RIZAPグループで、ボディメイクなど主力の美容・健康関連事業を手掛ける事業会社のRIZAP。地域の健康増進にコミットする成果報酬型の「自治体向けプログラム」を開始し、自治体向けのサービス展開を強化し始めた。静岡県牧之原市と長野県川上村での健康増進プログラム実施を経て、長野県伊那市では成果報酬型のプログラムを本格始動。さらに多くの自治体で導入検討が進む。同グループの主力事業である「結果にコミットする」ボディメイク事業(RIZAP事業)を新規事業として立ち上げ、現在は事業責任者を務めるRIZAP取締役の迎綱治氏に、自治体向けサービスを強化する狙いや現状での成果、今後の展望を聞いた。

(写真=清水真帆呂)
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――昨年の静岡県牧之原市と長野県川上村での健康増進プログラムの提供に続いて、今年の1月からは長野県伊那市で新たな「成果報酬型」の自治体向けプログラムが始まりました。自治体向けサービスに力を入れられた経緯、狙いとは?

 6年前にRIZAPの事業を創業してからこれまでで既に累計で10万人以上のお客様にご利用いただいています。当初はダイエットすることを目標とし事業を展開していたのですが、その中で、痩せて、生活習慣もガラッと変わったことで「健康になった」という声をたくさんいただきました。例えば、持病の薬をずっと飲まれてきたお客様が、飲む量を少なくできたとか、飲まなくてもよいくらいまで改善したとか。

 もともと我々としても、痩せて標準的な体重になることと健康改善には、必ず相関関係があると信じていました。そうした中でRIZAPに通ってくださるドクターの方々も増えていき、創業2年目くらいからRIZAPのトレーニングや食事のメソッドを研究したいというお話をいただくようになりました。そこから様々な大学、専門家の方々との臨床研究がスタートしていきました。

 臨床研究を行う中で、RIZAPのトレーニングをする前とした後で比べると、脂肪肝の改善効果が見られる、体脂肪が減る、心理面でもネガティブからポジティブになるといった効果があることが明らかになりました。それらを論文や学会で次々に発表していった時期がありました。

 そうした発表により、様々な団体、企業、自治体を含めて、プログラムの導入を検討したいといったお声をいただくようになりました。自治体の場合は、住民の高齢化が進む中で介護保険や医療費の増大による財政悪化などの課題があり、地域住民の方にいかに健康になっていだくか、ということを考えている方が多くいらっしゃいました。改善策をいろいろ探されている中で、RIZAPに問い合わせをいただくようになったというわけです。

――自治体向けの第一弾となった牧之原市からは、どのようなアプローチがあったのでしょうか。第一弾としては17年2月くらいから約3か月間、最初のプログラムを実施されました。

 牧之原市の場合は、西原茂樹市長(当時)から問い合わせをいただきました。お話させていただいたところ、さらに興味をお持ちいただいて、実際にやってみることになりました。そしてプログラムの参加対象者となる27人の方々を牧之原市より募集していただいて、RIZAPの自治体向けプログラムをスタートさせていきました。

 通常のRIZAPのサービスは、1対1のパーソナルトレーニングを提供しているため、1人のお客様にかける時間は、メールでの食事指導なども含めて相当なものになります。自治体向けプログラムではトレーナー1人が多くの人数を担当するため、RIZAPの1対1のメソッドを活用しながら、複数の1対nで結果が出るようなプログラムを開発しました。そして、牧之原市向けに初めて「自治体向けプログラム」として提供していったのです。

 ちょうど様々な機関と臨床研究を行う中で、健康の若返り指標として、筑波大学と共につくった独自の体力年齢の測定方法がありました。牧之原市では、この測定方法を使って、プログラムによって体力年齢が約13歳若返ったこをが分かりました。その結果を世の中に発信していくと、記事をご覧になった自治体の担当の方などから問い合わせをいただいて、それでまた次につながるといったことが続いているのです。

牧之原市で実施された健康増進プログラムの様子(左)と実施会場「総合健康福祉センターさざんか」(右)(資料:RIZAPグループ)
牧之原市で実施された健康増進プログラムの様子(左)と実施会場「総合健康福祉センターさざんか」(右)(資料:RIZAPグループ)
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せっかくやるなら「成果に応じて対価をいただく」

――次に長野県川上村での健康増進プログラムが17年11月に始まりました。牧之原市の場合は高齢者向けでしたが、川上村では若年層向けへと対象が変わっています。

 川上村の場合は、人口減が課題だったということがあります。子どもが少なくなって、そのうえ20代になったら都会に出てしまい、過疎化が進んでいた。そこで、「まずは若者にもっと元気になってもらって、結婚や出産などを支援していきたい」とお考えでした。そうしたことから、20~30代を対象にしたプログラムを提供させていただくこととなりました。川上村の場合は、若者がより健康的になり、“村力”の底上げを行うことで村全体のイメージを上げていきたいという狙いを持たれていたんですね。

 お話を聞くと、自治体ごとに悩みどころは違います。RIZAPの1対nの自治体向けプログラムは、必ずしも高齢者向けのメニューだけではなく、若年層の運動不足解消が悩みであれば、それに対応したプログラムを提供させていただくことも可能です。

――なるほどそうなんですね。一方でサービスの料金体系で見ると、最初の牧之原市と川上村の場合は1人当たりいくらといった料金でしたが、3つ目の伊那市のプロジェクトからは新たに「成果報酬型」になりました。

 はい。牧之原市と川上村の実績を受けて、代表(瀬戸健社長)ともいろいろ話をして、せっかくやるなら、やはり「成果に応じて対価をいただく」という我々のポリシーを大事にしていきたいと。そして、自治体向けプログラムにおける、“成果とは何か”ということを考えました。

 伊那市は、健康長寿の街として保健福祉事業に力を入れており、今回は共同で健康づくり事業ができないかと話がありました。そこでRIZAPではまず、参加する住民の方々の成果となる、体力年齢の改善という健康スコアの向上にコミットする。そうしてさらに、自治体の悩みである財政面の改善に寄与したいと考えました。つまり、参加する住民の方々の健康面、自治体の財政面の両方の成果にコミットしていく。それを目指し検討していったのが、伊那市での成果報酬型のプログラムになります。

成果報酬型の自治体向けプログラムの基本モデル(資料:RIZAPグループ)
成果報酬型の自治体向けプログラムの基本モデル(資料:RIZAPグループ)
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――成果報酬について、もう少し詳しく教えていただけますか。

 伊那市の場合、具体的には、まずプログラム終了後に「体力年齢」が10歳以上改善する成果が上がった参加者の方の人数に応じて、1人当たり5万円の対価をいただきます。

 そしてなおかつ、参加者にかかった医療費が大きく下がった場合、成果に応じて成果報酬をいただきたい、という提案です。少し詳しく言うと、参加者の医療費をプログラム実施前後の3カ月間で比較して、医療費の削減額の半額がプログラム終了直後の人数分の対価総額を上回った場合は、その差額分を上乗せして頂戴するというものです。

――そうすれば、事業として採算が合うということなんでしょうか

 実際、どれだけ医療費が下がるかというのは、我々にとっても未知であり初のチャレンジですので、検証はこれからなんです。結果がどれだけ出るかというところを見てから、ブラッシュアップするとか、そうしたことをしていこうと思っています。また、結果が出るのであればすぐに公表していく。こうしたところで悩まれている自治体の方は非常に多くて、社会貢献という意味でも、何かお役に立ちたいと思っています。

 プログラムを採用いただいても、まったく結果が出なければ、報酬をいただく資格がありません。そう思っていますので、我々も責任を持ってやらせていただきます。成果を上げれば上げるほど、自治体にとっても、RIZAPにとってもいい形になる。魅力のあるプログラムにするためにも、必ず成果を出すということです。

最初に必ず目的・目標設定、グループを作って対応

(写真=清水真帆呂)
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――先行した2つの自治体では、どのような評価でしたか。

 こんなに成果が出るのかといった、驚きの声が多かったですね。体力年齢の改善ということはもちろん、参加した住民の方々から「痩せた」「健康になった」という声のほか、例えば新しい趣味や夢に向かってチャレンジしようといった「目標ができた」との声も上がりました。参加して結果が出たことで、モチベーションが上がったという感じですね。自信をつけていただけた参加者がすごく多かったということもあって、自治体の方からも、やってよかったという好評価をいただきました。

――やる気を出すための、コツというものはあるのでしょうか。

 あります。例えば、なぜ痩せたいんですか、そのために何kg減らしたいんですか、達成したときは何をしたいですか、どうなっていたいですかなど、そうした目的、目標設定を最初に必ずするようにしています。

 やはり目標がないと、人は頑張れないと思いますし、なぜやるのかという目的も、とても大事です。ただ、目標・目的を設定した後「はいどうぞやってください」では、やり方が分からない方もいらっしゃいますので、達成は難しくなります。なので、RIZAPでは、トレーナーと一緒に目標を設定し、トレーナーだけでなくお客様にもしっかりコミットしていただきます。そして共に掲げた目標を達成するために、トレーニング中以外にもメール当のやり取りなどで日常からサポートさせていただき、進捗が悪い時は一緒に悩み、解決策を考えていく。

 それらにより信頼関係が強くなり、目標もより共通化されますので、自分が怠けていたら「トレーナーに申し訳ない」といった気持ちにもなっていただくこともあります。できなかったハードルを一つ乗り越えられたら一緒に喜びを分かち合い、約束が守れなかった場合は、厳しく指導することもあります。同じ目標を掲げたトレーナーと共に、二人三脚で達成していくのです。

――それはライザップが1対1のプログラムで蓄積してきたノウハウと思いますが、1対nに変えた際には、どのような工夫を加えたのでしょうか。

 そうですね、1対1と比べて接触密度はやはり薄くなることが避けられません。そこを自治体向けプログラムでは、例えばグループをつくり、トレーナーの代わりに皆で励ましあう、目標をグループで紙に書くなど、工夫をしています。お互いに目標をシェアするだけでなく、「こんなことで行き詰っている」といったことを相談したり、激励の言葉をもらったり。「こうやったらうまくいった」という情報のシェアもできますし、こうしたグループ化の手法を1対nのプログラムでは取り入れています。

「高齢者が安心して住める」まちづくりの提案も

――自治体向けプログラムは実施期間が約3カ月ですが、その終了後はどうなるのでしょうか。

伊那市における健康増進プログラムのデモンストレーション(資料:RIZAPグループ)
伊那市における健康増進プログラムのデモンストレーション(資料:RIZAPグループ)

 人の生活習慣というものは3カ月ほどあれば、定着すると考えています。実際、プログラム終了後は、RIZAPで得たノウハウを活用してご自身でやられているといった方も多いです。だた、1対nとなる自治体向けでは、必要であれば、定期的にフォローアップしていく仕組みなども今後は検討していきたいと思っています。また、住民の方々の参加希望に応じて、2回目、3回目をやらせていただくといったこともあるでしょう。

――自治体向けでは今後、どのような展開を考えられていますか。

 実は新たなサービスも考えています。例えば、悩み別のトレーニングプログラムなどです。腰痛、肩こり、膝が痛いなど。お年を召されるとそうした悩みも出てきますので、改善したい部位を絞り、住民の皆様へ提供していくというプログラムです。

 また、RIZAPでは「バランスのいい食事」を推奨しています。自治体向けプログラムでは、そうした食事を用意するのが大変だという声もあり、宅配弁当の提供サービスの検討も進めているところです。運動と食事というのはRIZAPのメソッドの中心です。メソッドに準じた食事を取り、トレーニングをちゃんとやっていただければ結果は必ず出る。そうしたところを補強するメニューになります。

 さらに、ある自治体には、「高齢者が安心して住める」ということを目指した、まちづくりの提案もさせていただきました。まだ先方に検討していただいている段階なのですが、我々が目指しているのは、1人でも多くの方が、理想の体型になり、かつ健康になっていただき、人生をきらきら輝かせて、心豊かになっていただくということ。それがRIZAPの使命だと思っていますので、そうしたまちづくりにつながる提案もさせていただいています。

――今後は、伊那市のほかにも、多くの自治体がプログラム導入を検討しているようです。目標としては、全国でどれくらいの自治体に導入してほしいと考えられていますか。

 今検討していただいているのは、6団体くらいでしょうか。RIZAPの自治体向けプログラムは成果報酬型ですので、結果が出なければコストは発生しませんし、まずは一度やってみてください、自信がありますと申し上げています。結果が出なかったらやめればいいですし、一度やってみて、それで我々の成果を評価してくださいといった気持ちでいます。

 自治体向けのプログラムについては、やるなら全国100パーセント、すべての自治体で実施したいです。結果を出せる自信はあります。そして、RIZAPのサービスを多くの自治体に受けていただくことで、日本全国を健康にしていきたいと思っています。

迎綱治(むかえ・こうじ)
RIZAP 取締役
迎綱治(むかえ・こうじ) 1980年生まれ 福岡県出身。2002年に福岡大学卒業後、大正製薬を経て、10年に健康コーポレーション入社。現在、RIZAP取締役として、RIZAP事業の責任者を務める。健康メディカルサービス代表取締役社長、RIZAP USA Inc. Directorを兼務。(写真=清水真帆呂)

この記事のURL https://project.nikkeibp.co.jp/atclppp/PPP/434148/031600028/