管轄省庁、担当部署によって目指す方向が違う

――総務省のほか、内閣府、環境省、国交省や観光庁など国もワーケーションを後押ししています。ただ、それぞれ目指す方向は少しずつ違っているように見えます。

 管轄省庁でいえば、総務省が進める「交流⼈⼝、関係⼈⼝の増⼤」「地域住⺠との交流促進」、国⼟交通省が進める「多拠点居住→移住への導線」「空き家・空きオフィス対策」、国⼟交通省と環境省が進める「地域観光事業者の活性化」など、⽬的が重なるようで微妙に異なります。

(写真:稲垣純也)
(写真:稲垣純也)

――自治体側の思惑も様々なものがありそうです。

  ⽂脈として多いのは、コロナ禍以降、インバウンドの減少で国内の観光需要を⾼めようという動きがあり、それとワーケーションは馴染みがいいといった⾒⽅で動き始めた地域でしょう。観光地域づくり法⼈(DMO)に登録されるような団体や、観光協会などが関わって推進しています。

  ただ、現状で実績を残してきているのは、関係⼈⼝を増やす、地域課題を解決するという視点で動いてきた⾃治体です。例えば静岡県下⽥市役所は産業振興課、⿃取県はふるさと人口政策課関係人口推進室、和歌⼭県は情報政策課、⻑野県は産業労働部産業立地・経営支援課 創業・サービス産業振興室など、観光プロパーではない部署が担当しています。

地域交流においては、行政がオーバーコミットしないことが大事

――どのようなワーケーションを誘致するのかによって、地域で整備すべきことも変わってきそうですね。

 例えば行政主導で言えば、環境省では国立・国定公園でのワーケーションを推進しています。小泉進次郎環境大臣は「ワーケーションEXPO@信州」で環境省が令和2(2020)年度の補正予算で盛り込んだ、国立公園などでのワーケーションの実施や受け入れ環境の整備に対する補助制度に申請が多数あったことを話しています。これは国立・国定公園の保全の意味もあったわけですが、この場合、Wi-Fiの整備などワークスペースの整備から入らなければなりません。

 コロナ禍の影響を受けて増えそうなのが、3密回避重視の従業員主導によるワーケーションです。感染予防をしつつ人気の観光地に長期滞在して、途中で仕事を入れるというスタイルです。地域の人との交流は求めず、離れて休む目的があります。こういった人たちを呼び込もうとする場合は、ワーケーションを行える環境があればハード面・ソフト面での大きな追加投資は必要ないでしょう。

 一方、地域の人たちと交流することや、CSRの文脈で地域に貢献することを期待するワーケーションもあります。地域の人たちとのセレンディピティ(偶然の出会いやひらめき)が生まれることへの期待から、コミュニティをつくるタイプです。彼らは交流を望んでいるので、地域の行政側が受け入れ体制を用意しておく必要があります。「場所」ではなく「人」が目的になるような、コト消費のプログラムに力を入れている地域とワーケーションは親和性が高いと思います。

 ただし、(地域交流の現場では)行政はオーバーコミットせず、上手に見守ることが大事です。これまでの観光誘致などでは、受け入れ側が準備して短い滞在期間を目一杯満喫してもらおう、という意識が強かったと思います。ワーケーションは、ある程度の期間、仕事も地元の生活も余暇も、ありのままを感じてもらいながら地域のファンになってもらうものなので、むしろ地域の人たちや民間の事業者が主体となって自然体で進めないと、持続させていくことが難しくなります。