地域共助の仕組みは3年でつくれる

――いくつかの自治体と協定を結んでいますが、収入としては、そうした自治体からの補助金もありますね。

  資金面では、初期に地域のコミュニティ・リーダーの発掘・育成などに関わるコストがかさむので、最初の3年間は自治体として予算を割いてもらえるように交渉します。内閣府の地方創生推進交付金や総務省のシェアリングエコノミー活用推進事業など、適用されやすい補助制度もいくつかあります。また、2017年に当社が総務省の「ICT地域活性化大賞」で大賞(総務大臣賞)をいただいて、タイアップ補助金(受賞事例の全国各地域への横展開を同省が支援)も適用できるようになりました。

[画像のクリックで拡大表示]
「ICT地域活性化大賞」(2017年)受賞時の事業概要説明(資料:総務省)

  年度で決まった予算が付くのはありがたいです。短期的な収益の状況に左右されず、計画的、安定的に活動できます。eラーニングによる研修を苦にするシニア世代にも、現地へ人を派遣して実地講習を受けてもらうといった対応が取れるので、人材も早期に育ちます。

――3年でどんな地域も自走(補助金なしで採算が合う)状態になりますか?

  どの地域も1年目の種まきが終わって2年目に入る頃に人材が集まってきて、3年経つ頃には交流会が地域のメディアとしても機能するようになります。採算については、子育てシェアのサービス全体で捉えており、地域ごとの収支は必ずしも重視していません。

――ほかに、自治体と組むメリットはありますか。

  主に、地域への周知や地元の関連団体との連携にご協力いただいています。信頼感があるので、人的ネットワークの立ち上がり方がとてもスムーズです。チラシの掲示や広報誌への掲載など、自治体のツールを使った周知も効果が大きいですね。

――AsMamaがこれまでに協定を結んだ自治体は、奈良県生駒市を皮切りに、秋田県湯沢市、富山県舟橋村、滋賀県大津市、長崎県島原市、さいたま市美園地区。都市や農村など環境は様々ですが、子育てシェアの使われ方も異なるのでしょうか。

  都市部では、お母さんが急に風邪を引いた、仕事帰りの電車が止まってしまった、といった「今日、今このとき」の利用が多いですね。一方で農村では、普段は自宅で子どもをみているお母さんが、収穫などで忙しい期間だけ近所の人に一定時間預かってもらうこともあるようです。湯沢市のような雪の多い地域では冬場、中学生や高校生も自動車で送り迎えする必要があります。これを近所で1台にまとめるのにもアプリが使われています。

既存の子育て支援サービスとは競合しない

――最初の自治体タイアップ例となった生駒市は、どこから連携の話が持ち上がったのですか。

  生駒市には、女性の起業を支援する団体があり、その団体の方がAsMamaを見つけてくださいました。生駒市の公認サービスにならないかと小紫雅史市長に直談判してくださったそうです。市長に話を聞いていただいたら、「これはいい」「すぐにやりましょう」「協定だ」「記者発表だ」とトントン拍子。2015年の10月末に面会して16年1月には記者発表をしました。

  実は、生駒市からは予算をいただいていません。自治体との連携はぜひ実現したいところで、広く展開していくためにも最初の一例が早く欲しかったからです。

――連携するときに、自治体側にどんなことを望みますか。

  子育てシェアは、一時託児所や病児保育所、ファミリーサポートなどの行政サービスや、地域に既にある民間サービスと競合するものではなく、共存していけるものです。利用者からはお金をいただいていませんし、中立的な立場ですから、同じような志を持った地域団体の情報を届けるハブになることもできます。

  ですから、自治体の担当者の方には、私たちが働きかけるべき相手(連携すべき地域のサークル、団体)を明確にして同行してもらえると話が早いですね。逆に「勝手に行ってみてください」と突き放されてしまうと、タイアップの意義が薄れてしまいます。

――自治体には、こちらから売り込みを掛けているのですか。

  自治体へは一時期、私たちから働きかけていましたが、なかなか思うような結果にならないので今はやめています。

――それはどうしてですか。

 「(こちらから売り込むと)営利企業が持ちかけてくる話だから金もうけ目当てに違いない」という偏見は払拭しがたいものがあります。AsMamaは売り上げがどんなに伸びても、利益を次の活動へ注ぎこむので、利益はずっとほぼ横ばい。そういうことが分かる財務諸表まで持ち込んで話したこともありましたが、なかなか難しいです。

  より多くの自治体に興味を持っていただき、声をかけてもらえるようにするために何ができるのか。これからの課題の一つです。