売電収益で「合掌造り」を守る

ーー国内の小水力で、デンマークの「農村風力」のように、地域住民主体によるプロジェクトは出てきていますか。

上坂 私も関係し、2016年11月に運転を開始した富山県南砺市上平地区の「小瀬谷発電所」は、小瀬集落の有志によって企画・建設された160kWの小水力発電所です。

 同地区には、世界遺産として登録された「五箇山合掌造り集落」があります。小瀬集落にも県指定重要建築物の合掌造り家屋がありますが、茅葺屋根の葺き替えに多額の費用がかかることもあり、10軒あった合掌造りは2軒にまで減っていました。

 そこで、小瀬谷支流の流れを利用した小水力発電を建設し、その収益を積み立てておき、茅葺屋根の葺き替え費用に充てるというアイデアでプロジェクトが立ち上がり、富山国際大学も協力して、運転開始にこぎ着けました。

 160kWの小水力が生み出す売電収益は年間で3000万円以上になります。過疎化の進んだ集落にとって、これだけの新たな収入源は大きなインパクトがありますし、160kWの出力を得られれば、200軒以上の電力需要を賄えるだけの発電量になります。

 地域主体で開発し、地域に利益を還元できる仕組みは、いろいろな意味で、地域社会に活力を与えてくれます。小水力は、国のエネルギー政策というより、地域社会のために大きな意味を持つ電源になるのです(図2)(図3)。

図2●富山県南砺市の「小瀬谷発電所」事務所
(出所:全国小水力利用推進協議会)
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図3●「小瀬谷発電所」の水力発電設備
(出所:全国小水力利用推進協議会)
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