テレワークから一歩踏み込んだ制度設計が必要

――例えばテレワークの制度が充実してきたことは、ワーケーションの普及によい影響を与えそうでしょうか。

 それだけでは不十分です。コロナ禍の影響で自宅でのテレワークが急速に普及していますが、「どこで仕事をしてもよい」ということにはなっていません。

 もう一歩踏み込んで、例えば若い共働きカップルが狭い1LDKでテレワークをしていると行き詰まるので、郊外の少し広いところに移住してテレワークをするといった働き方を認める企業も出てきています。その延長線上で、実家でのテレワークを認める企業もあります。こうした制度は従来と比べて画期的ではありますが、働く場所のフレキシビリティが与えられただけで、バケーションの要素が欠けています。

――ワーケーションが普及していくためには、どのような制度が必要ですか。

  ワーケーションを普及させるためのポイントは、非常にシンプルにいうと、働く場所の自由度を高めることにあります。ワーケーションに限らず、働く場所の自由度を高める「フレックス・プレイス制度」や「WFA(Work From Anywhere)」などの導入を目指すのも1つの方法です。

  こうした制度は、ワーケーションの導入を実施しやすくするだけでなく、育児、介護、フィットネス、ボランティアや社外での自主的な学習活動を行うことに資するなど、労働者にとってメリットが大きく、多様な働き方を促進していく上でも、非常に有効です。

  野村不動産のHUMAN FIRST研究所が実施した「新しいオフィスの在り方や価値に係る調査研究」第2回「『個人のパフォーマンス向上因子』に関する協働調査研究」(2021年3月)によれば、働く場所の多様性を持っている社員とパフォーマンスの⾼い社員とは強い相関がある、との結果も出ています。旅⾏先も含めて働く場所を⾃由に選ぶことができ、⾃律的に働くことが社員のエンゲージメントにも影響していることも明らかになっています。こうした働く場所の柔軟性と、その先にあるワーケーションのさまざまな効果について理解を拡げていくことが必要です。

「働き方」の中でのワーケーションの位置付け(資料:田中敦)
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――ワーケーション導入側の熱量はさほど高くないとのことでしたが、実際の企業の導入状況はどうなっているのでしょうか。

 市場調査会社、クロス・マーケティングが全国47都道府県に在住する20歳~69歳の就業者(指定職業・職種を除く)を対象に行った「ワーケーションに関する調査」(2020年9月)によれば、ワーケーションの前段ともいえるテレワークは9割以上が認知、ワーケーションも7割以上が認知しています。これに対して、企業のテレワークの導入状況が34%、ワーケーションは7.6%です。認知状況から考えると導入率は低いですよね。

 ただ、BIGLOBEがリモートワークが可能な企業に勤める会社員900人と同経営者100人に行った「ワーケーションに関する調査」(2021年3月)では、経営者の約7割がチームで行うワーケーションを実施してみたいと回答しています。もともと総務省では「関係人口創出・拡大事業」の施策として、ワーケーションをチームビルディングのために活用しましょう、地域に行ってみんなで貢献事業をしましょうという働きかけをしていました。それがコロナ禍でいったんブレーキが踏まれている状態です。状況が許せば、こうした日本型の「オフサイトミーティング」タイプのワーケーションが増える可能性はあります。