成功のポイントは、明確なビジョンと「長期的」「全体的」な視点

--特に学校となると、身近な施設であり、様々な立場の人が意見を言えるので、合意形成に至ることは難しそうです。

 多くの人が学校の統廃合に反対をすると思われていますが、実は学校に通う子どもの両親は反対していないことが多いのです。親は子どもにそれなりの規模の大きいところで、良い環境で教育を受けさせたいと考えるものです。ところが親がその考えを呈しようとすると、地域の年長者が事前に根回しをして抑えようとするケースさえ見受けられます。

 学校は地域の拠点なので、短期的にどうするかを問われると、その学校に関係する人々しか議論に積極的に関わりません。ところが、長期的なビジョンで地域全体をどのようにマネジメントしていくか、という視点であれば多くの人が関係してきます。例えば12校を2校に減らさなければ立ち行かないと話をすると、特定の学校の周辺だけでなく、地域の全員が関係することになり、合意を得やすくなります。

 「公共施設を減らす」と言うと暗く捉えられがちですが、学校統廃合をきっちりやって必要な機能きちんと備える、それ以外は全部やめるということにすると、学校が拠点になって、いろいろな機能が付いてきます。民間も投資できるようになり、保育所や幼稚園、郵便局、クリーニング屋、ガソリンスタンドなど、便利な施設・エリアとして集約されていくのです。

--説得力のある集約後の将来像の提示が求められます。

魚津市学校規模適正化推進計画のウェブサイト
魚津市学校規模適正化推進計画のウェブサイト

 うまく行っていないところは、地域の中に核がないことが問題です。一点一点を見ると利用者が少ない地域も、機能が集約されて1〜1.5万人のマーケットが形成できればエリアとしての需要が上がり、損益分岐点が下がって民間投資がしやすくなります。民間資金で持続可能なところまで持ち上げていくことが重要です。市民ワークショップを開催しても、圏域の設定を失敗するとうまくいきません。細かなところで議論をするのではなく、概ね学校が残せるであろう1〜1.5万人規模で考えればいろんな知恵が出てくるものです。

 例えば現在、富山県魚津市で実際に学校の統廃合に向けた合意形成の取り組みが行われていますが、将来的なビジョンを示して地域全体の状況を分かりやすく提示しています。すると、市民側も善良な市民として反対しにくくなってくるわけです。一方、統廃合がうまくいっていない自治体は検討の視点が短期的だったり、局地的だったりするケースが多いのです。できる限り巻き込む市民、関係者を増やすことがポイントです。

根本祐二(ねもと・ゆうじ)
東洋大学院経済学研究科公民連携専攻長、東洋大学PPP研究センター長
根本祐二(ねもと・ゆうじ) 1954年鹿児島生。1978年東京大学経済学部卒業後、日本開発銀行(現日本政策投資銀行)入行。2006年同行地域企画部長を経て、東洋大学経済学部教授に就任。現在、同大学院経済学研究科公民連携専攻長、同PPP研究センター長を兼務。内閣府民間資金等活用推進委員会委員等公職を多数歴任。