包蔵水力量は3GW

上坂 基本的に流量と落差があれば、水の流れをエネルギーとして利用でき、この潜在量を「包蔵水力量」と言います。日本は、雨や雪がよく降り、山地が多いので、世界的にも「包蔵水力量」が豊かです。全国小水力利用推進協議会の試算では、1MW以下の小水力発電の分野で、未開発の包蔵水力量を3GW(300万kW)と概算しています。

 潜在資源が大きいにもかかわらず、これまで売電事業としてほとんど開発されてこなかったのは、小規模ゆえに経済性に課題があったこと。そして、河川法など法的な制約、そして地域関係者の理解を得るのが簡単ではなかったからです。

 これらの課題のうち、FITによって、経済性の問題がクリアできたことは、たいへんな追い風で、新規開発が動き出し、導入量も増えています。

 実は小水力は、昔から脱穀や籾摺りなど農業の動力源として使われてきました。「売電事業」として開発され始めたのはRPS法が施行されてからです。ただ、同法では売電単価が電力会社との相対で決まり、卸電力市場より安い8~9円/kWhというケースがほとんどで、開発できたのは限定的でした。FITによって、売電単価はRPS法当時に比べて3~4倍に上がったわけですから、FITの貢献度にはたいへん高いものがあります。

 小水力発電の開発コストは、プロジェクトごとに大きく異なりますが、FITにより事業性を持って開発できる立地が大幅に広がったのは言うまでもありません。

ーーとはいえ、国内小水力が持つ包蔵水力量に比べると、実際の導入量は大幅に少ないのが実情です。普及拡大に向け、解決すべき制約は何ですか。

上坂 開発速度が期待ほど上がらないのは、先ほど挙げた課題のうち、依然として残っている課題があるからです。法的な課題としては、河川法に基づく「水利権」がありますが、これは、FIT制度のスタートと並行して、国土交通省が前向きに取り組んだおかげで、大きな制約要因ではなくなっています。

 開発に時間がかかる最大の要因は、「地域の合意」になっています。例として、富山県内の小水力の開発状況とその主体について説明しましょう。

 富山県は、小水力の多い地域の1つで、FIT以前の稼働も含め、現在50件弱が稼働し、合計出力は約17MWに達しています。これらの発電事業者の主体を多い順に挙げると、土地改良区が20カ所、富山県が10カ所、市町が8カ所、電力会社が7カ所、民間が4カ所などとなっています(図1)。

図1●富山県内で稼働中の小水力発電所の事業主体
(出所:上坂教授の資料を基に日経BP作成)
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