コロナ禍で新たな課題、まずは現状の洗い出しから

――コロナ禍によって、ソーシャルディスタンスやマスク着用など、これまでにない不自由さを社会全体が強いられています。障害のある人たちには、どのような影響が出ていますか。

星川 いろいなルールに対応できないという状況が生じています。ソーシャルディスタンスについて言えば、目の見えない人は前の人との距離が分かりませんよね。耳の聞こえない人は「距離をとってください」と言われても分からない。ルールを守りたい守りたいけど守れないんです。

 また、店の前に「消毒しましょう」といったポスターが張ってあっても、見えない人には分かりません。感染拡大を防ぐために「物には触らないで」「触ったものは戻さないでください」といった状況も増えています。一方で、街なかの点字の案内板などは、触れることによる感染リスクもあります。そうなると、そもそも触ることでいろいろなことを確認していた人たちにとっては、生活のリズムが崩れてしまうことになる。そして家に閉じこもってしまう――。そういったことも起こっています。

 マスク着用の影響もあります。相手がマスクをしていると口の形が分からないので、コミュニケーションが難しくなる人もいる。ちょっとした聞き間違いで済むこともありますが、それが命に関わる場合だってあり得るわけです。

感染防止のためのルールを「守りたくても守れない人たちもいる」と問題提起する星川氏(写真:北山宏一)
感染防止のためのルールを「守りたくても守れない人たちもいる」と問題提起する星川氏(写真:北山宏一)

――かなり幅広く影響が出ていますね。どのような対策が考えられますか。

星川 すぐに解決はできませんが、コロナ禍における不便さやいろいろな工夫について、まずは言葉として記録する作業を進めています。これも杉並区と一緒になって、コロナ禍での困ったことや工夫したこと、要望をまとめているところです。

 これから先、たとえコロナ禍が収束しても、また同じような状況にならないとも限りません。そのときになってまたゼロからやり直しということにならないように、まず今の状況を洗い出し、対策を考え、「障害のある人たちも、高齢の人たちも、ちゃんと感染を防げるようにするにはどうしたらいいのか」についてまとめた文書を残しておく必要があると思っています。

星川安之(ほしかわ・やすゆき)
公益財団法人 共用品推進機構 専務理事兼事務局長
1980年玩具メーカーのトミー工業(株)に入社、新設の「H・T(ハンディキャップトイ)研究室」に配属される。1999年(財)共用品推進機構設立時より専務理事・事務局長を務める。年齢の高低、障害の有無に関わらず、より多くの人が使える製品・サービスを、「共用品・共用サービス」と名付け、その普及活動を、玩具からはじめ、多くの業界並びに海外にも普及活動を行っている。2014年度工業標準化事業 経済産業大臣表彰受賞、2018年に第15回本間一夫文化賞受賞。著書に「共用品という思想」、「アクセシブルデザインの発想」共に岩波書店 など (公財)共用品推進機構HP:http://www.kyoyohin.org/ja/index.php