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日本のPFI、目標達成のために何をすべきか

宮本和明 東京都市大学教授に聞く

聞き手・構成:黒田 隆明、平島 寛【2018.3.14】

PFI法(民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律)が1999年に制定されてから20年近く経ち、PFIの採択件数は700件を超えた。政府は現在、PPP/PFIの事業規模目標を21兆円(2013~22年度)として、更なる普及を目指している。法律制定以降、PFI(民間資金等活用事業)推進委員会や、土木学会インフラPFI/PPP研究小委員会などに関わってきた東京都市大学都市生活学部の宮本和明教授が、これまでの日本のPFIを振り返り、PPP/PFIの今後を展望する。

混合型公共施設等運営権事業やバンドリング(包括化)の推進を

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(写真:宮原 一郎)

――日本におけるこれまでのPFIの量と質について、どのように認識していますか。

 当初考えていたものと比べたら少ないかなという気はします。特に、インフラ絡みの事業は、空港や道路の公共施設等運営権(コンセッション)事業を入れても大変少ないと考えています。国(民間資金等活用事業推進会議)のPPP/PFI推進アクションプランの中でも、インフラのことを書き込んでいるのですが、なかなか軌道に乗りません。昨年度の改訂では改めて要約版にもその点を明示しています。

 本来のPFIである英国式のサービス購入型をはじめ、国際的には途上国でのBOT(建設・運営・移転)を含めて、先進国も途上国もPPPという形でインフラの官民連携に取り組んでいます。有料のインフラ事業となると、中南米のマーケットのほうが日本よりはるかに大きな規模があります。

――アクションプランでは21兆円という目標を設定しています。

 この「21兆円」という数字は、PPP/PFIを4類型(公共施設等運営権制度を活用したPFI(コンセッション)、収益施設の併設・活用など事業収入等で費用を回収するPPP/PFI、公的不動産の有効活用を図るPPP事業、サービス購入型を含むその他)に分けて、民間事業者の収入という形で測り方を統一したものです。コンセッション事業(目標規模7兆円)は、運営部分については一般的に独立採算型のイメージが強く、中小規模の地方公共団体では実施が難しいかもしれません。そこで、アクションプランでは混合型の積極的な検討を強く訴えています。

――混合型のポイントを教えてください。

 公共事業の中にも、下水道のように料金を払う事業があります。料金の支払いがあれば、コンセッション事業を原理的には動かせます。インフラを使わない人にも外部効果があるのが公共事業であり、外部効果に見合う対価の財源は税金とするのが合理的です。下水道が整備されていないと地域の環境が悪化します。下水管が老朽化して道路が陥没したら、社会的な影響が大きい事象が起こります。その防止のために公的財源を適切な範囲で投入するのは当然のことです。すべてを料金収入だけで回収するのではなく、いわゆるサービス購入型の部分と独立採算型の部分に切り分けて、公共が負担すべき部分は税金を投入する。ただし、民間が頑張ればそれなりの利潤が得られる部分は独立採算型にする。そうした混合型のコンセッション事業を推進しようということです。

――コンセッション事業等の当初の重点分野は空港、水道、下水道、道路でした。上下水道の目標達成が遅れているようです。

 水道については、官民連携の推進(水道施設に関する公共施設等運営権を民間事業者に設定できる仕組みを導入)などを盛り込んだ水道法の改正案(2017年9月の衆院解散で廃案)のような内容の制度が実現されれば、追い付いてくる可能性はありますが、上水も下水も管路という見えないものを受け取るリスクを契約の中でどう分担するかが、最も難しい点だと思います。

 例えば、浜松市で実施している下水道のコンセッショ事業が対象としているのは終末処理場だけです。下水道事業という観点からは、管路と処理場を一体にしたほうが明解で、そのサービスに対価を払うのがわかりやすいスキームです。処理場だけが対象というのは少し変則的ですが、管路を含めた事業とすることの利点と問題点をもう少し検討する必要があるでしょう。

――リスク分担について、どのように考えていますか。

 フランスでも英国でも、いろいろな形でリスク分担を図っています。それらを参考にしながら、官民がお互いにリスクニュートラル(リスクに対して中立的な立場)で進めるということでしょう。机上では上水、下水、あるいは中水までまとめてシステムを組んだほうが効率的だと思いますが、そんなことをやったら事業が複雑になり難しくなります。現実的には、基本的な枠組みからスタートして経験を積みながら、だんだんと事業範囲を広げていく方法が考えられます。管路のデューデリジェンス(資産査定)が事前に十分にできないのであれば、オン・ザ・ジョブ的に事業範囲を拡大しながら進めていく柔軟な契約も一つの方法です。

――自治体管理の橋梁の維持管理にも、PFIは導入できないでしょうか。

 大きな橋梁の架け替えは単独でPFIを導入できると思いますが、小さな橋梁の架け替えはバンドリング(包括化)すべきです。数本の橋を集めて20億円ぐらいになれば一つの事業として成り立つでしょう。地域ごとに、コンクリート橋・鋼橋別に、維持管理、点検から、必要に応じて架け替えや大規模改修の設計・施工まで、ライフサイクルにわたって一つの事業としてまとめることが重要です。建設コンサルタンツ協会のインフラストラクチャー研究所で橋梁バンドリングPFI事業として提案しています。

 橋梁だけでも、複数の橋を3~5年で修繕あるいは架け替えをして、20年ぐらい維持管理することが考えられます。建て替えや修繕を行うような橋は、民間事業者はいろいろと工夫をします。日本でも、モニタリングのセンサーを付けるのは当たり前になってきます。ライフサイクルを考えて、民間事業者はいろいろと工夫するでしょう。英国には、ポーツマス市などが導入している広域的な道路(総延長480km)、そしてその構造物や付属物などの維持管理PFIの事例もあります。

――制度的な問題は特になく、自治体がその気になれば実現できそうに思えるのですが。

 そこで問題になるのが、地場建設業の仕事をどう確保するかです。多くの自治体は地場産業の振興・育成のための条例を持っています。小さな橋の案件は基本的に地域維持型の事業とすればよいので、最終的には大手が受注したとしても、施工段階では地元企業と企業連合を組んでやるのがいい。発注者、元請け企業、地元企業にとって”三方よし”のスキームが組むことが必要になります。

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