選考
  • 外部機関による評価の取得
  • IR
  • ドキュメンテーション
  • プレ・マーケティング
債券発行
  • 発行条件(発行額、利率等)の決定
  • 投資家からの払い込み
債券発行後
  • プロジェクトの実行
  • 環境効果の算定、レポーティング
  • 投資家への利払い、償還
(環境省「グリーンボンド発行のフロー」と東京都への取材を基に作成)

 加えて、グリーンボンドは売れば終わりという商品ではなく、プロジェクトを通して得られた社会的リターンに関する説明責任もあります。過去4回の発行で好評を得た東京グリーンボンドですが、まだまだ発展途上段階です。自治体が発行する債券として、どのような商品性が適切なのか。人気にあぐらをかくことなく、他の自治体と情報を共有しながら、グリーンボンドのあるべき姿を探っていきたいと思います。

東京グリーンボンドの起債に関わった東京都財務局主計部のメンバー。左より、朝光慎也氏、北尾望氏、鈴木孝典氏、吉浦広美氏(写真:羽切利夫)
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吉浦宏美(よしうら・ひろみ)
東京都財務局主計部公債課長
1998年東京都入都。産業労働局商工部商工施策担当課長、交通局総務部お客様サービス課長などを経て、現職。「東京グリーンボンド」をはじめ、都債の企画、発行などを担当。