
――錫100%の器「KAGO」でブレイクしましたね。
能作 もともと当社は問屋さんから仏具や茶道具、花器などの注文を受けて製造する下請けでした。(高岡市の)高岡銅器は分業制で成り立っていて、当社が納めた製品を他の事業者が着色したり、彫金をしたりしています。最終の仕上がりを確認することもなく、お客さんがどういう形で買っているのかも分かりませんでした。それで2001年に自社製品の開発に乗り出し、錫100%の“曲がる器”を開発したのです。
一般的な錫製品は合金で、錫100%の製品はどこも手がけていませんでした。当社は、鋳造技術には自信があり、錫の持つやわらかいという性質を生かした製品開発に乗り出すことにしました。KAGOができたのは2007年。メディアで取り上げられ、取り扱い店舗も増えて行きました。2008年に日本橋三越に直営1号店舗を出せたのも、KAGOがきっかけでした。現在、国内に13店舗、海外はニューヨーク、バンコク、台北に出店しています。
――能作以外でも錫100%の製品を出すところも出てきました。
能作 地元の事業所へ当社から錫材料を提供していることもあります。同様の商品が出てきても、同じ高岡の事業者なら、社長(能作克治氏)も構わないと言っています。高岡といえば高岡銅器をイメージするように、産地全体がいずれ高岡錫器のまちと呼ばれるようになれば、産地の底上げになります。
カフェや店舗も併設、新社屋・工場に年間13万人
――2017年の新社屋移転に伴い、産業観光に力を入れ始めました。
能作 工場見学は、特に地元の方に産業を理解していただくことが大事ということで、旧工場時代の1990年から行ってきました。年々、工場見学の参加者が増え、年間1万人が訪れるようになりました。
本社の移転は工場の規模の拡大が第一の目的でしたが、手狭な工場を見学してもらうよりも、ちゃんと見せる施設を作ろうということで、新社屋を設計しました。伝統工芸の鋳物の工場見学を核に、鋳造を体験できる工房や地元の食材などを錫の器で提供するカフェ、そして錫や真鍮の能作製品を販売するショップも併設しています。
新社屋になってから観光客がどんどん増えていて、今年は年間13万人の来場を予想しています。毎月にコンスタントに1万人の来場があり、特に秋口や夏には足の踏み場がないほどエントランスが混み合います。