──予算も限られているなかで、もっと効率的に対策をしていきたいというニーズが増えているということですね。

 待ったなしになった、ということでしょう。交通機関のバリアフリー化が進んだことで、障害者や高齢者の外出機会が増えています。そうすると現場でトラブルやクレームが発生することもある。それを減らしていかなければならないという流れがあります。

 また、法律が改正され、企業では従業員の2.2%、自治体では2.5%、障害者を雇用していかなくてはならなくなりました。働くためには外出しなければなりませんから、環境(ハード)の問題や意識の問題への取り組みを考え始めたのではないでしょうか。

 そこに2020年の東京オリパラ、25年の大阪万博の開催があいまって動きが加速しています。

──自治体との連携の具体的な事例を教えてください。

(写真:ミライロ)

 陸前高田市(岩手県)の街づくりを支援しています。陸前高田市は、東日本大震災で惜しくも津波に飲み込まれてしまった。だからこそ、0から1をつくるなかで、何をするべきなのかというアドバイスをさせていただきました。バリアをなくすことはお金がかかりますが、バリアをはじめからつくらないことはお金がかかりません。企画・コンセプト設計の段階から配慮しておけば、お金をかけずにユニバーサルデザインを実現できます。いかにコストや工数を減らしながら皆が快適に暮らせる街をつくっていけるのかを自治体と一緒に考えました。

 残念ながら、障害者や高齢者は、東日本大震災の時に健常者に比べて2.5倍も致死率が高かった。それは、逃げ切れなかったからです。いざというときに、障害者や高齢者であっても逃げやすいように、見通しの良さや移動のしやすさも考えていかなければなりません。防災、減災という観点からも提言させていただきました。

 そういった意味でも、陸前高田市はこれからの日本の手本はもちろんのこと、世界の手本になると思います。

──陸前高田市はゼロからつくった事例ですが、既存の建物や設備の見直しも増えていますか。

 かなり多いですね。建物の耐震工事、免震工事のタイミングでバリアフリー化をしておこうといったニーズもありますし、意外なところではお墓のバリアフリー化を請け負うこともあります。お墓って山奥にあったり砂利道だったりして行きづらいですよね。そこを整備することで今まで行けなかった人も墓参りができるようになったと喜ばれています。

一般の人と障害者の接点を増やさないと街は変わらない

──障害者に対応した街づくりに関して、必要な考え方はどんなことでしょうか。

 多くの自治体が建物の段差を減らそうなどとさまざまな条例を定めていますが、もっと民間に寄り添った法整備をしないと実現不可能だと感じます。

 例えば、段差も一段であれば、車椅子の前輪を上げるか、誰かに押してもらえればすむかもしれません。段差は絶対にダメではなく、一段なら問題ないですよ、というように、ある程度ゆるさをもった条例を作っていくべきなのです。日本の慣習を考えると、敷居に段差をつけたいといった意匠性の観点もあるでしょう。自治体、障害者、民間のみんなが納得できるような落としどころを付けていくことが、これからの街づくりに求められることだと考えています。

 当社では障害のある方にモニターになっていただいて、その意見を自治体への提言に反映させています。取捨選択し、優先順位をつけられることが我々の強みです。

──全部やらなければならないと思うからコストが掛かりすぎてできなくなってしまう。そこの折り合いをつけることをアドバイスする必要があるということですね。ところで、障害者対応が進んでいる地域と進んでいない地域がありますが、その違いはなぜ生まれるのでしょうか。

 理由は明確で、進んでいない地域は障害者が外に出ていないからです。東京、大阪など公共交通機関の利用率が20%を超えている地域では、障害者も交通機関を使いますし、街中で見かけますよね。そうするともっとバリアフリー化しなければという意識が生まれやすいのです。

 一方で、地方は車で移動しますので、街中で障害者をあまり見かけません。そうすると意識もしない。一般の人と障害者の接点を増やさない限りは進んでいきません。

 そういう意味で、鳥取県の事例はすごく良い試みです。日本財団からの助成金で、鳥取県内を走る800台のタクシーのうち200台を車椅子ごと乗れる「ユニバーサルデザインタクシー」に変えました(鳥取県・公益財団法人日本財団・一般社団法人鳥取県ハイヤータクシー協会による「官民一体となった先駆的なタクシーのバリアフリー化」)。結果、障害者や高齢者の外出が増えました。

車椅子ごと乗れる「ユニバーサルデザインタクシー」(写真:日本財団)

 人々のハート(意識)が変わらなければハード(環境)も変わっていきませんので、進んでいない地方ではまずハートを変えていく必要があるでしょう。