地域の課題をジブンゴト(自分ごと)化する仕組み「カマコン」
――地域は移住者を引きつけるため、どのような要素を魅力として訴えていくべきでしょうか?
移住者を引きつける要素として、交通の利便性はやはり重要です。どこでも仕事ができるといっても、多くの人は完全に引きこもることはできません。東京や政令指定都市といったハブとなる場所に出かけやすい地域である必要があります。家族で過ごす街ですから、子育てや教育のしやすさも重要な要素です。

しかし、それらに加えて今は「住んで楽しい、面白い街かどうか」を重視する傾向が強まっているように思います。例えば、自分が知っている人が住んでいることや、楽しく面白い店や物産があることなどが重視されると感じています。海や山などの自然が豊富であること、鎌倉の寺社仏閣のような文化財があることも移住者を引きつけているようです。
また、僕が鎌倉で「カマコン*」という地域活動を2013年から行ってきて感じたのは、移住者が「楽しい、面白い」と感じる地域には、移住者を含めた新しいことを受け入れる地域の文化があるということです。
移住者との交流を避ける閉鎖的な地域を、移住者は楽しい、面白いと感じにくいでしょう。観光地として旅行者を受け入れている地域にはある程度オープンな地域文化がありますが、そういった地域以外は、移住者と住民が自然に交流できるように地域の文化を変える必要があります。
カマコンは、地域の文化をフラットかつオープンにするとともに、地域課題へ主体性に取り組む住民を増やす施策、あるいはワークショップだと考えて続けてきました。まちづくりをテーマにしたワークショップの一種ですが、「ブレスト(ブレインストーミング)」を重視するのが特徴で、参加者が地域の課題を「ジブンゴト(自分ごと)化」して自ら取り組もうとする機運をつくることができたと考えています。
鎌倉でこのカマコンを続けるうち、どの地域でも同じことが実現できると思うようになりました。また、他の地域から自分たちも実施したいという要望が出てきました。そこで、さまざまな地域で「○○コン」といったカマコン的なワークショップのお手伝いをしたところ、予想以上に多くの地域に広がりました。
定義は難しいのですが、カマコンのように「ブレスト」を重視するワークショップを1回でも開催した地域は50を超えていると思います。定期的に続いているものも10を超えているでしょう。
――カマコンのどういうところが受け入れられているのでしょうか?
一つは、住民がまちづくりに参加する際の「型」として汎用性があるとともに、参加すると「楽しい、面白い」という点だと思います。誰でも気軽に参加できるようにしていますし、お金もそんなにかかりません。実際に参加して、ジブンゴト化を実感した人たちが広げてくれたと考えています。
もう一つは、地域が新しい活動を始める際によくある「住民の拒否反応」を減らすことができる点です。カマコンだけで地域の課題が解決するわけではありませんが、解決の担い手になろうとする人が増え、新しい活動を短期間でスタートできます。
カマコン的な活動を行う地域は、移住者の増加にも積極的だと感じますし、カマコンが移住者を引き寄せることもあります。鎌倉のカマコンは市外からも参加できるようにしていますが、市外の人がカマコンでプレゼンして、みんなで応援しているうちに鎌倉へ移住してきたこともありました。