町のゼロ・ウェイスト政策立案をコーディネート

坂野氏の背後の壁に吊るされているのは、地元の古い大きなこいのぼりをリサイクルした衣類。「くるくる工房」で縫製・販売している(写真:日経BP総研)

 このように現場運営をしている中で出てきた課題や、「こうした場合はこのような施策が必要ではないですか」といったことを行政側にフィードバックもしています。上勝町は小さな自治体ですから、ごみの担当者は他の業務と兼任の1人しかいませんし、当然、手が回らない部分が出てきます。そこで、アカデミーがシンクタンク的な役割を果たしてゼロ・ウェイストに関する計画をつくり、その実行まで担当するわけです。例えば、2015年に上勝町の「ゼロウェイスト・タウン計画」の策定をコーディネートしました。町のゼロ・ウェイスト達成の目標年である2020年までの5年をどうしていくのか、ということをまとめたものです。

 2016年度以降はこの計画を実行するということで、様々なプロジェクトを進めています。例えば、布おむつを新生児のお宅に町のギフトとして差し上げることによって、使い捨てのおむつの使用を考え直すきっかけにしようという取り組みがあります。単に布おむつをあげるだけでなく、トライアルの家庭のモニタリングをしたり、あるいは布おむつをいきなり渡されてもお母さんたちは使い方が分からないということもあるので、そのサポーター制度をつくったりとか、そんなことを行っています。

 そのほかにも、店で買い物をして、レジ袋を断ったらポイントがたまる仕掛けを町内全域で展開したり、お客さんが容器を持参すれば、食料品などをパッケージなしで必要な量だけ販売する「量り売り」を導入するお店のサポートをしたりなどもしています。

――視察や研修の受け入れも積極的です。

 上勝町は視察や研修という形でいろいろな人にお越しいただいていますので、そうした人たちに向けて、ゼロ・ウェイストのことを学んでいただくプログラムを提供しています。逆に、相手先へ出向いて講演することもありますし、子供向けの教育プログラムのために学校へ行くこともあります。

――これまで、どれくらいの人たちが視察したり研修を受けたりしたのですか。

 人数は数えていないため正確には把握していませんが、年間ではおよそ1000人以上になります。しかも、日本だけではなく全世界からいらっしゃいます。日本国内からは研修と言うよりは視察が多いですね。市民グループ、行政、それに有志の方などが、上勝町はどんなことをやっているのかを学んでいかれます。その後、上勝町をモデルに「くるくるショップみたいなことを自分たちで始めました」「うちの行政でもゼロ・ウェイスト宣言をしました」というご連絡をいただくこともあります。

――研修の中で、特に学んでいってもらうポイントはありますか。

 そうですね。上勝の場合、まず分別回収が注目されているのですが、でも住民みんなに分別に参加してもらったり、回収してリサイクルするためのインフラをつくったりするのはすごく大変です。そこから始めるのは多分厳しいし、行政を巻き込まないといけないので時間が掛かる。なので、まずは「リユースショップを楽しく始めましょう」からでもいいとお話しています。来る人にもよるのですが、自分が何かお店をやっているのであれば、そのお店ではシングルユースのプラスチックは出さない、と。そして、それはなぜかという説明をするところからでもいいので、やりやすそうなことを見つけて、ファーストステップを決めるということを大事にしていますね。「できたらいいな」と思いながら上勝町から帰って、でも結局大変そうで動かないというのは、すごくもったいないですから。