最近、オフィス街で様々な弁当を販売する移動販売車「フードトラック」を目にすることが増えている。さらに新型コロナウイルスの感染拡大後は、都心のオフィスビルの前だけではなく、マンションや住宅地でも目にするようになった。このフードトラックのプラットフォーム事業を展開するスタートアップ、Mellow(以下メロウ)の石澤正芳代表取締役にその現状と今後の展開について聞いた。

株式会社Mellow代表取締役の石澤正芳氏。2001年にGPSを活用したカフェカーを開業以来、約20年にわたり、屋内外フードエリアの企画・運営業務に携わりながら、空地を活用した継続的な賑わいの創出を模索し続けてきた(写真:吉澤咲子)
株式会社Mellow代表取締役の石澤正芳氏。2001年にGPSを活用したカフェカーを開業以来、約20年にわたり、屋内外フードエリアの企画・運営業務に携わりながら、空地を活用した継続的な賑わいの創出を模索し続けてきた(写真:吉澤咲子)
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――主力事業のフードトラック・プラットフォームはどのようなビジネスモデルですか

 今、「SHOP STOP(ショップ・ストップ)」というサービスを展開しています。これはビルの前など空地(くうち)の活用として、オーナーにスペースを貸してもらう。そこにフードトラック事業者に出店する機会を提供します。フードトラック事業者からは出店料として売り上げの 15%を受取り、そこから数%をスペースの提供者に支払います。フードトラック事業者のSHOP STOP登録は、説明会・必要書類・各種許可取得・保険加入などの条件を満たして頂ければ登録無料です。現在、出店拠点は首都圏や関西、九州を中心に約380カ所。約1000 台のフードトラック事業者が登録しています。

――石澤社長自身も、フードトラックをやっていたそうですね。

 2001年にGPS で位置情報を発信するカフェカーを起業しました。当時はフードトラックと言う呼び名もなく、移動販売車と言っていましたが、こういった事業者に対して営業場所を貸してくれるスペースオーナーもプラットフォームもありませんでした。業界自体も存在せず、社会的な認知度も信用もなかった時代でした。そんな中、公道上での営業が主戦場だったのですが、公道で駐車して販売する行為は道路交通法でどうしてもNGになってしまいますし、駐車違反にもなります。このまま公道での営業だと事業自体がグレーなままで、スケールしていく感じがしませんでした。

 さまざまなエリアでゲリラ的に営業を重ね、オフィスエリアは就業人口のわりに飲食店が少なく、ワーカーの食の選択肢が少なかったのでニーズがあることは分かりました。またさまざまな営業場所で同業者の方々にも出会い、移動販売車の魅力は今の時代にあっていると感じました。個性あるフードトラックの料理をもっと世の中の方に知ってもらうためには、安心して営業できる場所の確保と事業者の社会的信用を得ることが必要不可欠であると思い、スペースオーナーから営業場所を貸してもらえるロジックや社会的に認められるビジネスとして、フードトラック事業者が活躍できるプラットフォームを作ってきました。

――スペースオーナーの意識も変わりましたか

 15年前に比べると劇的に変わりましたね。最初は得体のしれないビジネスをしている人たちという目で見られていました。それが出来立てのおいしい料理を出して、ちゃんと営業許可を取得して衛生的にも気をつけてやっているというのを分かっていただいた。ビル側としては空きスペースを提供するだけで、設備投資や導入コストが莫大にかかるわけでもない。「だったら導入してみましょう」と、どんどん広がっていきました。

――自治体がフードトラックのような移動型店舗を支援する事例も増えてきています

 高齢化が進む集合住宅地、団地などで、時代と共にシャッター商店街化するといった問題もあるように、徒歩圏内の店舗が減っていて、買い物困難地域が増えてきています。その課題解決の一つの方法として、当社は自治体と連携して公共空間を活用し市民サービスとしてSHOP STOPを展開しています。

 さらに既にプラットフォームとしてネットワーク化している地域内のフードトラック事業者を優先的に配車したり、フードトラック事業の起業支援を地域内でサポートしたりしています。自治体、地域事業者、プラットフォーマーが協力し地域内で移動型店舗の市場を創出していこうと構想しています。構想自体は以前からあったのですがコロナ禍が契機となって自治体との連携が増えてきています。

――実際、新型コロナウイルスの感染拡大以降は、住宅地やマンションでの展開も増えています

Mellowのフードトラック。飲食業向けサブスクリプションとして、フードトラックのリース契約と各種保険をパッケージし、開業から経営までトータルでサポートするサービスも提供している(写真:吉澤咲子)
Mellowのフードトラック。飲食業向けサブスクリプションとして、フードトラックのリース契約と各種保険をパッケージし、開業から経営までトータルでサポートするサービスも提供している(写真:吉澤咲子)
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 自治体やマンションデベロッパーがフードトラックに目を向け始めたのも、こうした背景があったからかもしれません。リモートワークが増え、都心のオフィス街の人が減りました。固定店舗で飲食店の営業をされている方にはある意味どうにもできない部分もあるのですが、移動できるフードトラックは人が集まっているところ、需要があるところへ移動して展開することができます。移動販売車は移動できることが最大の武器なのです。

 2020年4月に緊急事態宣言が出てから、当社ではオフィスエリアの開拓から、マンション・住宅エリアに積極的に展開する方向に舵を切っています。いずれまたオフィスエリアの開拓に戻って来ると思いますが、現時点ではそちらに力を入れている状況です。